第9話 貴族の血統
レオンハルトが本家への報告と『黒い石』の鑑定依頼を決断した、その翌朝。
アルヴェイン男爵領の館前には一台の馬車が停められていた。
紋章も装飾も最低限に削ぎ落とされた、実用一点張りの黒塗りの馬車だ。レオンハルトはその傍らで、留守を預かる二人の腹心と向き合っていた。
「留守を頼むぞ、ヴォルフ。……昨夜の侵入者がまだ近くに潜んでいる可能性もあるが、これ以上、本家への報告を先延ばしにすることもできない。何かあればすぐに早馬を出せ」
「はっ、お任せくだされ。かの『破片』を見た時、背筋に冷たいものが走りました。かような得体のしれない者が潜んでいるとなれば、一刻の猶予もありませんな。この老骨、命に代えても領地と騎士たちの背中を守り抜いてみせましょう」
ヴォルフガングは胸を叩いて請け負い、豪快に笑ってみせた。
その隣で、副団長のロイが神妙な面持ちで口を開く。
「レオン様……本当に、護衛はこれだけでよろしいのですか? 本家へ向かう道中、何があるか分かりません。俺もお供を――」
「不要だ。それよりも、お前には重要な『役目』がある」
ロイの言葉を遮り、彼の目を真っ直ぐに見据えた。
「騎士団の再編だ。これ以上の犠牲を出さぬ為にも、今の戦力を見直し、騎士団を立て直す必要がある……それができるのは、お前しかいない」
「……ッ」
「ヴォルフは現場の指揮で手一杯だ。内側を支えられるのはお前だけだ、ロイ。……任せたぞ」
主君の言葉に、ロイは一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに居住まいを正して拳を胸に当てた。
「……了解です。まったく、人を乗せるのがお上手だ。死んだあいつらに笑われないよう、騎士団を立て直してみせますよ。道中はお気をつけてください」
自嘲気味な笑みを浮かべつつも、その瞳には強い覚悟が宿っていた。
「頼んだぞ。……行ってくる」
配下二人の敬礼に見送られながら、レオンハルトは馬車へと乗り込んだ。御者への短い号令と共に、馬車が動き出す。
窓の外へと流れていく領地の風景をただ見つめていたが、胸の内には、言葉にできない不安が広がりつつある。その傍らには、厳重に封印された鉄箱が置かれていた。
*
レオンハルトが本家のことに思いを巡らせていると、脳裏に呑気な声が響いた。
『……いよいよだな、実家への帰省ってやつは』
「帰省などという生易しいものではない。これは公務だ。……道中、余計な無駄口は叩くな」
不機嫌そうに鼻を鳴らし、深く座席に背を預ける。
僅かに静寂が戻るが、それでもユウは再び言葉を続けた。
『……分かってるよ。でもさ、お前の実家……ヴァルシュタイン伯爵家だっけ? どんな所なんだ? お前みたいな堅苦しい奴ばっかりなのか?』
「……今、口を慎めと言ったばかりだろう」
レオンハルトは呆れるように息を吐き、やがて口を開いた。
「ヴァルシュタイン家は、代々風の系統の加護を受け継ぐ武門の名家だ。王国の北方を守護する辺境伯であり、その武力は王国でも屈指とされている」
『へぇ……武勇に優れた辺境伯か。なんていうか、いかにもレオンの父親って感じだな』
「……貴様が今想像したよりも、さらに数倍は容赦のない人物だと思っておけ。父上は『鉄の伯爵』と畏れられている。敵対する者はもちろん、身内にすら一切の妥協を許さぬ御方だ」
『怖そうな親父さんだな……。そういえばさ、俺、この国のことよく知らないんだけど。なんて国なんだ?』
「……貴様、そこまでの無知を晒されると、かえって疑う気力も失せるな」
レオンハルトは呆れを含んだ溜息をつき、窓の外を流れる荒野を見つめた。
ユウが本当に異世界人なのか、それとも新手の憑き物なのかは判断を保留している。だが、少なくともこの世界の「常識」が欠落していることだけは確かなようだ。
