0層 従魔契約(嘘)
珍しく日を跨いで少ししか経っていない時間帯。
よくバッティングする新人(もう新人ではない気もする)ちゃんではなく、不良っぽいプリン頭の目つきの悪い女の子だった。
こういうのって本部長の趣味が反映されているのだろうか。いや、絶対ある。顔採用絶対ある。
「退出でー。八百枝っつーものです」
「はいはい。どうぞ」
ポチポチとパソコンをいじるといつものように通された。買取カウンターに行って絨毯の査定や効果を見てもらおうと思ったのだが、宝箱の中にまだリアリーが居る可能性もある。
シュレディンガーのリアリー状態の今、司條さんに会ったらお説教タイムに入りそうなのでやめておくことに。
協会本部から出て帰り道、絨毯と宝箱を抱えて帰宅。
道中、今の俺を踏まえて思うことがあった。
「叱られるのを避けて報連相を疎かにする……そう考えるとあれだよな、褒めて伸ばす方が絶対いいよな」
こういうのを教育論とか言うのだろうか。よく知らないが、無闇に叱るのはよくない。
……これで俺も良いパパになれるぞー!
あとはお嫁さんだけだ!
そんなことを考えながら帰路を進んでいると向かいから見慣れたフードが見えた。
クソ強エルフコスプレ痴女の——
「どうも、ブリーフさん?」
「? あ、私か。……リーフだ。なぜそんなふざけた名前になる……」
ため息をつかれてしまった。
一文字多かっただけなのに。弁明しようと口を開くも、ブリーフ痴女の言葉で用意した言い訳がすっ飛んでいった。
「それにしても臭うな」
「——え、俺そんな臭い? 風呂は入ってるし、ダンジョンの中でも途中途中体拭いたり風呂で帰ってるのに」
「いや、そうじゃなくてモンスターの臭いがするという話だ」
「犬かよ。まああれっすわ、さっきまでダンジョン居たから」
「違う。…………まさかモンスターを隠しているのか? あるいは人に化ける類のモンスターか?」
「まあ落ち着きなされ。殺気立ち過ぎ。いかなる時も平常心が大事だぞー」
さて、どう誤魔化すか。
正直俺もあんま状況わかってないから説明しようがないんだが……とはいえリアリーはまだ寝こけている。
寝ている人を起こすなと親に教育されたいい子ちゃんの俺なので、ここはリアリーがモンスターだという話は置いておいて守ることにしよう。
「ま、あれだ。リーフさんや。知ってるか、従魔、あるいはテイムモンスターってやつを」
「ああ、従魔ができたのか。そうか、それなら早く言えばいいものを。君は外飼いするタイプの契約をしたのだな。ちなみに私は影飼い契約だ」
「あ、はい」
そんなポ〇モンみたいなシステムなんだ。
「どんな従魔なんだ? 私はフェンリルだが」
「……見せなーい」
「なぜだ。従魔同士の交流も教育に良いと聞く。契約したてなら尚更信頼感に——」
「見せないっ! こなくそ、覚えてやがれ!」
フェンリルってあれだ、神に仕える狼とかそんなあれだったはずだ。そんなの相手に怠け者のアリンコを紹介したとて食べられるのがオチだろう。
それに負けた気になるので絶対に嫌だ。
判明した時点で負けという考え方もできるが、勝負してないので無効だ。
俺は絨毯を加速させてまっすぐ帰宅した。
自室の片隅に宝箱とリアリーを設置。
モンスター育成系のゲームをダウンロードして、立派な〇ケモンマスターを目指すのだった。




