潜入
「ああいう約束はしない方がいいですよ。」
ザーガさんの先導に着いて行っている途中でサリヤが話しかけてきた。
「約束って、ランシュウさんとの?」
「そうです。その心意気は立派ですが出来ないことを約束すると、破ってしまった時に相手は更に落ち込んでしまいますから。」
「でも、俺もインフィさんを救いたいんです。」
「それは理解できますが、どうやったら彼の頭から触手を取り除けるか分からないんです。それに彼をうまく無力化出来るかどうかも分かりません。私かあなたの目の前に彼が来ることを祈りなさい。」
「はい。」
「あそこです。」
ザーガさんが茂みの中で止まった。顔を出すと地下に続いていそうな洞窟が見える。
「中にオークの匂いが続いています。恐らく外には出ていないでしょう。」
「それでも油断は出来ません。彼らは転送を使うのですから。」
「そうですね。時間があれば私が斥候をしてくるのですが。」
「時間をかけると転送で奇襲を仕掛けられる可能性があります。全員で入って制圧しましょう。オークと対峙するまでは静かに行きましょう。お互いに援護しあう様に動いていきましょう。単独ではオーク達と戦わないようにしてください。」
「「「はっ!」」」
「貴方は私から離れないようにしてください。」
「分かりました。」
それぞれの戦略を確認し中に入る。
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「・・・どこまで続くんだろう。」
洞窟の長さに呟いてしまう。通路は広く、巨漢のオークでも楽々と通れそうだ。しかしずっと一本道で警備のオークがいるかと身構えたが、誰にも会わずかなり奥まで入ることが出来た。
「止まってください。」
曲がり角に差し掛かった時、先導していたザーガさんが歩みを止めた。角の先を確認して、こちらに向き直った。
「この先が広場になっており、オークがいます。こちらには全く気が付いていないようで、全員がこちらとは反対側を見ています。かなりの数のオークがいますが全く音を出していないのが少し不気味ですが。」
「奇襲が仕掛けられそうですね。」
サリヤの提案にザーガさんが頷く。
「では私の魔法で仕掛けますので、」
「ああああああ!!!」
サリヤが仕掛ける流れを言おうとした時、インフィさんの叫び声が響いた。
「インフィさん!?」
思わず角から少し顔を出し、中を覗いてしまう。
「何故お前は抗うことが出来るんだ?」
「はっ。そりゃあ俺がそこら辺のオークどもと違って強いからだろうが!」
「強さではデメテル様に抗うことは出来ない。」
姿は見えないが、誰かがインフィさんと話をしているようだ。
「デメテル様は我らの祖先。いわば生みの親だ。我らの中にはデメテル様の血が流れている。デメテル様はその血を利用して同胞を操っている。お前も例外では無いはずだが。」
「自分の子供にいう事を聞かせるために血で無理矢理操るなんて、デメテルってのは親失格だなぁ!」
「デメテル様のお考えは目の前の事しか考えられない同胞には受け入れられないものなのだ。」
「それで無理矢理操るってか!お前も操る側みたいな言い方してるが、デメテルに操られてるんじゃねえかぁ!?」
「デメテル様は我ら側近に全てを話して下さった。我らは同胞とは違うのだ。デメテル様の悲願が達成されれば同胞達も歓喜に湧き上がるだろう。」
「それでその道中でやることが子供を使った自爆戦術ってか!同胞の今後を全く気にしてないじゃねえか!」
「仕方がないのだ。オフルス国に奇襲を仕掛け、あの人間をさらうにはあの方法しか無いのだ。」
「・・・俺?」
オフルス国には人間は俺しかいないはず。ってことはオークの狙いはオフルス国じゃなくて俺って事?
「あいつに何の用だ。」
「お前が知る必要はない。デメテル様は一刻も早くあの人間を手元に連れてくるように望まれている。」
「で、俺をその場に送ったってか。とんだ采配だな!」
「ああ、失敗だった。お前があの人間と知り合いで手を緩めてしまうとはな。お前を始末し、再度奇襲を仕掛けるとしよう。」
「マスター!」
「行きましょうか。」
サリヤが角から出て、左手を前に出した。
《ダースウィップ》
手から黒い鞭が放たれオーク達を引き裂いていく!そしてそれを合図に全員で中に乗り込む!




