0層 うんことうんちの違い、知ってる?それはね、
「ふぅぃ〜極楽極楽」
俺は現世の極楽浄土こと、露天風呂を堪能していた。
東京から京都までバス移動とかいうクソ経路を除けば、旅館は広いわ豪華だわ、露天風呂あるわで最高だ。これでクソみたいな旅館だったら俺は迷わず校長を今日の町で市中引き回しの刑に処していただろう。
遅めに到着したのもあり、男湯の貸切状態を満喫できている。
「にしても、地上でモンスターねぇ」
あの薄黒い霧。
俺が見間違えるはずもない。
親の気体より見た気体だからな。もっと親の気体見ておくべきだったぜ。
しかし、近所に出現するならまだしも、何キロかは知らんけどかなり遠いとこに出てるのは謎だ。
「んー」
状況を聞いていないから何とも言えないが、どうもあそこを縄張りにしてるっぽかったし、そこら辺よく分からん。
俺が本気で天才的頭脳で考えれば、当然答えは導き出せるのだが、まあね。今は温泉だし頭使いたくない。
それに分かったからってどうこうするつもりもないし、考えるだけ無駄だ。
「――くそ、くそ! なんなんだあの人の皮を被った化け物は!」
「んぁ?」
俺が一人癒されていると、空からうんこのゆるキャラみたいなのが落下したきた。手足が棒で、顔もうんこの中に目らしきものが二つ、口が線で書かれている。
「うわ、風呂場にうんこ投げたやつ誰だよ。きったね」
「む、若い人間! 糧!」
うんこが勢いよく飛んできた。
避けようともしたが、興味本位で直撃されてみた。
顔面にべちゃり。
風呂にいるのでそのまま洗おう。
「くさっ……くはないな。変なうんこ」
「ふんっ、そんな排泄物と一緒にするな。この身体を貰い受ける私こそが、大地の化身!」
うんこが肌に染み渡った。
顔面の気持ち悪さと、首から下のお風呂の快適さでバランスが良い。
「さぁ、これであの耳の長い化け物を……!」
「よし、顔洗うか」
「な!? 馬鹿な! なぜ乗っ取れない!」
「知らんて。てかどっから喋ってんだよキショいなー」
シャワーで顔を洗い、うんこを洗い流した。
「くそ、こんな間抜けな終わり方をしてなるものか!」
流されかけたうんこは、龍の姿となって攻撃してきた。トラックくらいの大きさのそいつに対して、転移で潜り込み、顎を蹴り上げた。ビチャッとした感触に顔を歪めつつトドメを――。
「ふっ!」
一瞬でうんこが凍結、砕け散った。
「これで最後か。はあ、数の暴力は大変で……あ、八百枝南……」
「き――」
数時間ぶりの顔。
エルフコスプレ痴女が空から降ってうんこ龍を倒したようだった。
問題は一点。
「きゃあああ!! 男湯に痴女が出たああああ!!」
「な、な、な!?」
困惑しているようだが、俺はすっぽんぽんのポンポンだ。咄嗟に我が頼りないムスッコは隠したが、俺より強いやつの動体視力だ。見られたと思っていいだろう。
男湯と女湯を隔てているであろう竹の柵が揺れた。
気のせい……ではないな。今気づいたが、人の気配を感じる。まあいいや。
「うぅ……もうお婿いけない。こうなったら殺す! てなわけで物理が無理なら社会的に死ねい! 誰か! 俺の健全な男子高校生のでぃーてぃーが! 痴女に食われちゃうわー!」
「何を言っているんだ!」
うるさい。
人の地雷を踏み抜いてタダで済むと思うなよへんちくりんな耳つけやがって。
男子にならセクハラしていい時代なんてとうの昔に終わってんだよ。
局部を抑えながら睨んでいると、竹の柵が大きく揺れ――倒れるのではなく、粉砕した。
「み、ミナミっち! 助けに来たよ! 別に覗こうとかしてないけど! 声が聞こえたんだ! 覗きとかしてないよ!」
「悪い八百枝、押さえつけようとしたんだけど近接メインでやってる兎渡香には勝てなかった。先生呼んでくる」
「あの時の氷の人じゃないですか。なんだかややこしいことになってそうですねっ♪」
俺と同じタイミングで帰ったので女湯も貸切状態だったのだろうか。タオルで胴を隠した仲良し三人組が乱入してきた。、
俺は大きく息を吸い込む。
「――痴女三名追加!! たすけて鬼の山本先生!」
俺は生徒指導かつ学年主任のおっかない先生の名前を叫ぶのだった。
「ちなみに竹中先生ですよ、八百枝くん♪」
そうだっけか。
てかセッナァ! がずっと上機嫌なのは何なんだ。あれか、女の子の日にも逆バージョンがある的な。
「とにかく覚えてやがれ! ……いや、エルフコスプレショタコン痴女は見たモン忘れやがれぃ!」
俺は逃げるように転移で自室へ逃げ帰る。
着替えは置いてきたが、備え付けの着物みたいなのがあるのでそれを着る。
「……ダンジョンに潜る理由が増えたな」
部屋の冷蔵庫にあるコーヒー牛乳の蓋をキュポンッと開け、記憶を消す方法も探さないとと思い馳せながら一気飲み。
そして、ベッドに寝転がってスキルを確認。
……やはり増えていた。あのうんこ、もとい土が顔に染み込んだ際に何かはハマった感覚があったのである。
棚ぼたで手に入ったっぽい新たなスキルを確認しつつ、俺は修学旅行後のダンジョン探索計画を練るのだった。




