0層 到来! 海外の主人公!
いつものように学校が終わり、協会本部へ。最近は普通に平日も通うようになっている。おかしいな、休日限定出勤の予定だったんだが……ま、いっか。
ゴールが見えない以上、ダンジョンに割く時間は多い方が将来的には良い。
絨毯にリアリーin宝箱を乗せて正面の自動ドアをくぐった。いつもは意味の無い騒音のみだが、今日はやけにミーハーみたいなどよめきが耳をくすぐる。
ついに本部長が収賄で捕まったのかと思いながら入場の手続きに行こうとすると、人混みが急に割れてこちらに金髪の同い年くらいの男が歩み寄ってきた。
「あなたがミナミ・ヤオエダか」
「ゆあーじゃぱにーずべりべりーじょーずネ」
「……日本語は分かるから普通にしてほしい」
「マジかよ。俺なんて英語ちんぷんかんぷんなのにやるじゃん」
同年代なのに利口なもんだ。
まあ、俺もちょっと本気を出せば余裕で100言語くらいいけるけどな。うん、まだその時ではないってだけ。
「お世辞はいい。人探しで日本に来ているんだ」
余程切羽詰まっているのか、名乗りもしない外国人は、周囲がずっとガン見しながら盗み聞きしているのに気付いていない様子。俺は紳士なので、ひとまずここでもなんだと場所を移した。
協会にあるカフェにやってきた俺たちだが、どうやらちょうど満席になったらしく案内が途中で止まってしまった。
店内を見ると夕方にも関わらず賑わっていた。
——ふと四人席に二人で座っている顔見知りを発見。
店員さんに嘘ついてそこに通してもらった。
「お邪魔しまーす」
「ミナミ、良いのか勝手に」
「良いんだよ。相席失礼。これで貸しはチャラってことで」
そう言って俺は、眼鏡とおさげが特徴の、初対面で化け物扱いしてきた失礼な少女の隣に座った。
そしてそんな失礼眼鏡ちゃんの向かいに居たのも、以前、クソ強ゴブジェネを引いていた水魔法使いのお姉さんだ。
俺は俺に借りがあるやつと美人さんの顔を覚えるのは得意なのだ。
「え、ちょ……」
「まーまー、面白そうだしいいんじゃない?」
何やら困惑した様子の失礼眼鏡ちゃん。
美人さんはパンケーキを口へ運びながら諭した。
そんな二人を無視し、俺は改めて日本語が流暢な、覚悟の決まった目をした男を見た。
服装は地味、だがそれは動ける服装を重視してのことだろう。あのエルフコスプレイヤーさんとは天と地ほどの差はあるが、一般的な探索者よりは強い。
そんな予感がする。
「まずは自己紹介といこうじゃねぇか。俺はご存知の通り、八百枝南だ。お前さんは?」
「僕はガレル・ヤング。【錬金術】の使い手だよ」
「へえ? 随分と万能そうなスキルだな。人間ソナー的なの作れないん?」
俺が提案したものは試したらしく、残念そうに首を横に振った。
いやー、にしてもいいね。覚悟の決まった人間ってのは。見てるだけで楽しい。
「そかそか。じゃあ誰を探してるんだ? 俺に聞く理由は?」
「探しているのはカレラ・ヤング。僕の妹で——地上でモンスターに連れ去られた子だ」
あ、これ疑われてるやつだ。
本命で見ているわけではないようだが、可能性として俺も犯人候補に入れているのだろう。
しっかし、カレラ・ヤングちゃんねぇ。
どっかで聞いたことあるような気がしないでもないんだが……ダメだ。思い出せん。
「なるほど、ちなみに俺は知らんぞ。あ、店員さん、この胃もたれ必至、逆クリームソーダください」
呼び出していた店員さんが来たので、逆バニーみたいなノリの飲み物を注文。シスコンガンギマリ外国人くんも頼んでいた。
逆クリームソーダソーダと、ミルクティーが出され、一口。その匂いでいっぱいになった。ソフトクリームにメロンソーダが少しかかってるだけなので、普通に美味しい。
「あ、思い出し——てない。そもそも知らんもんなー」
カレラ・ヤング。
完全に思い出した。
半ライスさんとこの助っ人外国人だ。確かに歳下感あったし、目の前のヤング(兄)の妹と言われてもなんら不思議でない。それどころか顔も似ている気がする。
だが、考えてもみてほしい。
離れ離れになった家族が、珍妙な宗教団体の幹部になったと知ったら。
俺なら嫌すぎて宗教団体を破壊しに行くだろう。
つまるところ、明かした場合、目の前のシスコンは例のクソ強コスプレエルフにコテンパンにされるだろう。
本人には言えないが、これは善意の嘘なのである。
適当にうやむやにして、こっちでも探しておくと伝えて話を終えた。
「さて、家族とはぐれて可哀想だし、ここは俺が奢るぜー」
「いいの?」
そうして俺は軽やかに財布を取り出し…………携帯で電子マネーを…………。
「……」
「ミナミ?」
「財布も携帯も家だわこれ」
「じゃあ僕が……あ、両替してない」
詰んだ。
二人揃って、隣で呆れた目で見ていた失礼眼鏡ちゃん達を見る。
「同じくお金持ち歩いてないから、よろしくー。今度返すからね」
「俺も今度10倍にして返すんで!」
「僕も返します! ごめんなさい!」
「はぁ……まぁ大した額でもないからいいけど」
そうして俺たちは、失礼眼鏡ちゃんにできた借金を返すため、電話番号を手書きのメモで交換し合うのだった。
数百円とはいえ、お金の問題は放置したらいかんからな。勝手に複利にされて莫大な額ふんどられるかもしれないし。




