表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千年の恋の物語~運命の二人~  作者: 宝槻錬果
29/41

水宮家と龍神様⑤~水宮の秘儀~

 水宮家の呪いを解くために、大きな池の浄化と探し物をしなくてはならないという杏那。そしてその作業には水宮家の力が必要だと言って、杏那は龍也を見つめた。視線に気づいた龍也は予想外の展開に驚いている。

「僕ですか?勿論できることならなんでもしますが、一体何を?」

杏那はにっこりと微笑んでお礼を言う。

「ありがとうございます。」


 杏那はあの映像を見ながらずっと何かが引っかかっていた。感覚的なものかもしれないが、水宮家の力を借りなければ解決しないと感じていたのだ。龍神と龍臣を分離するなら、おそらくいつもの浄化の手法でなんとかできる。神と人が対象のため、これまで以上に神力を使うとは思うが不可能ではない。そして二人を結びつける呪いの根源は割れた鏡だと予想した。鏡も浄化の力で二人から取り出すことができるだろう。しかしそれでは簡単すぎる。そこで気になったのが、取り出した後の鏡と儀式の時に池に落ちた青い光だった。皆は鏡の破片が刺さることに気を取られていたが、杏那は見逃さなかった。レオも同じく、あの青い光を見つけなければ、本当の意味で解決しないという考えに至っていた。


「水宮様、私が池を浄化し、光が届くようにします。ですので、水宮様には術により池の底に沈んだ二つの輝くものを引き上げていただきたいのです。」

「光を集め、光を引き寄せる術ということか。分かった。やってみよう。」


 やることが決まると、杏那たちは社を出て、儀式が行われていたあたりの位置に歩いて来る。途中、杏那は龍也に話かけた。

「水宮様、突然のお願いにも関わらずお引き受けいただき、ありがとうございます。途中他にもお願いさせていただくことが出てくるかもしれません。」

「巻き込んでいるのはこちらの方だ。できることがあれば何でも言ってくれ。」


 杏那が池の畔に立つと、そっとレオが抱きしめた。

「レ、レオ様?」

「今日はたくさん力を使うだろう。僕が共にいるよ。」

杏那はあの言葉をふと思い出した。


“太陽の乙女と神獣はそばにいることで回復が早まる。相乗効果で双方の力が強まる。”


杏那は素直にレオの腕の中にいながらお礼を言う。

「ありがとうございます。」

レオに触れると自然と心が落ち着き、神力が満たされるようだった。


 龍也は廉の手も借りて術の準備を終えた。レオが杏那から離れると杏那は池の方を向いて両手を口の前で組む。杏那が池を見据えて祈りを捧げ始めると、杏那の瞳は陽だまりのような金色に輝き黒髪は紫がかった銀髪になって光を放つ。


「太陽の女神よ、天の光よ、闇を照らすは神の愛。気高き龍神の住まう泉よ、天の光を捧げます。闇を手放し受け入れ給え。気高き者の住まう泉へ還られませ。」


陽だまりのように温かで慈愛に満ちた声でありながら、気高く強い信念を感じさせる杏那の声がその地一帯の空気も大きな池の水面も震わせた。杏那が祈りの言葉を捧げると大きな池を覆うように杏那から陽だまりのような温かさと眩いほどの光が広がる。温かな優しい光が池に降り注ぐと、光は水面に吸収されていく。あたりが眩しすぎて、見ている者は水の濁りがどうなったのかは確認できない。杏那は眼前を真っすぐに見つめ、光の粒が十分に水面に降り注いだのを確認すると周囲の空気に集中する。池を覆う気が浄化されたことを確認し、杏那は光を収めた。


 池の濁りはすっかり消え、底まで覗けそうなほどに透き通り、辺り一帯を覆っていた霧も消え、清々しい気に変わった。


 再び杏那が力を使う姿を目の当たりにした廉は“これが太陽の乙女の力”と圧倒されている。龍也も初めて見る光景に、こんな力が存在するのかと圧倒されていた。傍らで眺めていた龍神も“これだけの池を浄化するとは…”と感心している。杏那はそんな視線は無視して龍也の方を向き、儀式を進めるよう促す。


「水宮様、これで池の底まで光が届きます。お願いいたします。」

「分かった。」


 龍也は気を取り直して、底に沈んだ二つの輝くものを引き上げる術を発動すべく、二つの形代を右手の人差し指と中指の間に挟み顔の前に持ってくると呪文を唱える。


「我ここに命ず。深くに眠りし者よ、封を解き、目覚めさせるは汝の主。主の声に目覚めよ。」


すると形代から二つの青白い光が勢いよく飛び出した。一つは球体、もう一つは何か動物のような形をして細長くうねっている。二つの光が絡み合い池の上を旋回しながら中央まで飛んでいくと水面から1mほどの高さで宙に浮いて止まった。よく見ると球体の周りでうねっているのは30㎝ほどの長さの青龍だ。飛び出した二つの光に向けて、龍也が呪文を続ける。


「我ここに命ず。龍神の住まう泉を照らし、憂う光を見つけて示せ。主の元に持ち帰られよ。」


すると球体は青白い光を円錐形に池に放って水中を照らし、青龍は勢いよく水中へと潜っていった。皆が固唾をのんで術の行方を見守っている。ほどなくして青龍が何かを引き連れて、勢いよく龍也の方に向かってくる。そして何かを龍也の足元に落とすと、形代の青龍は役目を終え、球体とともに池の中へと消えていった。


 龍也はその場にしゃがみ、青龍が池から拾い上げてきたものを確認する。杏那たちも駆け寄っていくと、そこには杏那が予想していた二つのものが見つけ出されていた。


「この二つで良かった?」


水宮家に伝わる秘儀を使い、少々息を切らしている龍也だったが、池からわざわざ引き上げたものが間違っていないか少し心配そうに聞くと、拾い上げられた二つの物を一緒に覗き込んでいた豪が言う。

「だいぶ錆ついているようですが、儀式用の鏡でしょうか…こちらは青い石のついた銀の細い棒?…いや、簪でしょうか。」

杏那も引き上げられたものを確認すると、龍也に称賛を贈る。

「水宮様、間違いありません。流石でございます。」


少し離れたところから龍臣を支えながら、術の様子を見ていた老婆は呟く。

「もしやあれは、いえ、ここにあるはずがない…。」


“青い石のついた簪”と聞いて龍臣の中にいる龍神が反応した気配を感じつつ、杏那が進める。

「これで必要なものは揃いました。今から呪いを解きます。」

「お嬢様、さきほど力をお使いになったばかりです。無理をなさってはいけません!」


豪が慌てて杏那を止めようとした。理世も心配そうに見守っている。杏那自身も想定している一通りのことを一度に行えばオーバーワークであることは良く分かっていた。しかし龍臣の様子から、先延ばしにすれば取り返しのつかない事態も想定される。


(必要なものが揃った今が最適だわ。先延ばしにすれば龍神様も水宮のお爺様も危険な状況だもの。)


「爺や、大丈夫よ。私は、大丈夫。レオ様もみんなもいてくれるし、それよりも龍神様をこれ以上このままにはしておけないわ。」

「お嬢様…。」


こういう時、杏那が意見を曲げないことを豪は良く知っている。


「承知いたしました。我々も手伝います。何なりとお申し付けください。」

「ありがとう。そう言ってくれると思っていたわ。」


杏那は満足そうに豪に微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