第01話 決起集会と言うか……。
迷宮科に入学したばかりの1年生が『20層の階層主』を討伐したというのはかなりのインパクトがあったらしく。
俺達の通っている桜凛学園だけではなく、迷宮管理局の本部からも式典参加要請がありそうな俺とシズカさん。
それこそ普通の学生さん、探索者なら「管理局から直々に目を掛けられた!」なんて大喜びしそうな内容なんだけど、『目を掛けられた』わけではなく『目を付けられた』だけだからねぇ?
もちろん、それこそこれまで目を掛けてもらってるショウコさんやアヤカさんが勤めている組織だから無視をするなんてことも出来ないし、まともな政府の省庁に喧嘩を売れるほども『主人公体質』でも無い俺。
「てことで担任。
俺は知り合って間もない、ゆっくりと愛を育んでいる途中の恋人が働いてる職場からのお誘いに乗ることになりましたので。
今回は御縁がなかったってことで帰って?」
「これまで、あれほど尽くしてきた先生に!
柏木くんはどうしてそんな酷いことを言うのですか!?」
「そもそもあなたとは『お風呂に入ったら顔を思い出せない』程度の面識しか無いと思うのだけれど?」
「明石さん、さすがに顔くらいは覚えて欲しいんだけど……。
といいますかこの空間、柏木くん以外の顔面偏差値が高すぎじゃないかしら?
先生だってこれでも、地元じゃエンジェル、むしろアンジェラとおりこしてアン○ラスと呼ばれてたくらいモテモテだったんだよ?」
「えっと、担任は俺にお願いに来てる立場なんだよね?
それなのに、どうしてそんな暴言を吐いたのかな?」
そんなこと言われるまでもなく、常々本人も思ってるんだよ!
あと、アンギ○スは怪獣だろ!!
……担任、『苛められっ子だった疑惑』が出てきたんだけど?
「そもそも、アレに出ることに意味を感じないんですよね。
前回も脂ぎった、偉そうな態度の知らないオジサンから紙切れ一枚貰うだけでしたし」
「柏木くん、あれはオジサンだけど校長先生だから!
確かに、偉そうというかちょっと勘違いしたところはあるけれども!
でも、もしも賞状を渡す相手が『Tシャツに短パン姿』だったら、それはそれで嫌でしょ?」
せめて何らかの副賞!
たとえば『校内フリーハグ券』とか付けて――貰ったところで、それを使えるような根性は無いんだけどさ。
一番使いたいハイカラさんは婚約者持ちだし……。
――それから数日後。
「ということで、柏木さんと明石さんの表彰式――というか、『20層突破おめでとうパーティ』が開催されることとなりました」
「……えっと、迷宮管理局って政府内の部局なんですよね?」
そこが個人相手にパーティとか開いても大丈夫……これといって問題は無いとの事。
「といいますか、その内容よりも開催場所がですね」
まぁ管理局の本部は東京だもんね?
そこが開くパーティなんだから東京でやるに決まって――言うほど決まってるか?
まぁ交通費だけじゃなくて宿泊費まで出してくれる、それもスゥイートルームを取ってくれるってことだし……いや、繰り返すけど迷宮管理局って政府の組織なんだよね?
もちろんパーティなんていう、それなりに人を集める会合をまともに開こうと思えば時間は掛かるわけで、その開催は8月最初の土曜日。
「……いや、そんなに人がいっぱい集まる感じなんです?」
「そうですね、どうせならこれを機会に全国の迷宮科がある学校の有力株と面識を持っておこうということになったみたいでして。
葛以降、目だった新人が居なかったこの業界の若者を集めて、決起集会のようなモノを開いて発破をかけるつもりみたいなんですよ」
どうやらあちらこちらから将来有望な学生、そして教師をリストアップした結果『二千人規模』のパーティになるだろうとのこと。
……いや、一応は学生だけど相手は探索者なんて言う武力集団だよ?
それをその人数集めるとか、それもう決起集会どころか『一揆』集会だろ。
さらに後日聞いた話。
俺にとってはものすごくどうでもいい事なのだが、その話は桜凛学園にも伝わったみたいで。
「あの校長のことですし、もしかしたら『うちの学校とは関係のない、そのような会合に呼び出されるなど馬鹿にしてるのか!』とか怒鳴りながら、キレ散らかしてハゲ散らかしてました?」
「柏木くんはうちの校長先生を何だと思ってるのよ……。
ちょっとだけ――多大に俗物ではあるけど、そこまでおかしな人間は教師になんてならないわよ?」
……せやろか?
俺の通ってた中学なんて、体育館で授業中、転がってたバレーボールに足が当たっただけの生徒を殴る体育教師とか、『フィラメント(?)』の実物を見せるため、教室内の蛍光灯をハズして叩き割る技術教師とか、さすがにヤバすぎて内容は口に出せないようなことをしてる英語教師とか居たぞ?
「今回も前回と同じ規模で、知り合いを集めて生徒自慢、学校自慢をするだけのつもりだったみたいなんだけどね?
それが今回みたいな大きなお話になって、『やったね! 自慢できる相手がいっぱい出来たよ!』って三日経った今でも大喜びしてるわよ?」
てか、
「……そのくせ私のボーナスは増えなかったんだけどね」
とか言われても、俺のしったこっちゃねぇし。




