2、五線譜と音符たち
親戚との楽しいお泊り会は楽しく終わり、家族2組の日常生活に戻った。
悠ちゃんのパパが新しい動画を作ると言い、庭の奥のテラスで作業をしている。
「パパ、わたしも手伝うよ」
「悠ちゃんパパ、しゅさも手伝うよ」
「助かるな、じゃあ、一緒に手伝ってくれるかい? 」
「ぐぐ……粘土硬いね」
粘土をこね終えると、悠ちゃんパパがみんなでこねて柔らかくなった粘土で、器用に仔犬を5匹作った。
「パパ、すごーい」
「かわいい」
その後、悠ちゃんパパがカットした木を、みんなで紙ヤスリで削ったり、木にアクリル絵の具で塗ったりした。
「あ……」
悠ちゃんがうっかり水入れを倒してしまった。
アクリル絵の具で綺麗に塗って乾かしている木の作品に水がこぼれてしまう。
「パパ、ごめんなさい」
「悠ちゃんもしゅさちゃんも、手伝ってくれてありがとう。かわいい服をこれ以上汚したら、ママ達に怒られちゃうから、ここまででいいよ。手伝ってくれたお礼に、土曜日、アイスクリームおごるよ! 」
「わぁ~~い」
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週末の土曜日、しゅさと悠は父たちと4人で秋吉台へ遊びに行った。
休憩所でアイスクリームを食べていると、しゅさと同い年くらいの少女と弟らしき少年がとなりのベンチに座っていた。
しゅさと悠は父親の膝の上から降りると、見知らぬ姉弟らの向かいに座った。
「アイスクリームおいしいね」
と、しゅさが勇気を出して姉弟に話しかけると人懐っこい性格らしく笑顔で頷いた。
「わたし、しゅさと言うの」
「わたしは悠だよ」
姉弟らはアイスクリームを食べ終えると、しゅさと悠を遊びに誘ってくれた。
「私の名前はミナ。弟はイツキ。一緒に遊ぼうよ! 」
「うん! 」
「外に行こう」
休憩所から出て、ミナちゃんとイツキくんとかくれんぼをしていると、彼らの知り合いの子供らも加わってきて、全員で12人の賑やかなかくれんぼになった。
とても広ーい秋吉台でのかくれんぼは、しゅさと悠にとって、はじめての体験だった。
鬼役の子から遠く離れて、白い岩の影に隠れていると、全く見つけてもらえず、鬼役が別の子に変わってしまっていることに気づいたので、近くに隠れることにした。
それでも鬼役の子に見つけてもらえないので、今度は少しずつ鬼に近づいていくことにした。
すると、隠れている場所を移動しているうちに近づきすぎてしまい、とうとう鬼に見つかってしまった。
今度はしゅさと悠で2人で鬼の役をする事になったが、みんなは遠くに隠れてしまっているのか、なかなか見つからない。
いろんな所を探していると、ある岩から女の子の肩がはみ出して見えていたので、近づいて行ったら、
「見つかったぞ、逃げろー」
と声がしたので、しゅさは素早く声がした方向を見た。
小学生の男女があわてて逃げていったが、しゅさはその小学生の子供たちの名前を知らないので何て声かけようか困った。
「見つけたよ…………えーーとそこのお兄さん、お姉さん」
としばらく考えてから声をかけてみたが、遠くに去った後だったのでどうしようもなかった。
名前を知らない小学生のお兄さんとお姉さんたちのことはあきらめて、ミナちゃんとイツキくんを探すことにした。
「あ、見つかっちゃった」
2階が展望台になっているところの1階の柱の影にかくれているミナちゃんとイツキくんを見つけた。
ミナちゃんとイツキくんがじゃんけんをし、この次の鬼役はイツキくんになった。
この次は絶対見つからないようにしようと、悠ちゃんと2人で鬼役が来なさそうな所を探した。
大きな岩を見つけて2人でしゃがみ込んでじっとしていると、だんだん眠くなってきたので、かくれんぼをやめて父親のところに戻る事にした。