「ここは『グランヴァリア王国』。精霊信仰を基盤とし、王家と四大公爵によって統治されている歴史ある国だ。ヴァルシュタイン伯爵家は、その北の国境の守りを一任されている」
『グランヴァリア王国……なるほど。結構デカい国なのか?』
「大陸でも随一の大国だ。だが、それゆえに内外に敵も多い。北の未開地に潜む脅威、南の通商連合、そして国内の権力争い……」
淡々と語るレオンハルトの声に、ユウはふと、疑問を口にした。
『……なあ、レオン。答えにくかったら無視してくれていいんだけど』
ユウは言葉を選びながら、核心へと触れた。
『そんなすごい名家の長男なのに、どうして辺境の男爵なんてやってるんだ? お前、俺が見てもビビるくらい優秀じゃんか。腕っ節も強いし、頭も切れるし……。なんで家を出されたんだ? 普通、長男が跡を継ぐもんじゃないのか?』
馬車が大きく揺れた。あるいは、それはレオンハルトの体が強張った震動もあったのかもしれない。
しばらくの沈黙の後、レオンハルトは窓の外を見つめたまま、独り言のように呟いた。
「……貴族社会というのは、長男というだけで家督を継げるほど甘くはない。ヴァルシュタインの当主には、個人の武勇や知略とは別の……絶対的な『資格』が求められる」
『資格……?』
レオンハルトは一度、深く息を吐いた。窓の外の景色を追っていた視線が、いつしか遠くの空へと向けられる。
「……私には、加護がない」
『…….え?』
「精霊の加護。この世界で貴族たる証。それが、私には宿らなかった」
視線を空へ向けたまま、声の調子を変えることなく続けた。
「測定の儀式は三度行われた。幼少期、十歳、そして十四歳。……結果は全て同じだ。反応なし。私には、精霊が宿る『器』そのものが欠けている」
『……そんな』
ユウは絶句した。返す言葉が見つからず、しばらく沈黙する。
「本来なら、家督を継げぬ長男に領地を分割することなど、貴族の常識ではあり得ない。……だが、父上は、私に男爵の爵位と領地を与えた」
『……それって』
「父上の真意は、今も理解できない。これが温情なのか、それとも別の思惑があるのか。……ただ、与えられた以上、私はこの地で結果を出すしかない」
『……レオン』
それが、レオンハルトが実家について口にしたくなかった理由なのだと、ユウにも少しずつ分かってきた。
「同情など不要だ。私はこの事実を、とうに受け入れている」
レオンハルトは窓の外、流れゆく風景を見つめ続けた。
「……それよりも、貴様に一つ確認しておきたいことがある」
レオンハルトは座席の傍らに置かれた厳重な鉄箱へと手を伸ばした。
『それって、出発前にヴォルフさんから受け取った箱だっけ』
「今朝早く、ヴォルフらがあの現場から回収したものだ」
レオンハルトは鉄箱の蓋を開け、中の品を取り出す。
それは、表面が蒼く淀んだ石の破片だった。報告だけは受けていたが、実物を見るのはこれが初めてだ。
「デモンボアを変質させた『根源』を、貴様はあの時見抜いた。……この破片から、感じるものはあるか」
火の属性を持つ者には火の精霊しか見えない。それがこの世界の常識だ。
だが、この自称異世界人は違う。レオンハルトは、ユウが属性の枠を超えて、魔力の流れを視認しているのではないかと考えていた。
ユウはレオンハルトの視界を通じて凝視する。
『これは……とても、嫌な感じがする。火の精霊石、だっけ? なのに、石の中にどろどろした「墨」を流し込んだみたいだ』
ユウの眼には、石の奥に残った僅かな赤い光が見えていた。
だが、その光に黒い「墨」のようなものが絡みつき、赤が少しずつ蒼へと染まっていくように見えた。
「墨、だと……?」
『ああ、上手く言えないけど、この中にある赤い光が「精霊」なんだとしたら……。普通の火の精霊とは違うものに変わっていっているような、そんなものを感じるんだ』
