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怖い怖い

 とうとう見知らぬ男性に部屋に招かれたぞ。これでもう堕ちるとこまで堕ちられる。

 少女はこれから起こるだろうと予想される情事《じょうじ》を悶々と巡らせた。

 あんな大男と体を重ねることになるのか。本人も気付かぬうちに顔が紅潮《こうちょう》していた。

 「フフフッ・・・」

 「・・・・その気色悪い笑い声やめろ。」

 「あぁ、申し訳ありません。これから起こることを想像したらつい・・・」

 「なんだそりゃ。」

 大男は何のことだかって反応を取る。白々しいやつだ。

 「そういや、名前は?オレは枡田《ますでん》 沙凪《さなぎ》だ。」

 考えてみると家に招待されているというのに、お互いに名前を知らなかった。 

 「変わったお名前で・・・・」

 「よく言われるよ・・・」

 「私は萌生《もやし》 好《よしみ》です。」

 「言ってるてめぇも、変な名前じゃないか。」

 「貴方《あなた》よりはましですよ。」

 そんな感じに自己紹介を済ませた辺りで、丁度、目的地に到着した。

 築何十年かの古い、二階建ての大きめの家。二階への階段は外付けになっていた。

 「二階は全て暫定的ながら、オレの領域だ。まあ、好きにしろ。」

 「・・・はい。」

 体に戦慄が走る感覚がした。

 「シャワー浴びて・・・手前から二番目の部屋で寝ろ。俺は一番手前だ。」

 もしかして、ここまで来て怖気《おじけ》づいたのか?

 「・・・はい」

 最早、沙凪の声は届かなくなっていた。

 

 浴槽に案内された時点で、好は余りに遅い後悔をしていた。やっぱりこういうのは順序とかあるだろうし・・・何か間違ってないだろうか。本当に遅すぎた後悔であった。

 私は今から自分の意思で好きでもない男に抱かれようとしている。これでいいのか?人生初の自問自答。どうするべきか自分自身に問いかけた。

 ここで少女には二つの選択肢を作る。それはズバリ大人しく処女《しょじょ》喪失《そうしつ》か、又は逃げ出すか。

 不可能ではないだろう。こっそり、抜け足、差し足、脱出できるはず・・・

 「オイ」

 「はいぃ!」

 「なんだ、どうした?」

 「い、いや、なんでも・・・な、なんの御用ですか。」

 本当に神出鬼没とはこのことだ・・・・

 「あぁ、飯食うか。ってだけだ。夜遅いしよそういうの気にするかなってね・・・」

 「もう済ませてあるので平気です。それより・・・・」

 「ん?」

 「もしかして、ずっとそこに居ました?」

 「ああ、もちろん。」

 もちろんて・・・・足音がしないわけだ・・・・

 これはもう。



 逃げられないな。


 少女に選択肢は無かった。

 



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