魔法を使ってみよう!ー後編ー
前の続きスタートです。
「だ、誰?」
怪訝そうに言う姉上の言葉に、我が
「あるふぉんす~」
笑顔でそう答えると、
「坊ちゃん、よくご存じで、武官のアルフォンスです。領主様に頼まれて見守っていたんですがっ、よいしょっと、俺が来たからにはゴブリン程度ならもう安心ですよ」
抜いた剣で、攻撃を捌きながらも、軽口を叩いてきた。それも、
「ああ、アイシャ様の魔法の練習でしたね、奥の方から来るゴブリンに適当に牽制して貰えると、早く倒せて助かりますので、よろしくっと」
戦闘を続けつつ、魔法の練習を兼ねていいなどと続けて言い放ちながらも、五匹ほどのゴブリンを切り倒していった。姉上も、
「なんなのよ、もうっ」
突然の事で判らないながらも、さっきまでの悲壮な覚悟を振り払い、なんとか元の精神状態に戻しつつ、言われた通りに、奥の敵へと魔法をはなってゆく。そしてその集団を倒し終わると、
「いや~草原でゴブリンの集団に出くわすなんて、ついてないですね~まあ何とか無事終わったんで・・・・」
確認をしつつそう言いかけたところで、
「嘘だろう、こんなとこに、ちくしょ~ゴブリンどもはこいつから逃げてここまで来てやがったのか、こいつ相手に無事お二人を街まで逃がすとなると騎士団をあと二,三人は連れてないと時間稼ぎにもならんぜ。倒すとなったら、十数人単位の編隊組んでこないと、ちとやばいな」
「あ、あっ」
アルフォンスのこわばった表情と言葉と同時に、姉上もそれを見て再び、いやさっきよりも取り乱しながら、震え始める。
「くそっ、草原程度の場所なら、休暇の俺一人でも大丈夫と思ったのが運の尽きかぁあ。休みの日に働くなんて普段しない様な事をするもんじゃないな」
敵を見据え、そう言いつつ、向かってくる相手に向け剣を構える。
「アイシャ様、セオス坊ちゃん、俺が何とか死に物狂いで留めとくんで、街になるだけ早く戻って、門番と、領主様に知らせてきてくれ」
覚悟を決め、アルフォンスはそう後ろにいる我らに声を掛ける。
本来それは此処にいるべきではない存在、ラヒューレ大森林の比較的奥に住むという三メートルを超える巨体を持つ、どす黒い肌に血走らせたような真っ赤な目を持つジャイアント・オーガという魔物であった。額に角があり、腕は太く、その怪力の一撃は街の城壁をも破壊する、と言われている。そんな魔物がもう其処まで迫ってきていたのだ。
うむ、我以外ではこの状況は打破できぬな。姉上は震えて、たぶん走ることはおろか歩く事さえ出来るかどうか、それにアルフォンスでもそう長くは持ちこたえられまい。ならば、覚悟を決め実力を見せるしかあるまい。そう考え終え、てくてくと、しかも悠然とアルフォンスの横を通りすぎ前へと出る。
「セ、セオ君」
「坊ちゃん駄目だ、早く後ろに戻って」
二人は慌てた声で我を止めようと叫んでくるが、天に向け人差し指を突き出し、こちらに向かってくるジャイアント・オーガに向け神力を込め振り下ろす。
「神雷」
響き渡る轟音と共に、天より光の柱がジャイアント・オーガに突き刺さる。途端に焦げ臭い匂いと共に立ち込める煙に視界を奪われ皆、状況が把握出来ずにいる。
まあまあじゃな、手加減もちゃんと出来ておる、なにせ周りが焼け野原になっていないからな。などと考えていると、ようやく引いてきた煙の向こうに黒焦げになり倒れ死んでいるジャイアント・オーガを確認したアルフォンスと姉上が、
「今のが、神雷・・・・伝説で聞いた通りの・・・・王の言うとおりか。それにしても、ジャイアント・オーガを一撃とはすさまじいな」
「いまの、セ、セオ君が?」
今の出来事を振り返り、二人とも余りの威力の雷に驚きを隠せずに、声にならない声をあげていた。
「ふたりとも~だいじょぶ?」
確認の為、そう声を掛けると、
「ははっ、大丈夫だ、それより手助けはいらなかったみたいだな。それよりも今日はもうこの辺で、街に戻ろう、周辺の状況を騎士団に頼んで確認もしないといけないしな」
唖然としながらも、街へと戻るというアルフォンスの言葉に、姉上も、
「そうね、色々あって精神的に疲れたからね、セオ君もどろ」
我に声を掛け手を繋ぎ街の方へ向けゆっくりと歩き出した。途中、
「今日はセオ君に助けてもらったけど、私がお姉ちゃんなんだから、もっとも~~と強くなって、今度は私が守るんだからね」
強くなるんだ、との気合の入った言葉を呟いていた。そのあとは何事もなく無事三人で屋敷までもどったのであった。
その夜、
「エルネスト、賢王たる王様が今度ばかりはなぜ戯言をと思っていたが・・・・本物だったぜ、ありゃ、ほんとに何か仕出かして敵にしたら国が滅ぶわ」
今日、見てきたことをと話すアルフォンスの言葉を聞き、
「冗談でこのような事をなさる方ではないのは、判っていたし、何より今の領主様のもとに来たことに後悔がないのも事実、そのうえ、それが本当だとしたら、我々の頼まれた事はかなりの重要案件だということになるな」
頷きながら返すエルネスト、この晩元王城勤めの二人は事の重大さを改めて認識し、遅くまで話し込むのであった。
なんとかっまとめました。楽しんでいただけたら嬉しいです。




