第06話 MMOあるある
学校に入ってしまえばこっちのモノ!
てことで、翌日からさっそくダンジョン探索を再開することに。
「前回の『蟻の巣殺り作戦』で、俺も明石さんもレベルが11まで上昇!
無事、ジョブ装備枠の三つ目も解禁されましたので、本日はイッキに10層まで行きたいと思います!」
「「頑張ります!」」
「いや、中務さんは普通にお仕事がありますし、カズラさんは今日こそ見学だけですからね?」
……二人並んでショボーン顔の美人従姉妹。
「クッ、捨て犬みたいな顔をした中務さんが愛らしすぎて抱きしめてしまいたい……っ!」
「柏木さん! どうしてそこで思いとどまるのですか!
さぁ! 思う存分抱きしめて! むしろこのまま抱いてください!」
「えっと、どうして自然な感じでカズはのけものにされてるのかな? かな?」
前回クリアした7層の続き――8層から探索を続ける俺と明石さん。
「ちゃんとカズのことも見えてるよね!?」
・8層
【洞窟魚人 レベル10 戦闘力:80】
【洞窟海老人 レベル10 戦闘力:70】
【洞窟大湖蛇 レベル?? 戦闘力:???】
「お兄ちゃん……すごく……大きい(地底湖)です」
「いかがわしい言い方するの止めて?」
もちろん俺のも『ビッグ(当社比)』なんだけどな!
「フッ、地上に出てきた魚人なんてまな板の上の鯉みたいなものね。
……ところで魚人は地上ではエラ呼吸なのかしら? それとも肺呼吸なのかしら?」
「それ、本当に興味ある?」
「あははは! エビ男! 頭も体も半透明!
……何アレ気持ち悪い」
「大笑いからのスンッ!
……カズラさんは心を病んでるのかな?」
まぁ魚人と比べてもエビ男は……ねぇ?
洞窟の生き物というか深海生物というか。
その半透明ボディとか、『脱皮したてか?』って感じのグニョグニョとした頭と鋏が……。
ちなみにサーパントの能力が【???】なのは存在してることは地図にあるけど自分の目で視てないから。
ほら、真っ暗な夜の海とか地底湖って今にも足を引っ張り込まれそうで怖いじゃん?
だから極力近くに寄らない道を通りながら9層に向かったんだよ。
「ていうかドロップが【魚の白身】と【大大大海老】……」
「それってドロップ率の低い超高級食材なんだよ?
……カズは食べようとは思わないけど」
・9層
【岩喰い大蜥蜴 レベル12 戦闘力:130】
「ここもゴーレム階みたいに出てくる魔物は一種類だけなんだ?」
「そうだよ。さすがに岩ほどではないけど外皮も固い――いや、弾力性があるぶん攻撃が通り辛くて厄介かも? 身のこなしだってそれなりに速いし。
カズたちがこれと戦ってた時はそれなりに苦戦した魔物……のハズなんだけどね?」
カズラさんの言うように、他の探索者は5~6人掛かりで全力で戦ってるみたいだけど……。
「武器の性能さえ良ければただの地味なトカゲでしかないわね」
そこまでの抵抗も無く首を落としていく明石さん。
9層のゲートをくぐり、いよいよ10層へ!
いよいよ初めてのダンジョンボス討伐!
俺たちの戦いはこれからだっ!!
……なんて思ってたんだけど、ゲートの設置された大きな広場には100人程度の人間。
「思った以上に混んる……」
「というか、何か言い争ってる雰囲気ね」
「おっ? もしかして揉め事かな? かな?」
「かりに揉め事だったとして、どうしてそんなに嬉しそうなんですか……」
向こうでも冒険者同士の喧嘩なんて生活の一コマみたいなモノだったしね?
「場所を考えればボスの湧き待ちをしてるギルド同士の衝突って感じ?」
「階層主なんて一度倒しちゃえばトレジャーも出ないし、周回する意味なんて無いはずだけど」
俺のMMOあるあるに小首を傾げるカズラさん。
てか揉めてる連中の話をまとめると、
「ここはひと月以上前から俺達が先に予約を入れてんだよ!
それがあとから来たお前らに先に行かせろだぁ?
そんな理不尽な話が通ると思ってやがんのか? おぉん!?」
「予約も何も、もう一時間近く誰も入っていかねぇじゃねぇか!
行きたいならとっとと行っちまいやがれ!
いつまでもちんたらやってんじゃねぇぞ? あぁん!?」
「なんだてめぇ? どこのモンだごらぁっ!
お前ら、この揃いの外套を見てからそんな口聞いてんだろうな?
なんなら力付くで通ってみるか? おぉん!?」
「そんな短けぇ首巻きのことなんて知る……知る……えっと、それって桜花爛漫の……」
って感じで、噛みついてた連中がシュンとなる。
「ぶふっ……何あの小物感丸出しの三下」
「ふふっ……あまりにも役柄が似合いすぎていて、どこかの小劇場で喜劇を見ているようね」
思わず笑いだしてしまう俺と明石さん。
そんな俺達に気付いた『三下下造(仮)』が馬鹿にされたとでも思ったのか、
「あぁん!? てめぇら今何言ったゴラっ!!
てか何を笑ってやがんだゴラっ!!
うちの看板舐めてんじゃねぇぞゴラっ!!」
まるでエリマキトカゲが走るときのような歩き方でこちらにズカズカと近寄ってくる。
「柏木くん、あの生き物は顔芸をしながらおかしなイントネーションで喚き散らす人間……という認識で良いのよね?」
「もしかしたら日本語に聞こえる奇声を上げる新種の蜥蜴人間かもしれないよ?」
「余裕ぶってイチャイチャしてんじぇねぇぞこのボンクラぁぁぁぁぁっ!!」
そう叫んだかと思えば、そのまま助走を付けて途中でジャンプ!
……えっ? どうしてあいつは飛び上がったの?
そんなちんたらした速度で浮かんでたら、こっちが反撃に出た時避けられないじゃん?
もしかして本当に人型をした魔物なの?
落下地点でその顔に刺さるように剣を構える俺――の少し手前で、明石さんのハイキックで迎撃されたチンピラ。
『ドーーーーーン!!』という大きな打撃音と、小さな「エヴッ!?」という悲鳴を残して10mほど向こうまで飛ばされ、そのまま二度、三度とバウンドする。
「いや、さすがにやりすぎじゃね?」
「むしろ私は彼の命の恩人だと思うのだけれど?」
……確かに、無意識に『プスッ』てする体勢になってたけどさ。




