紳士と湯船
これは沙凪が風呂場で体験した事。
俺とゆう奴はなんてことを・・・・
出てしまった言葉は、もう飲み込むことはできない。
果てしない脱力感の中で風呂場をさがす。ちなみに、風呂場への道は、好の残した水滴の跡が教えてくれた。
脱衣所に到着すると、さっさと服を脱ぎ、温まったタイルに足を付ける。
当然浴槽があった。先ほどまで好が浸かっていた浴槽。
・・・・・・・
ちなみに、沙凪は久しく湯船に浸かっていない。何故なら、沙凪宅の湯船は、あの家の本当の主人である祖父母と共用なのだ。はっきり言って浸かりたくなかった。
しかし、この湯船には好の出汁しか出てない。むしろ浸かりたい。
・・・・・・・
浸かっていいのか?何か卑怯じゃ・・・・・
い、いや。風呂場で浴槽に浸かるのは当然だ。やましいことではないぞ。むしろこんな事でためらってる方が、やましいこと考えてるってことだ。 いや、しかし。
素っ裸のままで沙凪の苦悩は続く。
ガラララ・・・・
突如、風呂場の引き戸が開けられ、冷気が流れ込む。
「あれぇ。まだ入ってないのぉ。」
好ママだ。ちなみに何故かバスタオルをマントのように羽織り、首から下を丸々隠している。
「なんすか、そのかっこ・・・・」
「えぇ?なぁにぃ?このバスタオルの下が気になるですってぇ?やぁん、えっちぃ!」
「さっさと出て行ってくれます?」
冷たい目で、自然と出てきた敬語でつらつら追い返す。
「なに、そのうっすい反応!?男の子でしょ!もっと興奮なさい!」
「いや、そう言われましても・・・・」
本当に敬語しか出てこない。
「なによもぉ・・・・」
好ママは、不満げに頬を膨らませ、バスタオルを脱ぎ捨てた。
ちなみにバスタオルの下には、しれっと服が着られていた。
「で、何の用ですか?」
「・・・・・ねぇ、お願いだから。その敬語だけは止めて頂戴。」
「・・・・何の用で来たんだ。」
「実はねぇ。」
また好ママはぶりっこしだした。沙凪の目はまた冷たくなるが、それには構わず、話を続行する。
「ママさんはねぇ。夫と離婚してから、その・・・・ご無沙汰なのよ。」
「出て行ってください。」
「ちょっと!話は最後まで聞きなさい!」
「だって・・・・大体予想できますもん。」
「もぉ、いいわ!この甲斐性無し!」
そう言い捨てて、好ママは風呂場から消え去った。
まあ、多分本気ではなく、からかう気であったのだろうが。・・・・・多分。
沙凪は結局湯船には浸からなかった。なんとゆうか・・・紳士ですから。
まあ、本物の紳士は、そういった事を一切気に掛けず、湯船に浸かるものだろうが。