ユウの言葉は、要領を得ない曖昧な表現でしかない。しかし、レオンハルトの背筋に冷たい震えを走らせるには十分だった。既存の魔法学では、精霊を「消滅」させることはあっても、「書き換える」などという概念は存在しないからだ。
「……やはり、私の杞憂ではなさそうだな。むしろ、黒い石よりもこちらの方が厄介だ」
レオンハルトは破片を再び厳重に封印し、箱に鍵をかけた。
*
数時間の行軍を経て、景色が一変した。なだらかな丘陵地帯の先に現れたのは、天を突くように聳え立つ巨大な石造りの城壁だった。
『うわ、でっか……! なんだあれ、要塞そのものじゃないか』
「……あれが、伯爵の館だ」
ヴァルシュタイン伯爵領の城塞都市。風属性の加護を受ける一族の居城らしく、常に高空には強い風が吹き荒れ、掲げられた旗がバタバタと激しい音を立てている。
アルヴェインの館が牧歌的な田舎屋敷に見えるほどの、圧倒的な威圧感だった。巨大な城門を潜る際、レオンハルトの呼吸がわずかに浅くなったのを、ユウは見逃さなかった。
『レオン、その……大丈夫か』
「……心配など無用だ。貴様こそ、ここからは一切喋るな。思考すらするなよ」
馬車が石畳の上を走り、本邸の前で停まる。待ち構えていた従者たちがうやうやしく扉を開けた。
「お待ちしておりました、アルヴェイン卿。旦那様が執務室にてお待ちです」
「……ああ」
レオンハルトは従者が用意した手押し台車に鉄箱を乗せると、自らそれを押して歩き出した。彼にとっては懐かしいはずの生家の空気が、肌を刺すように冷たく、そして重かった。
「アルヴェイン男爵レオンハルト様、ご到着にございます」
扉の脇に控えていた従者が室内へ声を通す。やや間を置いて、部屋の奥から威厳に満ちた声が返ってきた。
「――入れ」
レオンハルトは背筋を伸ばし、静かに扉をくぐった。広大な執務室。その最奥、豪奢な執務机の向こう側に、その男はいた。
深緑の髪をオールバックになでつけ、顎に整えられた髭を蓄えている。四十路を迎えたばかりのその肉体は、しなやかな筋肉で引き締まり、服の上からでも鋼のような強靭さを感じさせた。
現ヴァルシュタイン辺境伯、ゲルハルト・ボレアス・ヴァルシュタイン。「鉄の伯爵」の異名を持つ、北方の守護者である。
「……レオンハルト・フォン・アルヴェイン。お召しにより参上いたしました」
レオンハルトは上級貴族に対する礼節をもって一礼した。
書類から目を離したゲルハルトは、ゆっくりとレオンハルトへ視線を向けた。その鋭い眼差しを前に、広い執務室に張り詰めた空気が落ちる。
「……遅いな、男爵。書簡での第一報から、随分と日が空いたようだが」
「申し訳ございません。領地における戦後処理、およびこの証拠品の封印と搬送に時間を要しました」
「言い訳は良い。……で、それが報告にあった『石』か」
「はい。魔物の体内より回収した『黒い石』……そして、昨夜現場にて回収された、最新の証拠品です。何者かが侵入し、我々の罠に掛かった痕跡にございます」
レオンハルトが箱の封印を解き、中身を見せる。
禍々しい紋様が刻まれた『黒い石』。そしてその傍らに、不気味に蒼く淀んだ火の精霊石。それらが露わになった瞬間、ゲルハルトの眉間が険しくなった。部屋の空気が、ピリリと凍てつくような緊張に支配される。
「……なるほど。確かにこれは、只事ではないな」
重々しく頷いたゲルハルトが、すぐに視線をレオンハルトへと戻した。
「男爵。報告によれば、敵の戦力は二百を超え、強力な魔獣まで擁していたそうだな」
「はっ」
「……ならば問う。なぜ、救援を呼ばなかった?」
ゲルハルトの視線が、レオンハルトを捉えたまま動かない。
レオンハルトは背筋を伸ばしたまま、即座に答えた。
「敵の進軍速度と我が軍の即応性を鑑み、籠城よりも奇襲による各個撃破が有効と判断しました。我が領の戦力と策にて、十分に対処可能であると――」
ダンッ!!