休憩所に戻る途中で、ミナちゃんとイツキくんと彼らの両親に会った。
「ああ、見つかって良かった。しゅさちゃんと悠ちゃんのお父さんと一緒に探してたんだよ」
「今日はいっしょに遊んでくれてありがとう。とても楽しかった」
「うん、わたしもイツキも楽しかったよ。また遊ぼうね」
「うん」
「バイバイ」
秋吉台で、はじめてお友だちが出来て、とても楽しい1日だったので、次の日も行きたいとしゅさらは両親に頼んだ。
「ママ、はやくぅー」
「うう……ちょっと休憩させて」
秋吉台に向かう駐車場からの坂道の途中で、母は立ち止まる。
最近、太り気味な母2人を心配した父たちが、秋吉台の散歩に誘ったのだ。
「あともう少しで、アイスクリーム食べられるぞ」
「そうだよ、ママ。アイスクリームが待ってるよ! 一緒に食べよう」
「うう……食べたい」
「アイスクリーム食べるぞ……」
足に重りを背負っているかのような歩みの遅い母たちを元気づけて、坂の頂上の秋吉台へ一緒に登る。
両親らと向かい合わせにアイスクリームを食べていると、となりのベンチにミナちゃんとイツキくんの両親が座っていた。
「こんにちは! ミナちゃんとイツキくんは? 」
「あら、えーーと、しゅさちゃんだっけ?こんにちは。今日は両親と一緒なのね、ミナとイツキは外で遊んでるわよ」
やったー! 今日もミナちゃんとイツキくんと遊べる!
と、しゅさが喜んでいると、母がいきなり立ち上がって叫んだ。
「かなこちゃんじゃない! 偶然、えー、なんで、私、まおり、秋が丘中学と高校のとき同級生だった、覚えてない?」
「え、えーと、ま、おり? えー、うそ、え、ええー、本当にまおりなの?」
自分の母親が、知らないはずのミナちゃんとイツキくんのママと向かい合って話し始めたので、しゅさは驚いた。
ミナちゃんとイツキくんのママとなぜそんなに仲良さそうに喋っているのか?
「ミナちゃんとイツキくんのお母さんは、ママが中学と高校の頃の同じクラスで友だちだったんだね。びっくりだね。」
と、しゅさの父が尋ねる前に先読みして説明してくれた。
ミナちゃんとイツキくんのお母さんとママは、おともだちだったのか。
「中学」や、「高校」、私も大きくなったら、ママみたいに中学や高校でお友だち作るんだ……
それから1週間後、なんと家にミナちゃんとイツキくんがやって来た。
しゅさの母は、車で家に通ってくれる生徒がなかなか集まらないので、ヴァイオリンだけでなくピアノ教室も頑張ってしている。
ミナちゃんはピアノの体験教室に参加しにやって来たのだった。
イツキくんのほうは、ピアノもヴァイオリンにも興味がないようなので、悠ちゃん含め3人で庭から少し離れた場所にある、屋根のあるテラスで遊ぶことにした。
テラスのテーブルでおりがみの本を見ながら一緒に折った。
「これ、どう折るの?」
「ううーん、紙ヒコーキしか、折り方わかんない」
「こうするのかな? あれ?」
しゅさは、幼稚園から借りたおりがみの本を読み、難易度レベル5の馬と騎士にチャレンジしてみたが、折り直し過ぎて折り紙がヨレヨレになってしまっていた。
イツキくんはレベル1の星マークの紙ヒコーキで遊んでいる。
悠ちゃんはレベル2の腕時計を作るためにハサミでチョキチョキして苦戦している、
しゅさは紙ヒコーキを飛ばして遊んでいるイツキくんが羨ましくなってきたので、しゅさも紙ヒコーキを折ることにした。
「あー」
風が勢いよく吹いて私とイツキくんの紙ヒコーキは、家の敷地の外へ飛ばされてしまった。
家の裏門を出て紙ヒコーキを取りに行くと、たまたま外を歩いていたおねえさんが紙ヒコーキを拾って渡してくれた。
「あなにやし。空にまがふ、青丹と桃花の鳥二つ。ゆめ失したまふなよ。いざ、受け取れ」
おねえさんはそう言って、私たちに微笑みかけてきた。
