第07話 ボケなのかマジなのか反応に困る『身体力測定』。
階層ボスの攻略動画上映、その後の授賞式も終わり。
「こちらの要件が済めば動き出すかと思ったんですけど。
話しかけて来るどころか近づいても来ませんね?」
「さすがに管理局の施設で騒ぎを起こすような人間は多くありませんから」
「上位ギルドの人間は貴族と繋がりのある人間がほとんどだからね?
それなりに品行方正だよ」
あいかわらず騒がしい連中とは違い。
こちらに視線を向けてはいるが、壁の花に徹しているのは大手ギルドから俺たちの情報収集や集められた学生のリクルートに来ているであろう面々。
もちろん俺のところに来られても、交渉事は全てショウコさんとアヤカさんに丸投げしてるから何も答えることは無いんだけどさ。
「てことで、腹もへってきましたし肉でも食って帰りますか」
「夕霧さん、確かに式は終わりましたがこれから二次会が始まると言いますか」
「むしろここからが今回の懇談会の本番だよ?」
えっ? そうなの!?
「君はどうしてそんな驚いた顔をしてるのさ……」
「入り口で渡された進行表に書いてあったと思うのだけれど」
逆に、どうしてそんなモノを俺が読んでると思ったのか?
ということで、ここから半時間ほどの休憩を挟み。
「希望者を募った『倒亡面人』と『真・対力速帝』が行われます。
もちろんどちらも自由参加となってはいますが……今回表彰された夕霧さんたちにはどちらかへ参加の要請が来ております」
「何それめんどくさい……」
ていうか、トーナメントも身体力測定もこれと言って変なところはなさそうなのに、ショウコさんの発音が微妙におかしいのは気のせいだろうか?
「とりあえず面倒が無さそうなのは体力測定の方?」
「あら。私はあなたのことを嫌な目で見ていた、愚かな人間を叩きのめしておく必要があるからトーナメントに参加したいのだけれど?」
「さすがに身内から人殺しを出すのは……」
「……あなたは私のことを一体何だと思っているのかしら?」
何ってあなた、入学式で仁王院をお星さまにするところだったっていう前科があるよね?
「もう! 何なのよそのジトッとした目は!
大丈夫よ! 参加者は全員『もしも不幸なことがあってもそれは自己責任です』という念書を書かされるのだから」
このバーサーカー、どうやら手加減するつもりは無いらしい。
「まぁ何にしても。
他の男が髪の毛一本でもシズカさんの体に触れることを許すつもりは無いからトーナメントは却下で。
もちろんアテナもショウコさんもだからね?」
「ふふっ、それなら仕方ないわね」
「かしこまりました」
「……君ってたまにそういうこと言うよね」
ニコニコ笑顔のアテナとショウコさん、顔を赤くするアテナ。
そして、
「どうしてお兄ちゃんはそこでカズだけのけものにしたのかな!?」
違う意味で顔が赤くなってるカズラさん。
「いや、そもそも学生の大会? に、カズラさんは参加出来ないですし……。
なおショウコさんはお姫様だから全てにおいて優先されるものとする」
「そういう区別みたいなの、カズは良くないと思うの!!」
——ということで。
俺たちが参加することになったのは体力測定の方。
式典会場から職員さんに先導されて、やたら人相の悪い、殺気立った連中をぞろぞろと引き連れながら廊下を移動。
壁には垂直跳びの測定メモリ。
床には反復横跳び用のライン。
上体起こしに使うマットに、踏み台昇降用の台。
体重計や身長計、握力計といった測定器具。
……ここまでは、ごく普通の体育館だったんだけどね?
「アテナ。あの『聖帝○字陵のてっぺんに置いてありそうな石』は一体何だ?」
先程までの文明的な道具からうって代わり。
体育館のど真ん中に鎮座するのは『ミニピラミッド』のような物体。
「聖帝○字陵っていったい何なのさ……。
あれは『不動如山』だね」
「ちょっと何言ってるのか分からない」
ていうか、名前を聞いても何に使うものなのか一切の情報が読み取れねぇ。
「夕霧さん。あれは体全体を使って押し、どれだけの距離を動かせるか測る装置です」
「なるほど。
……それで、一体それで何を測るんです?」
「……たぶん押す力ですかね?」
ピラミッドの形をした意味っ!!
「えっと。じゃああっちの線路に乗ってる……電車の先頭車両みたいなやつは?」
俺が次に目を向けたのは、床に敷かれた短いレール。
その上に鎮座するやたらとゴツい鉄塊。
「あれは『動升』ですね」
ネーミングセンスっ!!
もしかしてここのある道具って全部カズラさんが……。
「……お兄ちゃんはカズに何か言いたいことでも?」
「……別に。それで、あれってどうやって使うんですか?」
「んー、見たまんま?
殴るか蹴るかして、動かした距離で打撃力を測る装置だよ?」
あんな鉄の塊を見て殴る蹴るしようとは思わねぇ——ああ、表面の部分は柔らかい素材で出来てるんだ。
ていうかよく見ると、レールにメモリも刻まれてるし。
なるほど。動いたマス目を調べるから動升……。
「じゃああの、デカい砂時計みたいなのも何かを測る器具なんです?」
3m以上はある、真ん中がすぼまった、砂の入った巨大なガラス管。
「写真で見たことがわるわ。
あれは『室粉下』ね」
大噴火……いや、きっとわけのわからない当て字になってるんだろうけどさ。
「下からおもいきり殴りつけ、砂を全部上に押し上げるまでの時間を競う道具みたいよ」
「もしかしてニュートンに真っ向から喧嘩売ってる?」
近くで見ると、下部が太鼓みたいな膜になってた。
「クリアするには力だけではなく、砂が落ちてくるまでに再度殴りつける速度も必要です」
トントンとしたから小突くショウコさん。
その姿、ライブ会場でノリノリになっって騒ぐ観客の如く。
うん、ちょっと俺には無理かな?
「ていうかお兄ちゃん! あれ! あれからやろうよ!」
何やら騒がしい、カズラさんに勧められたのは体育道具入れ……ではないか。
扉の隣、壁に設置された大きなモニター。
そこに映るのは無数の穴が空いた壁。
大掛かりな装置であることはなんとなくわかるけど、あいかわらず何をする装置なのかはまったく不明な小部屋の名前は『球嵐乱舞』。
説明書きだろうプレートを読むと——
「なるほど。壁の穴から飛んでくる球を小盾で弾き返し続けるのか」
ていうか、小盾。
「見た目が昔ばなしに出てくる鍋の木蓋にしか見えないんですけど」
「ふふっ、剣豪と言えば鍋蓋かお箸で何でも受け止めれなきゃ駄目でしょ?」
そんなシーン『ド○フのコント』でしか見たことねぇよ!




