17層 ウサギとカメなら断然ウサギ派、だってそっちの方が生きてて楽しいから
世間一般の人達がまったりしているであろう日曜日。俺は今日も今日とてダンジョンです。【平常運転】を消し去って攻略サイトにもキリがついたら、ダンジョンで手に入れた大金で資産運用? だかなんだかして不労所得で生きてくんだ!!!
と意気込んで17層に入った。階段を降り切ると、そこは洞窟の小さな空間で、陽の光がすぐ近くにあって浅い洞窟だと察することができた。
そのまま外(ダンジョン内なのに)に出る。明るい、正体不明のの日差しが俺を迎えた。景色は異様なもので、丘がゴールの一本道に、両サイドが海で固められている。一本道は結構な傾斜の上り坂で、丘の入口とも思しき場所以外にもいくつか横に休憩スポットのような場所があった。
そして何より――道には数匹、兎型のモンスターと亀型のモンスターがそれぞれのスピードで走っていた。
「俺でも元ネタ知ってるぞ。ダンジョン作ったヤツは意外とメルヘンなのなー」
試しに道に入ってみるも、どちらも攻撃はしてこない。
かなりの速度で駆け上がる兎に追従していくと、途中、横の海から謎の光線が飛び交う。光線の発生源は目視できないが、その軌道が直線と弧を描くタイプの二種類あってなかなかに鬱陶しい。
「しっかしこのレースの検証は大変だな」
今は兎と同じペースで走っているが、次は亀について行ったり先にゴールしたりと、もしかしたらゲーム的な言い方でミッション報酬だとか実績解除とか、そういう報酬の宝箱が湧いて出るかもしれないし無視はできない。
なにより光線の主も気になる。
「おろ、一休みかいな」
兎が小さな休憩スポットに立ち寄り、そのまま爆睡しだした。俺は一瞬の逡巡の後、兎を膝に乗せて大きな木陰で一緒に寝ることにした。
◇
――腕の中にある何かがもがいているのを感じ取って目が覚める。眠気はないのに寝られる上、寝覚めもいいのでもしかしたら今の方が健康的かもしれない。……よく考えたら寝ようとしないと寝てないし、一週間で数時間寝るかどうかだったわ。ま、クマも無いから健康的ってことで!
「きゅぴーー!!」
「ああ、めんごめんご。寝てる間に絞め殺すところだった」
膝に抱えた兎さん。そいつをどうやらグッと絞めていたらしい。グッと。倒すのは後の検証でやるので、今は兎さんと一緒にゴールするのが目標だ。
道を確認すると、亀がゴールの目の前にいた。正しく目と鼻の先。寝てたのは一時間程度だが、あの亀のペースでよくそこまでいけたなといった距離移動していた。寝てる間だけ爆速になる仕様とかあるのだろうか。
「…………」
必死に追いつこうと駆け出す兎を見送り、俺はちょうぜつ頭を抱えた。俺はそれなりの負けず嫌いだ。数秒もせず亀はゴールするだろうさ。兎と一緒にゴールしようとも思うのだが――やめた!
寝た上で追い越したら実績解除説!
という建前でかけっこの禁じ手――転移を発動した。亀よりも一足先に登頂した。亀のひと足が小さいので正確には五、六歩だが。
「ミーの勝ちデース!」
ファンファーレが鳴ることはなかったが、代わりに大量の光線が祝福するかのように一斉に飛来した。いっそう太くなっていることからも発生源が近付いてきているのがわかった。
「ペナルティモンスター的なあれか…………は?」
水の中から出てきたのは、ウサミミをつけた二足歩行の亀だった。甲羅の上に十個ほど砲台が備えつけられている。しかも過去イチでかい。
「はにゃぁ? 隠しエネミーぽよ?」
思わず内なるぶりっ子も炙りブリになったところで、武器を構える。ブリは構えない。考えることは後、まずは目の前のカタパ〇トタートルを倒さないといけない。いつバーンダメージが飛んでくるかわかったもんじゃない。
光線の発射と同時に俺は走った。
接近するにつれ光線の包囲網は密度を増し、避けきれないところで転移した。もちろん甲羅の上だ。立っているとはいえどデカいので、甲羅にも横になれる程度の厚さはある。甲羅に癒着した砲台は、肉の塊が纏わりつく感じでひっついていたのでかなりキモイ。記念に写真を撮って…………SNSなんてやってないのを思い出してクラスラ〇ンに送信した。これが承認欲求というやつだろうか。
「まあいいや。剥ーがそっと」
接着方法は肉なので枕から市販の肉切り包丁を取り出した。俺を見失っている巨大光線亀は周囲をのんびり見渡していた。そこにザクッと刃を入れてみるも反応は無い。神経は繋がっていないようだった。
取り外して地面にポイと直立するように蹴って落とした。可動域を広げていた球体も落ちて、なんだか既視感のあるオブジェが出来上がった。
「ネオアームスト〇ングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねぇか。完成度たけーなオイ」
どう足掻いても卑猥なシンボルを計十個、二個は倒れてしまったなり損ないだ。亀はかなり鈍臭いようで、まだ呑気に見失った俺を探していた。
「さて、巨大生物と言えばあれよな。一寸法師作戦! いざ! 体内ツアーへレッツラフォー!!!」
亀の正面、その頭上へ転移して落下を開始。口の隙間が見えたタイミングでそこへ転移した。よく考えたら転移方法は座標で飛ぶタイプなので直で入れたな。臭い口を通ったのに……。
「あっ」
そして体内は案の定空洞。どいつもこいつもハリボテモンスターしかいないな。その後特に苦戦することなく体内で暴れ散らかして無事撃破。当然オブジェも消えていた。
「余裕とはいえ、転移なきゃ普通に死んでたな」
そもそも転移がなければあれが出てくることも無かっただろうけど。とっとと検証に――と戻ろうとしたところ、頭上から巨大な宝箱が落ちてきた。




