23層 旅行明け初のモンスターがこいつかよ
人間、誰しも苦手なものがある。
お化けだったり、集合体だったり、税金だったり、まんじゅうだったり。
かくいう俺にも苦手なものはある。
昔ほど極端に叫ぶとかはないが、それでも生理的に無理な存在。
俺は修学旅行が終わり、日常に戻り、いつものようにダンジョンにいた。23層の森林エリア。
目の前には、高さで言うと三メートル、幅は一メートル強、奥行で四、五メートル。
黒光りした、水陸空全用、宇宙空間でも活動できると噂のアイツだ。
――G。
「やはり森は焼き滅ぼすべし、火を放てい! 森林破壊じゃ! 環境なんてクソ喰らえ! ふぁいあー!」
俺は躊躇なく火を放った。市販のライターでも一瞬で燃え広がっていく。
どうやらかなり燃えやすいらしい。
どうせあとで元通りになるからだろうか。
ともかく、だ。
とりあえず火を放ってみたものの、ヤツはまったく堪えている様子はない。
――Gの特性、その一。
とにかく環境適応性能が異様に強い。
「どっせい!」
親方に直してもらった“塵舞”を抜剣。思いっきり上から叩きつける。
派手な砂埃の中から、かなりの勢いでヤツが飛翔。
いつもの戦闘向けの動きとか以前に、本能で回避。
ほんっと無理。今は俺も成長してなんとか視認するくらいはできるが、あれに触られるとか切腹した方がマシ。
――ともあれGの特性、その二。物理攻撃にも強い。
「こうなりゃ奥の手だ」
縦横無尽に突進攻撃を仕掛けてくるGを、嫌悪感だけで回避しつつ枕からおやつのガムを取り出した。
「【罠作成】!」
それを地面に叩きつける。
小さなガムはその衝撃で破裂、スキルによって地面に広がった。
突進してきたヤツを、剣で弾いて罠にぶつける。
見事に背中が地面にひっついて身動きを封じた。
「終いだ。【土龍】」
地面に触れてる足に力を込めると、拘束したヤツの真下から、土で構成された龍が飛び出てヤツを口ちぎって天井に衝突。
ヤツが薄い霧になった。
その霧を軽く押しのけ、土の龍が消えたところから一欠片の土塊が落下。
まるで置き土産のように、うんこの形をした土がその場に鎮座していた。
「最後っ屁、実も出てるやんけ」
この仕様どうにかならないだろうか。発動した瞬間はかっこいいのに終わったあとがあまりにもクソすぎる。
一息ついて魔石を回収していると、燃えた森の中から物音が複数した。
冷や汗が流れる。
「あー、俺察したわ。日本人だからこういう空気読み得意なんだよなー」
――Gの特性、その三。
「一匹いたら百匹いると思え 、ですよねー」
山のような黒光りの嫌悪感しか与えないボディ。
人によってはこの光景だけで失神するだろう。俺も精神的にチビってる。肉体的には【平常運転】の副次効果で出せないので恥を晒すことはないのだけ救いだ。
「へ、へへ……やばきも」
ただでさえ小さくても無理なのに、デカくてキモイ。
倒せるどうこうではなく、単純に倒す気になれないので俺は目を瞑り、全速力で逃亡を図る。
「無理無理無理!!」
もうこの階層嫌なのでマッピングしつつ逃げ惑う。
ヤツらの衛生的に終わってそうな体に触れることなく、俺はなんとか24層への階段を発見して転がり込んだ。
24層のモンスターが何かはすぐに理解できた。
空に数匹、獰猛な巨大鳥が呼んでいる。
「なんだ、空中戦ならいいや。それよかアイツらだ。鳥さーん悪いけど対策会議の場として使わせてもらうよー」
もちろん呼びかけたりすることなく、ぶつくさとあの物量の攻略方法を考え始める。




