0層 アソビアソバレ
平日、月曜日。
修学旅行は土曜日まであったので、一日しか休みが無い。そう不満を持ちながら学校へ行ってみたら誰も居なかった。
「これがストライキってやつか……!」
感動ものだ。
普段何事もないように過ごしているクラスメイト達がこうやって意思表示するほどに団結したのだから。
……俺だけハブられてる気はするが、まあうん、俺は彼らの遥か先を言ってるのでね。仕方ない仕方ない。
「この場合、学級閉鎖なのか?」
一応時間まで自席にて待つ。
しかし、チャイムが鳴っても一向に教師がやってこない。まさか教師と生徒揃ってとはな。教育現場の労働条件は過酷だと聞くが、ここまできていたか。
「俺も帰っていいんかな……」
一旦職員室へ確認しに行く。
人自体はいるので全校でストライキをやってるわけではないようだ。
「しつれーしまーす。あ、学年主任の。うちの2年2組がストライキっぽくて……え、振替休日っすか? あー、その線があったか。うっす。しつれーしましたー」
どうやら今日は修学旅行の振替休日で、俺たちの学年は休みだったらしい。
せっかくの休みなのに制服に着替えて学校まで来たとか嫌になるな。
今日はダンジョン活動、略したダン活! もお休みにしよう。最近は平日もバシバシ潜ってたし。
コンビニで大量のお菓子とジュースを購入して帰宅。
うちのアパートの階段を上ると、聞いたことのある声がした。
うちの玄関前に、セツナァ! のお姉さんと、怪しい宗教団体の親玉になった“世界の半分をくれてやる”Tシャツを着た半ライスさんが何やら揉めていた。
「あ、ミナミ! 遊びに来たんだが、変なヤツが邪魔しようとしてくるのだが!」
「八百枝様、不審者を見かけたのでお下がりください。おそらくストーカーの類かと」
俺は二人の間を通り、否、素通りして鍵を開けて自宅に入り、そっと扉を閉めた。
「えーと、警察っと。あ、すみません、自宅の前でストーカー二人が喧嘩してまして……え、いやいや、本当ですって……あー切られた」
まったく。
実害が出てからどうのとか、そんなだからストーカーによる被害がいつまで経っても無くならないんじゃなかろうか。
玄関先で騒がしく、ご近所さんに迷惑になりそうなので仕方なく二人を家に上げた。
「っはー、懐かしい床だ!」
「八百枝様、この怪しい者も入れてよかったのですか? 私の【千里眼】にも映らないほど怪しいのですが」
「まあまあ、お菓子食べながらゲームでもしよう」
不審者二人を丸め込んでパーティーゲームをダウンロードして遊ぶことに。ミニゲームつきのすごろく的なアレだ。
「――お、一気に進んだ。アイテムゲッツっと。そういやえーと……セツナァ! のお姉さん」
「はい。貴方様の來温でございます」
「お、おう? じゃあ、くーさんで。こないだ何でも言う事聞くって言ってたっすよね?」
「はい。いくらでも、好きなだけ仰ってください。企業でも土地でも国でも何でもお申し付けください。私のようなものでよければ身体、正確に言いますと処〇膜でも――」
「秘書に! なってもらおうかと!」
なんだか向けられている矢印が大きすぎたので、慌てて想定していた要望で押し退けた。
「秘書、ですか?」
「うっす。嫌なら断ってもらっていいんすけど、最近ドロップアイテムでお金関連がめんどくさくなってきたんで、お財布を任せたいなって」
「……なるほど」
「おーい、ミナミ、次お主だそー」
「はいはい、ほれ、ミニゲーム開始」
「おお! これはなんだ、龍か!」
「昔の蒸気機関車だっつーの。ここで落とし合いじゃおら!」
「……やはり、他人に金銭の全てを任せるのはいかがなものかと、誠に恐れ入りますが、提言させていただきたく存じます」
「いーのいーの。持ち去られようが、減るもんじゃ……いや、減るけど無くても別に困らんし。家追い出されてもダンジョンで暮らせるし。あ、アイテムとられた!?」
「八百枝様……! 承知いたしました。不肖來温、必ずや貴方様のご期待にお応えいたします!」
「ふふん! 我の勝利! さあサイコロは……ぐぬぬ小さい……」
そうしてパーティーゲームの結果は俺が一位、二位にくーさん、三位に半ライスちゃそで落ち着いた。
俺とくーさんの間で契約? とかなんとかよく分からない間にしたついでに、俺のことを少しだけ親しげに呼んでもらうようにした。
夕方。
「南様、こちらご希望されていたトリュフチョコでございます。漫画を読まれている間に作成いたしました。ついでに資金面に関しましても、元手よりおよそ三倍ほどに膨らませてあります」
「お、おー、ありがとう?」
「チョコか。我も食べる」
「なりません。こちらは南様のものです。いくらご友人とはいえ、許可なく……」
「まあまあ、みんなで食おうぜー」
「いぇい!」
「なんと寛大な……!」
うん、なんか思ったより優秀な秘書だけど本人も楽しそうだしいいよね。俺たちはくーさんが作ってくれたチョコをつまみながらデジタルアナログ問わずゲームしたりと楽しむ時間を過ごした。
――夕日が沈むオレンジの空に、爆炎が大きく彩られるまでは。




