水宮家の懸念
水宮家が呪いのことを神城家に相談できない理由は単なるプライドの問題ではないと話す龍幸。龍也は腑に落ちない様子で龍幸の話の続きを待った。
「龍也よ。水宮家の当主に現れるこの呪いの影響、その根源は何だったと認識している?」
「言い伝えでは昔、我々のご先祖様が術力を高めるために龍神と取引をした代償だと聞いております。その取引により龍神が水宮家の守護神となったとも。」
「いかにも、それが水宮家の多くの者が知る表向きの言い伝えだ。しかしその言い伝えにはもう一つ別の逸話が残っている。これは代々当主にのみ語り継がれ、他言無用とされている。おそらくはこちらの方が信憑性は高いだろう。」
「もう一つ別の逸話ですか?」
龍幸は頷くと、当主にのみ語り継がれるという言い伝えを語った。その内容は、取引ではなく水宮家の治める地に住まう龍神を鎮めるために執り行った儀式が逆に龍神を怒らせ失敗、龍神の怒りにより水宮家に呪いが降りかかったというものだった。
この話を聞いて龍也はようやく“危険なこと”の真意を察した。
「お父様、そういうことでしたか…。」
「察したか。そうだ。相談するとなればこれらの話をせざるを得ないだろう。それ自体が危険な行為なのだよ。儀式に失敗し神を怒らせた過去もしくは龍神との取引で大変な代償を払っていたことが明るみに出れば、神城家の助けを借りて龍神からの呪いを解けたとしても、王家や他の家々、民からの信頼は失墜し国政には残れない。神城家との間に古くからのパイプがあれば内々に相談もできたかもしれないが、実際には昔からの因縁で家同士の接点もなく、気安くは相談できない上、力を貸してもらえる確証も呪いが解ける確証もない。更には呪いを解くことで守護神とされてきた龍神との繋がりが消えれば、水宮家の霊力、術力が弱まる恐れさえあるのだ。」
占術院院長の執務室の窓の外には一人の人影があった。気づかれぬよう二人の様子を見守っていたその人影はここまで聞くとすっとどこかへ消えていった。




