0層 パンデミックパンナコッタ
夕方、それほど遠くない場所で爆発でも起きたのが見えた。遅れて窓が揺れる。
「物騒だなー」
「どうやらモンスターのようです。先日の京都と似たような規模で、ああ、しかし今回もすぐに治まるかと。いかがなさいましょう?」
先日の京都……あ、もしかしてあの時の喋るうんこみたいなのがいっぱいいるのだろうか。なら別にそこまで大事にはならないだろう。
「ミナミー、ここどうやったら上へいけるんだ?」
「そこはこっちのルートからいけるんだぜ。この天井見せかけだから。ほら、くーさんも続きしよ」
「かしこまりました」
引き続き協力プレイのアクションゲームを堪能していると、インターホンが鬼のように連打された。
はいはい何であれ間に合ってますよーと断りながら玄関を開けると、そこにはそれはもうたわわに実った果実――じゃない、司條さんが息を切らせて膝に手を乗せていた。
「マラソン大会中っすか?」
「違いますっ! はぁ、はぁ……町に、モンスターが出現しているんです!」
なるほどね。
俺の前には二つの選択肢が用意されているわけだ。
ヒーローみたく、人々を助けるために飛び出すのがひとつ。
もうひとつは――
「ミナミ! ボス戦まできた!」
「よっしゃ! あ、司條さんも上がってください。ジュースありますよ」
「え……? えぇ……??」
最大四人まで一緒にプレイできるので、折角というわけで全員で遊ぶ選択肢をとった。
◇
「なっ、残機が! 私しかいないじゃないですか。今コインでみなさんの復活を――って違う!!」
「うわ、急になんすか」
「そーだぞ、早く我々を蘇らせるのだ。ロケットちびっこ」
「クッキーを焼きました。どうぞ南様。召し上がってください」
「なにくつろいでいるんですか! こうしてる間にも被害が出ているんですよ!」
何を言い出すのかと思ったら。
俺はくーさんにアイコンタクトを送った。
「南様から視線を頂くなんて……! ああ、尊い。我が生涯に一片の悔い無し……」
ダメそう。
こちらの意図は伝わっていない様子である。
「くーさん、町の被害状況は?」
「はっ。建造物の被害は多数。軽傷複数。重傷・死傷者はゼロでございます。リーフと名乗っていた者と、あとは外国の少女と黒髪の少年が制圧した様子です」
ほーん。
ふーん?
チラッと、残機が増えてノリノリでゲームに勤しむ半ライス氏を横目で見る。
特徴を聞く限り、彼女の部下が働いているように思えるが、当のトップはゲームをしている。
これが社会の縮図ってやつか。
「ま、そういうわけなんで大丈夫っすよ」
「何を言って――」
電話が鳴った。
司條さんの携帯からだったようで、彼女は話を中断してそれをとった。
「はい、司條です。……え、本当に収束したんですか? は、はあ。分かりました。お疲れ様です」
「――ね?」
「一緒に遊んでしまったので強くは言えませんが、釈然としませんね……」
「ミナミとチビすけ、次のステージ行くぞ。使いっ走りはジュースおかわり!」
「へいへい」
「仕方ありませんね。少しサボらせてもらいます」
「私は南様の使いっ走りであって、貴方のではありません。そこはお忘れなきように」
そうして俺たちは全クリまで遊び続けたのだった。




