26層 パーティー行動の予行練習(蟻)!
「鑑定はしましたが、査定書までやります?」
「いや、口頭でいいっすよ。今回は買い取り無しで……あ、相場は今度ください。サイトに書きたいんで」
「はーい」
「いぇーい」
協会本部。
俺は今日手に入れたばかりの液体とコインを持ち込んでいた。司條さんに鑑定してもらったのである。
「液体の方が、“キューリアス定義剤” 。キューリアスってものを定義(?)して存在を担保するそうです?」
「何言ってるかミリも分かんないっす」
「私もです。で、コインは“生死流転の金貨”。……投げると一度だけ死神を呼べるそうです。表が出れば敵を殺し、裏が出たら自分が……これ廃棄しません?」
「いやいや、いざとなったら使えるじゃないっすかー。俺を追い詰めたら死神のパイセンがぶっ殺してくれるなら安心して戦えるってもんでしょ」
保険としては有能だ。
クソの役にも立たない国民健康保険よりずっと、いざとなった時に助けてくれる可能性がある。
「じゃ、いってきまーす」
鑑定料金を支払ってダンジョンへ。
続きから攻略する予定なので、今朝まで居た牢屋に転移。
相変わらず俺と一緒に反省部屋に入れられているサボり蟻が寝こけていた。俺が一人で抜け出したってのに、こいつは呑気なもんだな。
「おーい、起きろー」
硬い頭をコツコツとノックして起こす。
サボり蟻は鬱陶しそうにこちらを見てからまた目を閉じようとした。
「まぁ待てよ相棒。俺らでここを抜け出す、ってだけの話じゃあない」
睥睨の中に興味が宿った視線。
俺はニヤリと笑って続ける。
「お前んとこの指揮官っつーの? 遠くからチクチクしてきた蜂野郎をぶち殺すんだよ。夢、あんだろ?」
ジッと俺を見つめるサボり蟻。
俺はそいつの蜂蜜でできた枷を破壊、牢をこじ開けた。
廊下の材質は土、そして俺らのゴールは木のテッペン——やることは単純明快だ。
のそりと出てきた蟻を肩に担ぐ。
慌ててじたばたしているサボり蟻を無視し、足に力を入れて跳んだ。
昇〇拳のノリで天井を砕き、上の階に。それを絶え間なく行い、あっという間に見晴らしの良い、ガラスのような何かでてきた天井のところへ到着した。
ここの上が最上階なのだろう。
同じ感じで叩き割って入ろうとしたが、硬くてゲンコツが痛むだけに終わる。
「しゃーない、サボり蟻……呼びにくいな。うーん、さぼ……リアリー。よし、お前はリアリーな。語尾は下がる発音で」
一時的な団体行動。
これもある種、将来のための訓練だ。
我が偉大なる息子を復活させた暁には、きっと超絶美女な彼女が出来ているはず。一緒にダンジョンに潜り、かっこよく守る。そんで一緒にスライム飲み放題するんだ……。
「あっおい、そっちなのかー?」
リアリーに導かれるがまま進むと、何の苦労もなく最上階へ到着した。
ガラスの螺旋階段を登った直後、リアリーが真上を向いた。釣られて見るも、何も無い。
——いや、ゆらりと景色が揺れた。
陽炎ではない。何かが居る。
咄嗟に横にでんぐり返し。
頑丈な床面に巨大な針が刺さった。
「助かったぜリアリーさんよぉ。にしてもまあ、野生のボスがいるとはな」
飛んでいる上視認性も悪い。
取りまわしのきく“ナマクラ”を構えた。
相も変わらず格上判定はしてくれないようで、灰色に沈んだ色のままのそれを片手に、空中へ転移した。