言葉を遮るように、ゲルハルトの拳が机に叩きつけられた。インク壺が跳ね、鉄箱がガタリと揺れる。
「――『傲慢』だな」
ゲルハルトが立ち上がった。
レオンハルトはその場を動かず、真っ直ぐに父を見上げる。
「貴様の欠点は、その一点に尽きる」
「……っ」
「対処できたかどうかなど結果論に過ぎん。もし貴様の策が破綻していたら、領地は、領民はどうなっていた? 救援も求めず、己の力だけで事を収めようとし、民を危険に晒す行為……それを『傲慢』と言わずして何と言う」
荒々しい声が室内に響く。
それに対し、レオンハルトは何も反論できず沈黙した。
先の戦いで、策そのものは成功した。
だが、異常なまでに強化されたデモンボアという想定外の存在によって、犠牲も出た。
――あれがいなければ。
そんな考えが一瞬、脳裏を過る。
だが、それを言い訳にすることはできない。戦場に想定外は付き物であり、今回はそれが予想を大きく超えていただけだ。
「領主の役目は何だ。己の力を証明することではない。領地を守り、領民を守ることだ」
ゲルハルトはレオンハルトを鋭く見据えた。
「矜持に囚われ、己の役目を見失う者に――領主の資格などない。よく覚えておけ」
自力での解決に拘り、救援を求めることを躊躇ったのは事実だった。
そして何より、その迷いを見透かされていることが、レオンハルトの心に堪えた。
『……おい、ちょっと言い過ぎじゃないか? レオンだって必死に守ったんだぞ!』
ユウの憤る声が響く。
だが、レオンハルトは何も答えず、ただ頭を垂れた。
「……仰せの通りです。肝に銘じます」
「だが――」
ゲルハルトの声の響きが、わずかに柔らかくなった。
「その戦力差を独力で覆した手腕だけは、評価に値する」
しかし、それは束の間のこと。すぐに鉄の仮面が戻る。
「……下がって良い。石の解析については、追って沙汰を出す」
「……は。失礼いたします」
レオンハルトは一礼して、部屋を後にする。その額には、冷や汗が滲んでいた。
*
重い扉を閉め、廊下に出た瞬間。
レオンハルトが深い息を吐こうとした、その時だった。
「レオン! レオンがいるのね!?」
廊下の向こうから、嵐のような勢いで何かが突っ込んでくる。豪奢なドレスを纏っているが、その足音にはお淑やかさがまったくない。
「――あ、姉上っ!?」
「無事だったのね! ああもう、魔物の大群に襲われたって聞いて、お姉ちゃん心臓が止まるかと思ったわよッ!」
「ぐ、うッ……!?」
回避する間もなく、レオンハルトはその豊満な胸の中へと抱きすくめられた。
フレデリカ・ヴェンデル・ヴァルシュタイン。この家の長女であり、風の中位にあたる精霊の加護を持つ「嵐の令嬢」。
彼女の腕力は、並の騎士を遥かに凌駕する。レオンハルトの背骨がミシミシと悲鳴を上げた。
『うおっ、なんだこの人!? いきなりデモンボアみたいな勢いで突っ込んできたぞ!?』
「姉上、苦しい……。骨が、折れる……」
「あら、ごめんなさい! だって久しぶりなんだもの。無事でよかったわ、本当に!」
フレデリカはパッと腕を離すと、今度はレオンハルトの頬を両手で挟み、至近距離から顔を覗き込んだ。
