街に出ようーその18-
書き書き!
精霊より報告を受ける。それによると廃坑内は一番奥まで分かれ道などなく一直線で進んでおり、途中途中に拡張と補強の為の広場を作ってあるそうだ。蟻たちは其処に数十匹ずつ集まって巣を作っており、最奥にひと際大きい蟻が一匹居たそうだ。で合計二百匹程だろうという話だった。で、話を聞き終えた後、
『いつも有難う。お礼にこれをあげよう。美味しいよ』
精霊に向け、そう言って、待っている間に空気中に漂う世界樹の魔力を集め濃縮し作っておいた、世界樹の雫を手渡した。この風精霊は我が赤ちゃんの時より顔を出している一番懐いているらしい精霊で、もしかしたら森に戻らず、ず~と傍に居るのではないかと言うくらい、いつもいる。二十センチ位のその精霊は我よりそれを受け取ると、
「かみさま~、ありがと~」
お礼を言って食べ始めた。やがて食べ終わると、まばゆい光が精霊を包む。徐々に徐々に広がってゆくその光が消え去ると、綺麗な緑色の髪をなびかせる背に綺麗な羽をもつ、百六十センチ位の凄い美人が立っていた。
その様子を見て、うむ、栄養を与えすぎて進化させたみたいですね。などと考えていると、自分の姿を確認していた精霊が、
「有難う御座います、神様。今まで以上の力を自分に感じる事が出来ます。これからもお傍に居りますので宜しくお願いしますね」
今までと違い丁寧な言葉で挨拶をしてくる。なので、
「うむ、喋り方もだいぶ変わったみたいだね、どこかに違和感とかあるかな?」
彼女にそう訊ねると、
「あの、いままでは風精霊の中の一つという感じで、皆といる集団が一つの風という感覚だったのが、今は個体で一つの風であることを感じ取れます」
我にそう言ってきたので、
「うむ、個体で風を持つものか、ならば君にシルフィーネという名を与えよう」
名付けた精霊にそう言うと、満面の笑顔になり、
「シルフィーネ。風精霊ではなく、シルフィーネと呼んでもらえるのですね。有難う御座います」
名前を繰り返しつつ、感極まっていた。で、喜ぶシルフィーネを横に、そろそろ依頼を片付けるかと、廃坑の中へと向かう。はじめは炎で焼き尽くすかとも考えたが、我がやると死体も残らず燃やし尽くしそうで、そうなると依頼の達成確認も出来なくなるので、時間はかかるのだが、あえてここまで来た時と同じように個々で捌いていくか、という事にした。奥へと歩き、シルフィーネが蟻のいる場所を少し手前で教えてくれるので、常に先手を取り氷漬けにし、首を切り落とすという工程を繰り返し、バッグへと詰め込んで行った。あらかた片付けたかな、と思った頃に最奥へと辿り着き、報告通り其処にひと際大きい個体を見つけると周りを確認し、卵の集まりを見つけると、
うむ、これがこの集団の母体の様ですね。これを退治すれば暫くはここも平穏に戻るでしょう。と、考えながら、今までと手順は変わらず処理していく。倒し終え、報告するときに説明しやすいようにと、卵までバックに放り込むと、廃坑をあとにしようと出口を目指した。行に全ての蟻を片付けているので帰りは然したる時間も掛からず辿り着くと、街まで戻るかと来た道をシルフィーネを伴い戻ってゆく、すると突然、ドンッという音が辺りに鳴り響いた。音の出所を探ってみると、現在採掘中の坑道の方からの様だった。なので取り敢えず様子を見に行くか、と思ったところで、
「シルフィーネ、今から新しい採掘場に様子を見に行くが、人前に出た時目立たぬ様、姿を消すか、羽を隠すか出来るかい?」
シルフィーネにそう訊ねると、
「はい、両方出来ますが、ご一緒したいので、取り敢えずは羽を隠しておきます」
すぐにそう答え、さっそく羽を消し、我の後を付いてきた。なので少し急ぎながら音のした場所へと向かうと、其処には、怪我をした者や、身動きの取れない者が、幾人も横になり、動けるものは焦りを浮かべた状態で叫び合っていた。何事かと思い、暫し耳を傾けると、どうやら採掘中の坑道に蟻の魔物が出てらしく、運が悪い事に拡張の為の爆薬を仕掛ける最中だったらしく、襲われた鉱夫は恐怖のあまり爆薬を引火させてしまい崩落事故を起こしたらしい。蟻の魔物は爆薬と崩落により死んだらしいのだがそれより奥で採掘していた他の鉱夫達が閉じ込められたままだという事だ。で、さっき怒鳴っていた片方が此処の鉱夫の頭のドワーフみたいで、自分が奥へと助けに行くと言い張っているらしく、でも他の動けるメンバーが、二次崩落の恐れもある今の状態で突っ込むのは危険すぎる、助けを呼んでくるまで待つべきだ。と言い、それに頭が、それまで待ってたら、中の連中は死んじまうぞ。と、怒りだした。そんな感じらしい。仲間おもいのドワーフが頭らしいので、自分が他の者を巻き込まぬ為、一人で行くと言い張っている様に我は、
うむ、これは我が行って助ければ万事解決ですね。そう考え、
「あの~、鉱夫の皆さん、すいません。ちょっとよろしいでしょうか?」
この場に似合わない、緊張感のない声が皆の耳に届くのだった。
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