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第01話 どうも、タンニン=サン。

 大好きだった『お姉ちゃん』――カズラさんの婚約が発覚。

 「わ、我の方が先にカカカズを好ましく思っておったのに!!」

 と、ダンジョンモールを走り回った挙げ句。

 何を思ったのは全量でスポ○チャ、いい汗をかいていた仁王院。


 「僕……実は女の子……なんだよ?」

 などと、薄い本のような告白をした挙げ句。

 乳首に絆創膏を貼り付けて俺におかしな性癖を植え付けようとした久堂。


 なんだろう。

 事実しか並べていないはずなのに、こうして振り返るとまったく意味がわからない光景なんだけど?


 そんな騒動があった日曜日から少し時間が流れ、季節はもう六月の半ば。

 前の世界ほどではないけど、こちらも地球温暖化の影響ですでにクーラーを入れないと暑苦しくて寝れない季節である!


 もっとも、暑い原因の7割は俺のことを抱き枕にして寝ているシズカさんのせいなんだけどさ。

 ……今はそんな、無防備すぎて逆に性衝動に駆られない彼女のことはどうでもいいとして。


 14層ではゴブリンの集落、19層ではオークの集落。

 まるで無双ゲームのような集団戦闘を繰り返した結果、俺とシズカさんのレベルは『23』まで大きく上昇! その結果――


「さすがは柏木さんですね。

 この映像だけでも、階層主相手に相当な余裕があるのが分かります」


 驚き半分、呆れ半分といった様子でそう口にしたのはここ、センニチダンジョンの支部長である六条さん。


「それにしても……柏木さんと明石さんがダンジョンに入るようになってまだ半年しか経っていないのですよね?

 それなのに、20層の階層主を2人だけで攻略ですか」


 褒めてはくれてるんだけど……それも全部、異世界商店のお陰だからね?

 レアクラスのジョブを5つ揃えれば、それだけで戦闘力が500も上がるわけで。

 それだけでレベルマックス無職……じゃなかったな。

 カズラさんは最初から【女武者】を持ってたし。


「楽勝のように見えるのは、相手との相性が良かったというのも大きいんですけどね?」


 というか、20層の階層主。

 登場したのは、ある意味馴染みの魔物である『四椀灰色熊』。

 俺たちの鎧に使われている素材の『元』になった熊さんだった。

 そのレベルは驚異の二十五で、二十層という浅めの階層にしては異例の戦闘力350っ!


 ……もっとも、ボスの場合はザコ敵とは比べ物にならない耐久力が数値に加味されているみたいなので、その数値ほどの強さでもなかったり。

 というか、ジョブの話が出たので報告をもう一つ!


 なんと! レアクラスのジョブを5つマスターした時点で、最大レベルが50から60まで上昇したのだ!

 まぁレベル60まで上げようと思えば最低でも50層を越えないとまともに経験値が入らないだろうし、しばらくは関係のない話なんだけど。


 もっとも、それを聞いたカズラさんは――


「ふっ、ふふっ、うふふふふ……カズはまだまだ強くなれるっ!!」


 と大喜び。


 成長の止まってしまった能力、そして強化もままならない装備品。

 最前線にいるのに、結構な期間停滞していた彼女が大喜びするのも仕方のないことだろう。


「……といいますか、先程から見慣れない人が物欲しそうな顔でこっちを見てるんですけど?」


「柏木くんはどうして先生のことを知らない女扱いしてるの?

 というか、どうしてただの高校生のあなたが管理局の応接室なんてところでそんなに寛いでるの?」


「どうしても何も。

 知った顔しかいないというか、ここにいるのは全員俺の婚約者さんですし?

 あっ、もちろん担任は違いますよ? 違い! ますよ?」


「違うことをそこまで強調されなくとも分かってるけどね!?

 ……じゃなくてっ!! えっ? 婚約者って何?

 明石さんは……まぁ入学時から仲が良さそうにしてたけど。

 そちらにいらっしゃるのはここの支部長の六条さんよね?

