0層 あ、修学旅行今日やんけ
ダンジョンあがりアンド風呂上がりのキュアポーションを嗜み、学校へ向かう。道中何やら制服じゃないやつらがチラホラ居た。
休み明けだからって気が緩み過ぎだろ。
「……」
しかし、学校へ近付けば近付くほどに私服の学生、それも同い年の見たことある顔が、何やらいつもの辛気臭い表情ではなく楽しそうな満面の笑顔で気味が悪くなってきた。
並行世界にでも迷い込んだのではないかと思い、意を決して私服の学生に声をかけた。
「なぁなぁ、今日ってなんかあったっけ?」
「ん? ああ、二年は修学旅行出発日で――」
「あっ! スマン、さんきゅ!」
完全に忘れていた。
そういや先週末に着替えとかの荷物を持ってきて先に旅館に送るって作業してたわ。
慌てて人通りの無い道へ飛び込み、転移で一時的に帰宅。制服をポイポイと脱ぎ捨てて私服に着替えて再度転移。
「ふぅ、危ない危ない」
危うく出発前にトイレで無いはずの私服に着替えてくるマジシャン扱いされるところだったぜ。
教室にも行かない手筈だった記憶がうっすらあるので、とりあえず正門入ってすぐの駐車場を見てみる。
――やはり続々と乗り込んでいるようだった。
「ぉざまーす」
クラス名の書かれた紙がバスのフロントガラスに貼られていたので、該当するバスに乗る。
今日はみんな張り切っているようで、いつも朝ギリギリに来る連中も既に座席で会話を楽しんでいる様子だった。
修学旅行のしおりがあるとは思うのだが、お生憎様マイブームはペーパーレス。貰った紙は宿題以外全てゴミ箱直送便。
「えーと……」
「ミナミっち! おはよ! こっちこっち!」
いつもよりふたまわりほど元気ハツラツな…………トットットさん、そう、確か彼女はそんなあだ名だった気がする。ポニテのトットットさんに導かれるがまま、後ろから三番目の進行方向に向かって右側窓際に座った。
前の座席には蛇字丸さん、その隣にセツナァ! が居る。
「蛇字丸さんおはよー。あの弟妹は大丈夫なん?」
「ああ、休みの間に預けれるとこ探してな」
そりゃよかった。あのちびっ子らも蛇字丸の名を受け継ぎし者。是非とも長生きしてその苗字のカッコ良さをアピールしてほしいものである。
どうやら全員揃ったらしく、バスは出発した。
「そういえばどこ行くんだっけ?」
あんまり話を聞いていなかったのでどこ行きかすら分からない。トットットさんに聞くと、何やら吐息が当たっただのなんだのボソボソ言いながらも答えた。
「京都だよ! 今から、バスで半日かけて!」
「着くの夜じゃね?」
「うん、なんかそういう文化があるんだって!」
「入る高校間違えたわ」
「帰りは新幹線だよ?」
「とはいえだろ」
俺だけ今から降りて走った方が速く着きそうだ。
学校の悪しき習慣に悪態をつきながらも、ボーッとレクリエーションを眺める。
――暇だ。
チラッと隣を見ると、楽しそうにビンゴの紙を見つめるトットットさん。
俺は既に全て数字があたってウルトラビンゴしているが、景品がよくわからん服のブランドの商品券なので要らない。無視して……むし?
あー、ダンジョン行きてぇ。あの虫どもを蹴散らして燃やして回りたい。
「ん、そうだ」
こういう時はイメトレだ。
21層は何とかなったが、20層のレアボスみたく鬼強い敵が出た時に圧勝できるように、あらゆる虫型モンスターを想像して全パターン相手に弱点をつくなりできるようにしよう。時間は幸いたんまりある。
目を閉じて30層に居るであろうレアボスを攻略するイメトレを開始した。
――――――
――――
――
「……い、おーい」
「ん?」
「あ、起きた。おはよ! もう着いたよ!」
「このウジ虫が……」
「唐突な罵倒!?」
「あ、もう京都?」
速いな。集中し過ぎたか。一通りの虫を倒すイメージはつけたが、どうにもハエのモンスターが倒せる自身だけつかなかった。あとイメージしたくないGとは頭の中で戦っていない。
伸びをしながらバスを降りて、担任の話す注意事項をフルシカト。班ごとに別れてようやく身体を動かす時が来た。
「ウジ虫呼ばわり……」
「まあまあ、変なことを口にするのはいつものことですよ」
「こいつの口の軽さは異常だからな。気にしたら負けだって」
班行動が開始。
夜の京の町、それぞれのルートで旅館まで行くのが通例らしい。
「?」
女子三人が何やらこちらに非難の目を向けてくるのは置いておいて、その他にもねっとりとした視線が突き刺さった錯覚を覚えた。
……ははーん?
「さてはきたな――」
俺は腕を天高く掲げた。
「――俺の時代が!」




