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千年の恋の物語~運命の二人~  作者: 宝槻錬果
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それぞれの努力

「では、昨日、豪伯父さんが施した術は本来の使命ではなく応用ということですか?」

「その通り。時の神の力は応用が利く。おそらくは時に関するあらゆることに作用できる。記憶への干渉も実際はその一つだ。記憶は時の経過の証。対象者の時を遡らせ書き換えるのだからな。昨日使ったのは時間軸を整えるものだ。ただし、応用は利くが太陽の乙女のためでなければ使えないし、誤ったことに使った場合は効力がなく、以降力を失うと言われている。この点は肝に銘じなさい。」


「時の神の力は自然と発動できるようになるとおっしゃっていましたが、決まった呪文やコツなどはあるのですか?」

「特に決まった呪文というものはないな。歴代の使い手でそれぞれ特徴も異なっている。共通しているのは力を使う必要があるとき、自然に呪文ややるべきことが思い浮かび対処できるということだ。ただ、術の幅には使い手の経験値は影響するだろうな。」


「では、いざというときに備えて何か訓練できることはありませんか?」

「良い心がけだ。そうだな…。“時”というものを意識し理解するよう心掛けなさい。そうすることで時を軸として自分に何ができるのかを理解し、応用の幅も広がるだろう。力を使うのはあくまで使い手だ。力が勝手に対処してくれるのではないからな。」

「つまり、使い手の理解を超えたことはできない…。」

「そうだ。力を理解しないうちは、宝の持ち腐れと同じだ。だが、廉よ。お前は思慮深い。時を理解し、上手く乙女を支えられるようになるだろう。期待しているぞ。」

「今日はいろいろと教えていただき、ありがとうございます。」


「よし、では行くか。」

「えっと、どこへ?」


「神殿だ。昨日の報告をしに行かないといけない。お嬢様たちを呼んでくるから支度をして待っていなさい。」

「今から行くのですか?もう夕方ですが?」

「神殿の日々の勤めも落ち着くころだから、ちょうど良いだろう。」


そう言うと豪は一階の応接室を出て二階へ向かう。杏那専用の応接室の扉をノックして中に声をかける。


「お嬢様、失礼いたします。」


 二階の応接室には杏那、レオ、理世が揃って、紅茶を楽しみながら地図や観光雑誌を広げ会話を楽しんでいたようだった。杏那は学園の制服から着替え、フリルの付いた白いブラウスに薄い水色のハイウエストスカートを着ている。レオはいつも通り立ち襟の上質な白地に青の刺繍の入った高貴さ漂う上着、白いパンツにロングブーツで凛々しく優雅にくつろいでいる。理世も杏那の世話係兼家庭教師らしくミントグリーンのセットアップワンピースで上品な装いだ。


「おや、旅行の計画ですかな?ぜひ私も会話に入れていただきたいですが、そろそろ神殿へ報告に参りましょう。」


豪の呼びかけで一行は部屋をさっと片づけると、一階で廉と合流し神殿へと向かった。


 神殿ではいつも通り二番目に偉い神官で杏那の叔父である周一が迎え、秘密の応接室へと通してくれた。ここで水宮家の一件が解決したことを報告する。


「あの神官長宛ての手紙にはそのような事情が隠されていたのですね。昨日は一日、大変だったでしょうが、皆さまよくぞご無事でお戻りになりました。杏那様も日に三度も神力を使われたとのこと、体調に影響はありませんでしたか?」


周一は皆を労うとともに、杏那の体調を気に掛ける。


「はい、私も初めてのことでしたが、レオ様がお力を注いでくださったおかげで持ちこたえることができました。」

杏那は周一に返事をすると今度はレオの方を見て礼を言う。

「レオ様、本当にありがとうございました。」

「私は杏那の役に立つためにここにいる。当然のことをしたまでだよ。」

レオはそう言って杏那に微笑んだ。


「然様でしたか。さすがのチームワークですね。私も立ち会いたかったです。それにしても、杏那様はどうしてお見合いの手紙の主が水宮家の先代当主だと気づけたのですか?いつから気づいていたのですか?」


 杏那は昨日の朝、カフェで理世にある頼みごとをしていた。あのとき、杏那はまもなく彩玉家の迎えの馬車に乗らなくてはならないため、理世に豪と共にあのお見合い場所として記されていた池の住所近くの別邸に住む水宮家の先代当主を探して、池に連れてきてほしいと頼んでいたのだった。


「皆さまとお話したあと、手紙を見比べて考えていたのですが、レオ様がヒントをくださったのです。レオ様の収集された情報では、水宮様の現在のご当主様と後継者の龍也様は長きに渡る家同士のしがらみや立場を気になさっており、このような目立った行動は取られないだろうと。」


レオは占術院の一室の窓の外から占術院院長と龍也の会話を聞いていた。そしてその内容は杏那に共有されていたのだ。杏那は続ける。


「それに叔父様が教えてくださった水宮家との取極め、水宮家の治める土地に招待なく入れば疑われ兼ねないと、そのことからも何かあったときに責任のとれる方が出されたものだと思ったのです。まさか龍神様が先代のご当主様のお身体に入られていたとは思いませんでしたが、手紙を出されたのが先代ご当主様なら、解決にはその方からもお話を聞く必要がありますし、お会いすることが必要だと思ったのです。」

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