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千年の恋の物語~運命の二人~  作者: 宝槻錬果
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水宮家と龍神様④~老婆の記憶~

 祭壇の鏡に薄紫色の靄がかかると、そこには遥か昔の老婆の記憶が映し出された。


 ―池の畔には立派な朱塗りの社殿がある。社殿を囲むように池を臨む廊下がある。水面には日差しが煌めき、霧もなく清々しい。社殿の廊下には背が高く勇ましい、それでいて優美且つ高貴さの漂う男が眼前の景色を眺めて立っている。肌の色は少し青白く、青味がかった長い銀髪に龍の角がある。濃い青の着物に銀色の刺繍が、彼の気高さを強調する。その瞳は重厚な金色で鋭い。この男こそが本来の龍神である。そしてその隣には桃色に桜の花のかわいらしい柄の入った着物に身を包んだ年頃の娘が寄り添い、幸せそうな笑顔で煌めく水面を共に眺めている。


 景色を少しずつ変えながらも龍神と娘が寄り添い微笑み合う様子が何度も映し出されることから、頻繁に会っていた様子が窺える。そしてある時、龍神は娘に青い宝玉に銀の装飾が施された簪を贈ると、娘はとても喜んだ。涙を流している。しかしそれからというもの、娘がこの社殿を訪れることはなくなったようだ。


 記憶の景色が変わる。角を隠した龍神が人里に降り、娘を探している様子が映し出された。娘が龍神から贈られた簪を持っていたので居場所はすぐに分かった。龍神は贈った青い宝玉の気を辿ったのだ。しかし、娘のいる部屋には外から錠が掛けられている。娘は閉じ込められていた。


 龍神は社殿に帰ると巫女に何かを命じた。景色はすぐに娘の居場所へと移動する。巫女は娘がなぜ閉じ込められているのか調査を命じられたのだ。巫女の記憶には龍神からもらった簪を大切そうに眺めながら、日に日に衰弱していく娘の姿が映っていた。


 巫女が報告をすると、龍神は悲しみに暮れた。巫女の記憶からも悲愴感が伝わってくる。それからというもの、龍神の心を映すかのようにこの地一帯は人里も含めて静かで冷たい雨が続いた。


 また場面が変わる。今度は池の前で儀式が行われている。祭主と思しき装いの男が祭壇の前で儀式を執り行っている。祭主の男は水宮家の者に顔立ちがどこか似ている。儀式の内容は、明らかに神の怒りを鎮めるためのものだ。儀式の最中、突然池から大きな龍が現れ、何かを叫ぶと龍の吐息と激しい水飛沫により池の前に組まれていた祭壇は一瞬にして破壊される。祭壇が崩れた弾みで鏡は地面に落下する。鏡が割れる瞬間、光が弾け、龍と祭主に刺さった。龍は体をうねらせ、池の上に出ると、すぐさま頭から池に飛び込み、大きな水飛沫を上げて池の底へと帰っていった。―


 老婆の記憶映像が終わると、鏡の前に立ち込めていた靄は霧散して消え去った。倒れた老婆は他の彩玉の巫女が介抱している。度々切り替わる場面と予想以上の気迫溢れる記憶映像に、皆が実際そこにいたような気になっているとともに、衝撃的な内容に言葉を失っていた。


 少しして目を覚ました老婆は彩玉の巫女たちに指示を出す。そして二回手をたたくと、盆を持った巫女たちが部屋に入ってきた。老婆は居住まいを正して皆に茶を勧めてくれる。

「記憶映像は映す者も観る者も体力を消耗します。お茶を淹れましたので、ご一服ください。」

「彩玉の巫女様、お気遣いをありがとうございます。」

豪がお礼を述べると、理世も続いた。

「お気遣いに感謝いたします。いただきます。」

杏那とレオ含め、他の者も口々にお礼を述べ、お茶をいただいた。お茶を口にした杏那は気づく。

(これは…彩玉様たちの神気を補う貴重なお茶だわ…。心身共に満たされるような不思議なお茶ね。)

巫女たちが振舞ってくれたお茶は温かく、飲むとなんだかほっとした。そして老婆が、皆が一息ついたところを見計らって、杏那に尋ねる。


「それで、解決の糸口は見つかりましたか?」

「はい。」


杏那は一瞬レオの方を見た。レオは静かに頷いて杏那の発言を促す。


「龍神様を水宮様のお身体から分離すること、そして呪いの根源となっているものを双方から取り出すこと、この二つが必要です。そして、後々に憂いを残さないためにもこの池で見つけなければならないものが二つあります。池を浄化し探すことをお許しいただけますか?」


老婆が予想外の発言に困惑していると、横から声がした。


「私が許可しよう。」


龍神だ。そして龍神は続ける。


「しかし、あの池は相当に広く深い。そして今は私のせいで池の気も淀んでしまっている。あの池に入れば生きて戻れる保証はないぞ。」


「ありがとうございます。池には入りません。ですが、水宮様のお力が必要です。」


杏那はそう言うとまっすぐに龍也を見つめた。

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