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千年の恋の物語~運命の二人~  作者: 宝槻錬果
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水宮家と龍神様③~引き寄せられた者たち~

 龍神が老人の陰に隠れたために当時の話を聞くことができなくなってしまった杏那たちだったが、代わりに老婆が当時見てきた記憶を見せてくれるという。”記憶を見せる”という突拍子もない発言に、これまで静かに見守っていた理世が素直に驚いて口を挟んだ。

「そのようなことができるのですか!?」

理世の反応に少し驚きながらも気をよくした老婆がようやく微笑んだ。

「はい。龍神様がこの者の影にお隠れになられたのは、そうしてくれとのご指示かと思いますので。鏡があれば記憶を映すことができます。」

すると突然杏那の後方から声がした。


「鏡なら、あの社に大きなものがあるだろう。」

杏那が声のする方を振り返ると、思いがけない人物がそこにいる。

「レオ様!?いつからそこに?」

「初めからいたよ?だって杏那たちの馬車の上に乗ってきたんだから。なかなか出る幕がなかったから、杏那の邪魔をしないように気配を消して見守っていた。」


なんと、レオは杏那が乗った馬車のキャビンの上に一緒に乗ってきたという。確かに天空を駆け抜けられる虎の姿のレオならキャビンの上にも余裕で登れる。杏那が周りを見渡すと、杏那以外は気づいていたようである。


(気づいていなかったの私だけなの!?龍神様と彩玉様の気に神経を集中させていたとはいえ、レオ様に気づかないなんて…なんて失礼なことを…。)


杏那は内心で落ち込んでいたが、実際は顔にもしっかり出ていた。


「杏那は任務に集中していたから仕方ないよ。気にしないで。」

レオは杏那に近寄りながら、全く気にしていない様子の爽やかな笑顔で言う。


 そこへ今度は、豪たちが現れた方の茂みからなにやら駆けてくる音がする。杏那たちが一斉にその方向を見ると、スーツ姿の青年と少年が茂みから飛び出してきた。


「いたぞ!」


杏那たちを見て声を上げたのは龍也だった。その後ろにいるのは廉だ。二人はあの後、神城家に向かったが、すでに豪と理世、杏那、レオの姿がなかったため、手紙の主として思い当たった水宮家先代当主・龍臣の屋敷に向かった。しかしこちらもすでに姿がない。関係していると思われた人たちが姿を消していることに焦りと胸騒ぎを感じた龍也たちは手紙で指定されていたこの池の畔に引き寄せられるかのように急いで走って来たのだった。


 いつも爽やかで優雅な龍也は身なりこそいつも通りだが、額には汗が滲み、いつもの余裕のオーラは影を潜めていた。廉も急いで走ってきたのだが剣士の修行で体力のある廉は比較的落ち着いている。息を整えながら、杏那たちがいる中心に老人と老婆の姿を見つけると、龍也は再び走って近づいて来た。


「お爺様、大丈夫ですか?」


龍臣は龍神と意識を交代したばかりで話せそうにない。それを見た老婆が状況を説明してくれた。龍也はその内容に驚き、ショックを受けながらも、なんとか状況を呑み込んだ。


 一行は老婆の記憶を覗き、呪いを解く鍵を探すため、池の反対側にある社へ移動する。社は見た目にはこじんまりとしているものの、内側は意外と広く、社の中に祀られている大きな鏡を囲んで八人が多少ゆったりと座れた。龍也は龍臣が寒くないよう自分の上着をかけてやっている。


 龍也は、龍臣が龍神に肉体を喰われ身体の自由を奪われていると思っていたが、それだけではなく意識を乗っ取られることもあると知り、とてもショックを受けていた。さらには使用人だと思っていた老婆が龍神に仕える巫女の一族で人よりも神に近い存在、精霊であり、今見ている老婆の姿さえ仮の姿だと知り、なぜ今まで全く気づかなかったのかと重ねてショックを受けていた。


 老婆は祭壇の鏡に向かって座り準備を始める。濃い紫の宝玉のついた腕輪を腕から外して手にかける。手を擦り合わせ、何かつぶやきながら、映し出したい記憶に意識を集中する。


「龍神様への忠義の下に、彩玉の力よ、今ここに我が記憶を映し給え。」


すると紫の宝玉の輝きが増し、祭壇の鏡に反射する。次の瞬間、老婆が倒れると鏡の上に薄紫の靄がかかった。

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