27層 人喰い花
失礼眼鏡ちゃんこと橘カノンさんと、ヤング(兄)、そしてフワッとした雰囲気のお姉さん、椿さんらと解散して今日も今日とてダンジョンにやってきた。
枕の中には空飛ぶ絨毯と、リアリーが入った宝箱がある。27層に転移して移動用に絨毯を取り出した。リアリーはいつものように寝ていたが、ダンジョンだと分かると宝箱から顔だけ出してボーッとしだした。
モンスターにも寝起きのぼーっとする時間があるとは。リアリーが特殊なだけかもしれないが。
「んー、いつもより草木の背丈が高めだな?」
しかもゆらゆらと蠢いているように見える。
しかも一面の緑でどこかしら植物と近づく必要があるときた。
俺はボーッとしているリアリーを引っ張り出した。
「よーし、いってこーい」
「!?」
とりあえず放り投げてみる。
瞬間、植物の花弁、その奥にギザギザの歯が見えた。花は容赦なくリアリーに噛みついた。
だが、リアリーもそんじょそこらの蟻とは大違いだ。即座で敵の攻撃を見てゆうゆうと回避した。
お返しとばかりにリアリーは茎の部分に食らいつき、噛みちぎった。
「おー、食虫植物ならぬ食人植物ってわけかー。アイタタ、噛む噛むな」
お前なら無事だと思ったからの先駆けだ、とポーションという賄賂を贈呈して宥めた。
いやはや、これも信頼ってやつなのにな。知らんけど。
「しかし、凶悪だな。燃やそ」
ライターを取り出し、いつものように時間をかけて育てて巨大にしてからファイヤー。
段階的に燃え移り、深紅の森と化した。
色だけ見れば秋になったようなものだ。四捨五入で風情があると言える。
「ん?」
燃やした森が蠢く。
近くの植物を見ると、根っこを自分で抜いて足にしていた。そしてもの凄い剣幕で、一斉にこちらに突撃してきた。
よくゲームにいるようなワームの中身で、上に花を乗せただけみたいな見た目である。それが燃えて迫ってくるわけだからグロくないわけがない。
「ま、ほっときゃ死ぬだろ」
キモイので転移で上空に避難。
しばらく落下する度に上に転移すれば大丈夫だと思って連続発動をし始めた、その時。
——ブルゥーン、と無数に風を切る音が聞こえた。
燃え盛る食人植物が、根っこをプロペラにして飛翔したきたのである。
「おいおいおい多いしキモいし……! 植物風情が空飛ぶんじゃねぇよ! 許されるのは綿毛だけだっての!」
あまりにもキショい光景を目の当たりにし、俺はすぐに“塵舞”を抜いた。
重力に従って先頭のひまわりのような植物を斬り——チリチリと何かやばい音が聞こえたので、攻撃を中断。視界でいちばん遠いところにピンを刺して転移した。
直後。
——ドカン。
爆発音が一つ。
そして案の定閃光は重なり、瞬く間に連鎖していった。爆撃はかなりの速度で広がり、一面の花火畑が出来上がった。
ひたすら転移を繰り返して難を逃れた俺は、次へと続く階段から、リアリーとその悲惨な光景を眺めていた。
「やっば。さすがにあん中いたら消し炭すら残らねぇだろ」
リアリーから、誰のせいだと言わんばかりの恨みがましい視線が向けられた。誠に遺憾である。
ま、燃やすのは危険という知見がえられたから良しとしよう。よし!
正攻法で攻略しようとも思ったが、何度か出入りしても復活しなかったので、リスポーンは時間制なのかもしれない。
リアリーの仇(死んでない)はまた今度。
てなわけで次の階層へ降りた。
28層は、過去一で綺麗な森だった。
「精霊とかいそうだなー」
俺のボヤキに対して、リアリーは定位置への帰還という名の無視で返してきた。
そんな恒例になってきたやりとりの横で、何かが動いた。
「早速おでまし——か?」
草むらをかき分けて目の前に立ちはだかったのは、腰ほどの身長の、二足歩行マスコット系キノコであった。ご丁寧に可愛らしい顔もある。
いや、黒目はハイライトが入っていないし、闇のオーラを放っていて若干病んでいる気がしないでもない。
なんだか可愛らしいキノコで——
ガブリッ。
リアリーが唐突にキノコモンスターを頭から食べてしまった。
「おいおい嫉妬かー? 確かにお前さんにはあんな中毒性高い顔無いもんな」
とはいえ、だ。
俺はこんな時もあろうかと用意していた七輪と木炭を用意した。
「リアリー、生け捕りだぞ。倒したら食えなくなる。行動不能にしてここに山のように積むんだ。へへっ……キノコ狩り放題無制限コース、狩り尽くすそー!」
おー、とリアリーとグータッチ(リアリーの手がグーなのかは分からない)してから、それぞれキノコの生け捕り猟を開始した。




