第06話 いけませんカズラさん!
※前のお話の中盤から後半にかけて修正いたしましたm(_ _)m
いきなりのチンピラの奇行により静まり返ってしまったゲート広場。
もし静まり返っているのが結婚式場なら『冗談冗談』って言いながらみんなで万歳三唱すればいいだけなんだけど、ちょっと空気が重い。
「でもこんなこと『ミナミ(センニチダンジョン)』では日常茶飯事の光景だし問題は無いな」
「問題無いハズが無ぇだろうがぁ!!
お、お前、よくもうちの人間をヤッてくれたな!?」
いや、まだ死んでない死んでない。……たぶん。
「てかいきなり突っ掛かってきたのはそいつだろうが?
ああ、そういえばそいつ、『ここを通りたければこの場にいる全員を倒してから行け』とか言ってたよな?」
「それを言ったのはあいつらだけだからな!? 俺達は関係ないからな!?」
俺の一言に慌てて訂正をいれるスライム男と揉めていたオッサン。
「……でも、あなたたちもまとめて倒せばボスの順番待ちの必要が無くなるわよね?」
「そっちの姉ちゃんはならず者か何かか!?」
ていうか、そっちの姉ちゃんで思い出したけど、揉め事を見つけてあれだけはしゃいでたカズラさんがさっきから妙に静かなんだけど。
「さっきから黙って聞いてりゃふざけたことばっかり抜かしやがって……。
何を勘違いしてるか分からねぇが、てめぇが倒したシンジはうちでも上がってきたばっかりの使い走りっ!! こっちにゃ30人の鉄級探索者がいるんだぞ!?」
「で?」
「……で?
いや、だからここにいる30人の人間が見えねぇのかと言ってるんだ!
ははっ、今ならそこに身ぐるみ置いて土下座すれば半殺しで済ませてやるよ!」
「まったく、さっきから話が長いわね。
どうして馬鹿というのは言いたいことの要点をまとめることも出来ないのかしら?
……あなたたちは殺害予告じみた言葉で私と彼に喧嘩を売っている、そういうことでいいのね?」
「チッ、そういう意味じゃねぇよ!
お前がやったことの責任を取れって言ってんだよっ!!」
「責任? あなた、責任という言葉の意味をちゃんと分かって使っているのかしら?」
「てめぇ……お前がうちの! 桜花爛漫の人間をいきなり殴りつけた!
それはそっちにいる連中もハッキリと見てるんだよ!
ハハッ、それを管理局に届け出りゃてめぇらがどうなるかくらい分かるよな?」
「えっ? そっちのおっちゃんらもアレの仲間だったの?」
「おっちゃんじゃねぇよ! 俺はまだ23歳だよ!
……あいつらと仲間のはずなんてねぇだろうが!
でも、連中にさからったらいろいろと……な。
お前だってそれくらいのことはわかんだろうが!」
「いや、わからんけど。
ていうか、桜花爛漫ってどっかで聞いた……って、確かカズラさんが所属してたギルドがそんな名前だっけ?」
「何を馴れ馴れしい呼び方してんだガキっ!!
そうだ、俺達桜花爛漫の後ろには鷹司葛金級探索者、そして鷹司家が付いてるんだよっ!!
いくら世間知らずのガキでもここまで言やぁわかんだろ!
で、それを聞いてどう落とし前つけてくれるんだお前らは?
ここまで言わせておいて一本や二本の金でシャンシャンに出来ると思うんじゃねぇぞ!?」
「うわぁ……最低だな鷹司家」
「そうね、もちろん私は最初から気づいていたのだけれど」
「おい、お前ら!! 冗談でも侯爵家の陰口なんて叩いたら後でどんな目に遭うか」
「いや、本人の目の前で苦情を言うのは陰口じゃなくて諫言だし?」
「そうね、いい歳をして年端もいかぬ少年をその毒牙にかけようとしているのは本当のことだものね?」
「いや、だからあいつらは桜花爛漫なんだよっ!!
余計なことを言えば、あることないこと鷹司葛様御本人の耳にも入るんだって分かれ……って、お前の後ろの鎧の人の体から赤黒い、むしろ赤グロい何か見えちゃいけない何かが湧き出してるんだけど!?」
あっ、ヤバい。
いけませんカズラさん!
あー、いけませんいけませんカズラさん!
剣を、その剣を抜くのだけはいけません!
あー、いけません死んでしまいます!
それを振り回せばあのおっちゃんも含めて俺たち以外の全員が死んでしまいます!
素手で! 今回は素手で! それも一人ワンパンで!
それなら死人が出ても事故で済ませられるかもしれませんので!
「お、俺、人間が足を掴まれて『ビターン! ビターン!』されるとかマンガの世界だけだと思ってたんだけど……」
「あら、あの程度なら私も彼も出来るわよ? その体で体験してみる?」
「勘弁してください普通に死んでしまいます」
鬼神の手により、1分とかからず殲滅された桜花爛漫の30人あまり。
「ぐふっ……いてぇ……いてぇよ……」
「腕っ……私の腕ってまだ付いてる……?」
「お母さんお母さんお母さんお母さん」
おっちゃんも含めてその場にいた他の70人弱が完全にドン引き、及び腰でこちらをみつめる。
「お、お前……ら、これだけ好き勝手なことをやっておいて……このままで済むと思ってねぇ……だろうな?」
「あら、むしろあなたたちがこの程度で済むとは思ってないわよね?」
そこで初めて兜を脱いで顔を見せるカズラさん。
「……それで、あなたたちの後ろには誰が付いているんだったかしら?」
「なっ、はっ、えっ……? カカカズ……たかっ……!?」
「あなたみたいな人間が呼べるほど私の名前は安くは無いのよ?」
ニコニコと微笑みながら胸ぐらを掴み、そのまま持ち上げる。
「あなたたちはここで何をしていたの?
それはあなたたちが勝手にしていたことなのかしら?
それとも上からの命令?」
「ガッ……うっ……も、申し訳ありませ……」
「誰も謝罪しろなんて言っていないでしょう?
それともこの私の質問に答えられないとでも言うのかしら?」
「カズラさんカズラさん、首、そいつの首絞まってますから」
返り血を浴び、いつもとはまったく違う雰囲気のカズラさんが男をそのまま投げ捨てる。
何なの? 明石さんといいこの人といい、美人は男を(持ち上げて)捨てるのがあたりまえなの?
「あなたたち。
ギルドの、そして私の、言うに事欠いて鷹司の名前を出してした行いの責任――ちゃんと取れるのでしょうね?」
美しい――まるで破壊神のような笑顔で転がっている人間を見つめる彼女のその姿にそっと目を逸らすその場の全員。
「ヤベェ……カズラさんヤベェ……ちょっとだけ惚れちゃいそう」
「あなたのその性癖はさすがにおかしすぎではないかしら?
というか、どうして前かがみになっているのかしら?」