 さすがにそういう冗談はシャレにならない――」


「どうも、タンニン=サン。

 柏木さんの『婚! 約! 者!』である、六条綾香です」


「どうしてカタコト……というかまさかの本当の話なんですか!?

 年齢的にダブルスコアとか完全に犯ざ……いえ、なんでもないです。

 えっと、それじゃあ柏木くんのお隣に座っていらっしゃる」


「邪魔する魔物は一撃殲滅☆

 みんなの『探索者アイドル』カカカズだよっ♪」


「なんですかその痛々し――痛っ!?

 ちょっ、刺さりますから!

 本域で突かれると脇腹に手刀が刺さりますから!!」


 端から見ればイチャイチャしているように見えなくもない俺たちにドン引きする担任。

 ……まぁ『教え子(教えられてはいない)』に三人も四人も婚約者がいればそんな反応にもなるだろう。


「それで、そちらで立っている赤の他人様はどのような御用なのかしら?」


「明石さんにとっても他人じゃなくて担任の先生なんだけどね!?

 先生だって座る場所が無いだけで、好きで立ってるわけじゃないんだよ?

 連絡先のわからない生徒、そして何故か連絡が通じない取次の人!!」


「どうせくだらない内容だと思いましたので着信拒否いたしました」


「どうしてそんな酷いことをするんですか!?」


「だってあなた、放っておけば1日に30回も電話を掛けてくるでしょう?」


「気付いていたのなら出てくださいよ!!」


 そんな担任の言葉に乗っかるように、ちょっと拗ねたような顔になったのは六条さん。


「といいますか、私も柏木さんの連絡先を存じ上げないのですが……」


「今のところ連絡先が現住所しか無いんですよね」


 異世界で連絡手段が無いことに慣れちゃってるから、携帯端末を持つ必要性をまったく感じないんだよね。


「……それで、担任はこんな早朝から何か用事があるんですか?」


「もちろん! ほら! 柏木くんたちって、10層に続いて20層も最年少での階層主撃破をしたらしいじゃない?」


 だから一体何だよ……いや、たぶんまた表彰式をやりたいとかそういう話なんだろうけどさ。


「ていうか、あの式典って10層ごとにやるつもりなんですか?」


「その認識で正しいよお兄ちゃん。

 カズたちも学校に通ってた時は、一年に一度くらいよくわからない理由で表彰されてたもん。

 ほら、ああいうのって生徒を褒めるためではなくて『学校の宣伝』をして寄付を集めるために開くモノじゃない?」


「カカカズさん、そういう身も蓋もない言い方は……」


「何このタンニン、妙に馴れ馴れしいんだけど?」


「鷹司様がそのように自己紹介をされたから、それに合わせただけなのですが!?

 ていうか柏木くんと明石さん!!

 10層到達の時点でとんでもないことなのにそれが20層だよ?

 そんなのこの先、間違いなく塗り替えることの出来ないような歴史的快挙だからね?」


 いくらなんでも、さすがにそれは大げさ過ぎる――こともないか。

 ボス戦は動画でクリア報告をするから、カズラさんもショウコさんも戦って無いけど、レベリングの方は高戦力の2人に手伝って貰っての結果だし。


「……柏木さん。

 タンニンの後出しをするみたいで言い辛いのですが。

 『迷宮管理局うちの本部ほう』でも15歳での20層突破がずいぶんと話題に上がっておりまして。

 こちらでも何らかの式典をと考えているようなのです」


 机をはさみ、上目遣いで俺のことを見つめる六条さん。


「それが少しでもアヤカさんのお役に立てるのでしたら、もちろん参加させていただきますよ?

 といいますかアヤカさん、もっと俺に甘えてくれても良いんですからね?」


「柏木さん……お気遣い、ありがとうございます」


「柏木くん! そこは学校もお願い出来ないかな!?

 ほら、夏のボーナスの査定がもうすぐ締切なの!!」


 隣から「どうしてお兄ちゃんはソレをカズにも言えないのか?」という声が聞こえるけど、カズラさんのことはこれまでにも十分に甘やかしてると思うんだよなぁ。

 ……そのたびにお金を貰ってたけど。

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