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デバッグ・アウト! 〜自作乙女ゲーの悪役令嬢に転生したけど、クソバグだらけでセルフ尻ぬぐいしてる件〜  作者: 上園 千紗


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第11話 雪山の試練(中編)

「あっ」


 なすすべなく、後ろに倒れた。


 余計なコリジョンに引っかかったわけではない。

 この局面で、普通に滑って転んだ。


「¿Néiuq?」


 男たちがこちらに気づいて、怒号を上げながら迫ってきた。


「逃げて!」


 ニーナとレオに向かって叫んだ。

 レオはすばやくニーナの手を引き、駆け出した。


 カイルに助け起こされて、私も全力で走る。


「¡Arepse, ahcucse artseun nóicitep!」


 男たちは何か叫びながら追いかけてくる。

 そのまま走っていると、突然前方のニーナが叫び声とともに消えた。


「あーーーれーーー!」

「ニーナ!」


 後を追ったレオの姿も消えた。

 何かが起きているが、それどころではない。


「こっちだ! あっちは何があるかわからん!」


 カイルに腕を引かれ、脇道にそれる。

 ニーナたちが消えたのと逆方向だ。


 急斜面を登っていくと、開けた場所に出た。

 一面雪景色で、隠れる場所がない。


「クソッ……」


 珍しく、カイルが焦っている。

 ぽつんと生えている大木の陰に、カイルと一緒に身を隠した。


 まもなく、追ってきた男のうち一人が姿を現した。

 心臓がバクバクしている。


 しかし男は辺りを見回すと、すぐに去っていった。


「助かった……?」


 ホッとして、大きく息をつく。


「いや、後ろだ」


 カイルに言われて、振り返った。

 もう一人の男が、銃を構えて立っていた。


 男が、引き金に手をかける。


 終わった。

 最後に日本食が食べられてよかった。


 そう思って目を閉じた瞬間、バシャッと顔に水がかかった。


「冷た!」


 目を開けると、身体が真っ青に染まっていた。

 男の銃から、勢いよくインクが噴き出している。


「やめろ!」


 カイルもインクをかけられている。

 走って距離を取って、男と睨み合う。

 先ほど去っていったもう一人の男も、戻ってきた。


「何がしたいのよ!」

「Is somanag le oleud, ¿sárahcucse artseun nóicitep?」


 男は必死に何かを伝えようとしているが、サッパリわからない。

 すると、男は懐から二丁の銃を取り出し、こちらに投げてきた。

 銃を指さして、何か言っている。


「拾えってこと?」


 銃を拾い、一つはカイルに渡す。

 銃の先端から、ピンク色のインクがポタポタと落ちた。


 男は雪原の方へ歩き出し、こちらへ手招きした。

 ついていくと、男の足元に的のようなものがあった。


 男は銃を構えると、その的を撃って青く染めた。

 身振り手振りで、何か伝えようとしている。


 雪原に配置された多数の的。

 二色のインク。

 水鉄砲。


「ははーん、わかったわ」


 顔についたインクを、袖で拭った。


「カイル。事情は分からないけど、私たちは多分ゲームを申し込まれてるわ」

「ゲーム?」

「ええ。ルールは簡単。この的を、より多く自分のチームの色で塗ったら勝ち」


 私は銃で的を撃って見せた。

 青いインクが、ピンク色で上書きされた。


 それを見て、男が大きくうなずいた。

 どうやら合っているようだ。


「¡Emeugís!」


 男は再び歩きだすと、手招きした。

 その後に続いて、雪原の真ん中まで移動する。


 小さな旗と時計が置かれていた。

 ここが中心地点なのだろう。


「ふっ、楽勝ね。私の戦闘力はプラチナランクよ」

「よくわからんが、とりあえず撃てばいいんだな」


 男は、てっぺんにベルが付いた時計を操作し、地面に置いた。

 タイマーのようだ。

 そしてスッと左手を掲げると、大声で叫んだ。


「¡Sodaraperp, sotsil, ay!」


 開始の合図だろう。男たちが走り出した。


「カイル、やるわよ!」


 私とカイルも銃を構えて走った。


「カイルは坂の上を! 私は下をやるわ!」

「お前うまいんだろ! きつい方やれよ!」


 文句を言うカイルを無視して、坂を下っていく。


 めちゃくちゃ楽しい。

 気持ちよく撃っていると、横からインクを浴びた。

 男の一人が、こちらを撃ってきている。


「邪魔しないで!」


 撃ち返すが、当たらない。

 実際にやるとエイムが難しい。


 カイルを見ると、もう一人の男とやりあっていた。

 きれいなフェイスショットを決めている。


 男と撃ち合いながらも、順調に的を塗っていく。


「カイル! どう!?」


 坂の上の方にいるカイルに叫んだ。


「負けてる! 特に下の方!」


 普通に悔しい。

 男二人組の方が、圧倒的に脚力がある。


 何かコツはないだろうか。

 そう思って男たちを見て、違和感に気付いた。


 よく見ると、インクが当たっていない周囲の的まで青色に染まっている。


 ぷつんと、頭の奥で何かが切れた。


「はぁああ!? お前らチーターかよ! ぜえええったい許さねえ!」


 全クリエイターの敵、チート。

 善良なプレイヤーのゲーム体験をめちゃくちゃにする、最低最悪の存在だ。


 絶対BANする。

 何か使えるものはないかと辺りを見回して、坂の上の小さな小屋が目についた。

 その脇に、いいものが置かれている。


 私はニヤリと笑って、小屋まで走った。

 目当ては小屋の脇にある、たくさんの丸太だ。

 おそらく薪にするためのものだろう。


「カイル、手伝って! この丸太を塗ってほしいの!」


 近くにいたカイルを呼んで、二人がかりで丸太にインクを塗っていく。


「どうするんだ、これ」

「こうするのよ!」


 塗り終わった丸太を、全力で蹴り飛ばす。

 丸太は、ゴロゴロと坂を転がっていった。

 丸太がぶつかった的が、次々とピンク色に染まっていく。


 坂の下で、男たちが唖然とこちらを見ている。


「丸太使いなめんじゃないわよ! カイル、どんどんやるわよ!」


 次々と丸太を塗って、転がしていく。

 妨害しに来た男たちは、カイルがフェイスショットで撃退した。


 まもなくして、大きな音でベルが鳴った。

 結果は見るまでもない、私たちの圧勝だった。


「よっし! やったわカイル! チーターに勝ったわ!」

「ああ」


 片手を突き出すと、カイルがハイタッチしてくれた。

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