何を言っているのか全くわからないので、尋ねようとしゅさは思った。
が、おねえさんの服装、全身、頭から足までを見たら、何て尋ねたらいいのか、わからなくなってしまった。
それくらい、しゅさは釘付けになってしまった。
頭の上にのせている蛇のティアラはキラキラと宝石がついててキラキラ光って眩しい。
赤、透明、薄緑、薄ピンク、紫のカラフルな宝石にゴールドのネックレスとピアスもキラキラ光っている。
ワンピースは濃い赤紫色合いの生地に、カラフルな鳥やドラゴンや亀や蛇の金の刺繍でギラギラ輝いており、そのワンピースからのぞく白い布が日光に反射して虹色でもっと眩しい。
そして極めつけは腕に巻かれた虹色のマフラー、まるで生き物のようにずっとたなびいて揺れている。
靴も金色の草履を履いている。
その姿にくぎ付けになっていると、突然、そのおねえさんが私に声をかけてきた。
「子よ。近き比、この屋よりいと優しき楽の聞こゆるを。吾は千年を隠り居れば、この世の琴を知らず。語り聞かせてたぼれ、小さき人よ」
おねえさんが何語をしゃべっているのかわからず、私が泣きそうになっていると、イツキくんが人さし指で腕をつついて私に言った。
「しゅさちゃん、知らない人に誘われてもついてっちゃダメなんだよ。戻ろうよ」
「うん。あ……、えーと、おねえさん拾ってくれてありがとう。バイバイ」
おねえさんが私たちに話しかけてこようとしていたが、イツキくんが早く戻ろうと言うので家に戻ることにした。
不思議なマフラーのおねえさんの話を体験教室を終えた母たちにしたら、となりの家まで車で15分もかかるのに作り話じゃないかと信じてもらえなかった。
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あれからしゅさは7月に、5さいになった。
幼稚園のプールが大好きなしゅさは、家のプールもみんなで掃除して入られるようにしようと母親らに提案していた。
しゅさは両親と悠ちゃん家族と全員で、庭の草むしりをしていたが、あまりにも暑いのでプールに入りたくなってきたのだ。
「明日、ピアノのレッスンが2件も入ってるの。その段取りも考えないといけないし、草むしりが終わったら夜ごはんの準備もお風呂掃除もしなきゃいけないし、ごめん、無理」
「えーー」
昨日も一昨日もずーっとプール入りたいとお願いをしてるのに、全然プールに入られない。
掃除を抜け出して、大浴場の浴槽に水溜めて水遊びしようとしたら見つかって怒られるし、つまらな過ぎる。もうガマンげんかーーい!
「プール泳げるようにしてくれないとヤダヤダヤダァーー、してくれないと邪魔してやるぅーー」
草むしりしてる母親の前に立ちふさがり、私は必死に暴れて抗議した。
「こら何するの! ……あ、そうだわ、幼稚園が夏休みに入ったら、みんなで下関の海に行きましょう」
「わーい、海に連れてってくれるの?やったーーーー♫」
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実際の秋吉台は、眺めを観て楽しむという観光地です。
子供が遊べる遊具のような造りはしていないですし、この小説のように鬼ごっこすると、予想もつかない行動をする子供もいるし、行方不明になる可能性もあるので気をつけて下さい。
何故、じゃあ、こんなマネをするかもしれない内容を書いたのかと言うかというと、マネして欲しい目的ではなく、フィクション作品として楽しく読んで欲しいからです。
あえて書くことで、第三者の視点で読む事で、子供の遊ぶ場所が減っていってる今の日本の現状に気づいて欲しい目的もないわけではないので、気になる方はこれをきっかけになればいいなとも思います。
公園も遊びづらくなりました。子供はどこで遊ぶのがいいのでしょうか?