「ちょっと痩せたんじゃない? ちゃんと食べてるの? あの辺境、作物は育ちにくいでしょう? 仕送りしましょうか?」
「いえ、食料は足りております。それに、今は公務中ですので……」
「公務なんて関係ないわよ! 弟を心配するのは当然でしょう!?」
ガハハと豪快に笑う姉の姿に、レオンハルトは毒気を抜かれたように肩を落とした。
この家において、唯一屈託なく接してくれる存在。その「脳筋」気味な愛情表現は、時として父の叱責以上に厄介だが、それでも今は、素直に温かかった。
だが――その温かな時間は、唐突に凍りついた。
「……フレデリカ。おやめなさい」
廊下の空気が、一瞬にして真冬のように冷え込んだ。
カツ、カツ、と冷たい足音が響く。現れたのは、氷のように整った美貌を持つ女性。豪奢な扇子を手に、冷ややかな視線を向けている。
エルゼ・ヴェンデル・ヴァルシュタイン。レオンハルトの実母であり、現伯爵夫人である。
「お母様……」
フレデリカが気まずそうに一歩下がる。エルゼは娘を一瞥もしない。その視線は、汚物を見るかのように細められて、レオンハルトを見据えていた。
「そのような『出来損ない』に触れてはなりません。我が家の、ヴェンデルの血の誇りが汚れます」
「……ッ」
レオンハルトの身体が、強張った。
父の叱責には「理」があった。だが、母の言葉にあるのは純粋な「拒絶」だけだ。彼女にとって、レオンハルトの存在自体が、許しがたいものなのだ。
「あの方も、何を考えておられるのか……」
執務室の扉を忌々しげに睨みつけ、エルゼが聞こえよがしに吐き捨てる。
「このような下賤な者を本邸に招き入れるなど。高貴な血を引く者が集うこの場には、相応しくありません」
「……申し訳ございません、奥方様。用件が済み次第、すぐに退室いたします」
レオンハルトは感情を押し殺し、深く頭を下げた。これ以上、母の視界に入り続けることは、彼女のヒステリーを誘発するだけだ。彼は幼い頃から、そうやって嵐が過ぎ去るのを待つ術だけを、身につけてきた。
「……離れを用意してあります。鑑定が終わるまでは、そこから一歩も出ないように」
冷たく言い放ったエルゼが、扇子で口元を隠し、足早に去っていく。
すれ違いざま、レオンハルトの服の裾が、彼女のドレスに僅かに触れた。エルゼは立ち止まりもせず、まるで汚れた埃でも払うかのように、大袈裟にドレスのその部分を払い落としながら歩き去った。
『……なんだよ、あの態度』
静まり返った廊下で、ユウが声を漏らす。
それは、先ほどまでの軽口とは違う、静かな怒りに満ちた響きだった。
『下賤? 出来損ない? ふざけるなよ……。あいつは、レオンの母親だろ!?』
「……慣れている。気にするな」
レオンハルトは一瞬だけ目を伏せ、それから顔を上げた。
「行くぞ。離れはこっちだ」
「レオン……」
残されたフレデリカが心配そうに手を伸ばした。それをやんわりと制し、振り返ることなく歩き出す。
豪奢な本邸とは対照的に、庭の隅にひっそりと佇む古びた別棟。
四半世紀も前に打ち捨てられた元使用人宿舎――それが、この家におけるレオンハルトの「部屋」だった。本邸の喧噪も、家族の情愛も届かないその静寂こそが、彼にとっては最も馴染み深いものだった。




