都での滞在ーその13-
進行が・・・・
「お姉さま、ヴィタールをご存じなのですか?」
アイシャに向け、不思議そうに訊ねるマリカに、
「王家の関係者だったの?」
姉も判らず、疑問な部分を埋める様に訊ね返すと、
「お城の役人ではなく、王家の家族の為の執事を、私が生れる前よりして頂いていると聞いています」
マリカのその答えに、知っている事を話す様に、
「昔、うちの家族がアーカイド村で農民だった時に、エレオノーラ様が王様に伝えた神託を、最初に伝えに来たのが彼だったの。紳士風の人が良い馬車で田舎の村に突然来たものだから、その日は村中大騒ぎだったわ。その後も、パパがシールズの領主に抜擢されたと聞いたら、村中お祭り騒ぎだったもんね。記憶にも残るはずだわ」
思い出す様に、皆に向け笑いながら、そう話すのだった。それを横で聞いていたヴィタールも、
「王からあの時頼まれた言伝は、私としても内心、相手に伝えていいのか半信半疑でしたから。間違ったことはされぬ、そう思いつつも、悩みましたな。いやいや、今となっては良い思い出ですな」
順調に馬車を操りつつ、笑いながら皆にそう話して来るのだった。で、その後は、皆、我の生まれる前の、農民時代の生活をアイシャに聞き、食生活などは向上しているものの、仲良く助け合う今の状態とあまり変わっていないので、不思議そうにしつつ、
「貴族になられたのですから、そう振る舞われないのですか?」
皆からのその質問に、ない胸を張り、姉上が堂々と、
「村に住んでた時から皆に尊敬されていたパパが、シールズに行く前、私にこう言ったわ。どんな立場になろうとも、パパはパパで、アイシャはアイシャだ、って。そしてそれを実践しているパパが、前の領主より立派だと皆に思ってもらっているのなら、きっと貴族らしくというのは、今のままで良いという事だとおもうわ」
笑顔でそう答えるのだった。それを聞いた我も、最高の家族の元に転生してこれたことに喜びつつ、
「姉上、その通りです。決して間違ってはおりません。周りの人の為に、そう考えてる事こそが、貴族の条件です。世の威張れる立場などという考えの方が、間違っているのです。見栄を張る必要もありません、今のままが最高の貴族像だと我は思いますよ」
皆の前で、そう語り、姉上の話を、大いに肯定しておくのだった。そんな家族話を聞いてる皆も、嫌な顔はせず、むしろ、あぁこの家族はそんな感じですね~、という様子で、話に加わり喋り続けるのだった。
暫く経った時、皆はまだ話に夢中だったのだが、御者席よりヴィタールが、
「マリカ様、最初の目的地、自由市場へと到着致しました。これより先へは馬車を通せない為、こちらで待たせて頂きますが、この市場では、美味しい食材はもちろん、それを加工した料理の露店も出ておりますし、珍しい生地なども並べられていると思います。中央の噴水広場は常に水を湛え魔道具により躍らせておりますので、一見の価値はあるかと思います。ああ、そうそう、その噴水にカップルで一枚の小銭を投げ込めば、いつまでも仲良く居られるとの噂が・・・・」
彼が最後の言葉を言い終わるより先に、
「若旦那様、さあ行きましょう」
「セオ君、噴水って綺麗かな? 見たいよね~」
「わかだんなさま~、いくです~」
「セオス様、皆様もああ言ってらっしゃることですし、参りましょう」
何故か、皆バラバラだったはずの目的地が、一気に一致団結したかの如く一つの場所に決まり、腕を掴まれつつ連行される形で先を急ぐことになるのだった。馬車を降り、皆で中央に向け辺りを見回しつつも、何処にも寄る事なく歩いて行く。買い物客などで賑わう市場は、毎日店が出ているとは言っても、結構な人出であった。なのではぐれない様に集まって移動していると、庶民の買い物客にまじり、ゴテゴテに着飾っている目立つ集団が威張り散らしつつ、歩いて来るのだった。なので、
あぁまた我の周りに馬鹿者の集団が。と頭を抱えつつ考えていると、案の定、自分たちの考えている事を隠す事もせず堂々と大声で、
「見てください、前から我々に手頃な女の集団が来ますぞ」
「屋敷で使うのに良さそうだな」
「年頃になるまでは働かせておけばいいですからな」
「毎年恒例の王家の儀式に来てはいたが、飽きていたので、良い退屈しのぎに出会えたな」
此方に向け真っ直ぐ歩いてきつつ、そんな会話をしているのだった。マリカなどは怖がり、我の後ろへとすぐに隠れるのだが、馬鹿共は目の前にまで来ると、唯一の男である我に、
「おい、そこの小僧。われら貴族がその女達を召し上げてやるので、有り難く差し出すがいい」
にやけ顔で馬鹿な事を言ってくるのだった。なので、わざと、
「どちらの貴族様でしょう。名乗って頂かねば対応に困りますが」
相手に向かいそう話しかけると、
「なにを、ごちゃごちゃ言っておる、黙って聞いておけばよいのだ」
此方に向け、そう言ってきたので、肩を落とし、ふぅ~と溜息を吐きつつ、冷たい目線で、
「我も一応シールズという街の貴族なのですが。それと此方の貴き方は、今回のお披露目に際し皆に話をする見分の為、お忍びで見て回られている、マリカ王女様ですよ。貴方たちがどんな立場の方だろうと、問題をおこせば、無事には済まないと思いますが」
睨みつつそう告げると、悪態をつきつつ、
「ふん、何処の馬の骨か判らぬ小僧が。王女の顔を立てて、今日のとこは去ってやるので有り難く思え」
人波を押しのけつつ、また威張り散らしながら、去って行った、なので、
「マリカ、すいません。無事に治める為、名前をお借りしました。あれがただの悪党であれば今すぐ氷像にしてあげたのですが、貴族というのであれば、王に許可を貰わないといけませんからね」
怒りを抑えつつ、マリカへと、そう話しかけると、皆も同じ思いなのか、
「そうです、若旦那様、今すぐ氷漬けに」
「セオ君、遠慮はいらない、やってしまいなさい」
「氷ではなく、燃やし尽くす、というのは」
過激なそんな意見が飛び交うのだった。まぁ顔は覚えたので、後日の拝礼の時、覚悟しておいてもらいましょうか。などと、皆の意見で少し落ち着いた思考で、考えつつ、中断した噴水を目指すのだった。
おそいですね~^-^;




