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追放された万能薬師は、隣国の冷徹皇帝に溺愛される  作者: La Mistral
第6章:【新生の神話編】

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第94話:黎明の執着

物語は、懐胎という分かちがたい絆を得た三人の、密室での濃密な日常へと沈み込みます。第94話では、心身の変容に戸惑い、夜ごと悪夢に苛まれるエルサを、新王とゼノス様が「慈愛」という名の鎖で絡め取り、彼女から「一人で思考する自由」さえも奪い去る過程を描きました。

新王の冷徹な知略による精神的な去勢と、ゼノス様の野蛮な独占欲による肉体的な束縛。二つの相反する重圧に挟まれたエルサは、鏡に映る自身の変わり果てた姿にさえ、主君たちの「共有財産」としての悦びを見出すようになります。一人の女性としての尊厳が完全に粉砕され、二人の王という絶対的な重力の中でのみ呼吸を許される、依存の極致と「個の死」を執筆いたしました。

王宮の寝室を支配する沈黙は、今や私にとって耐えがたい重圧となっていた。


懐胎の兆しは、私の内側に得体の知れない熱と、絶え間ない疼きを刻み込んでいる。


夜ごと、私はかつての聖なる日々が崩れ去る悪夢にうなされ、汗に濡れて目を覚ます。


しかし、その先に待っているのは救いではなく、より深い支配の深淵だった。


「……あ、……ぁ、……怖い……。……私の中の……何かが……、……私を……食い尽くして……しまう……っ」


闇の中で震える私の肩を、新王の細く冷たい指先が優しく、しかし確実な力で捉えた。


「案ずるな、エルサ。それはお前が独りになった証拠ではない。我ら二人の命が、お前の弱さを糧にして育っている証だ。その恐怖すら、我らへの忠誠に変えてしまえ」


新王は私の耳元で冷徹な慈愛を囁き、私の精神の拠り所を、自身の支配という名の檻へと誘い込む。


「ハハハ! 独りで震えてんじゃねえよ、エルサ! ほら、俺の腕の中にいろ。お前の不安も、その疼きも、全部俺が力ずくでねじ伏せてやる!」


反対側から、ゼノス様の逞しい腕が私の腰を強引に引き寄せ、野獣のような体温で私の寒気を焼き払った。


二人の主君に挟まれ、逃げ場のない熱に浮かされながら、私は自身の心が、彼らなしでは一瞬たりとも形を保てなくなっていることに気づく。


「……は、い……。……お二人……が……いなければ……、……私……、……壊れて……しまいます……っ。……もっと……、……もっと……支配……して……ください……っ」


私は、二人の王の体温に縋り付き、依存という名の心地よい毒に身を浸していく。


自由への憧憬はすでに消え、ただ彼らの執着という名の酸素で、私は辛うじて息をしていた。


「……っ、あ、……何も……考えられ……ない……っ。……お二人……の……声しか……届かない……の……っ」


新王は、私の目元に薄い絹の帯を巻き、視界を奪うことで私を闇の底へと突き落とした。


見えない恐怖に震える私の唇に、彼は冷たい果実を押し当て、甘美な支配を喉の奥へと流し込む。


「良い子だ、エルサ。お前の瞳はもう、外の汚れた世界を見る必要はない。お前の思考は、我ら二人の望みを推し量るためだけに存在すればいい。お前のすべてを、我らに委ねるのだ」


新王の淡々とした、しかし抗いがたい誘導が、私の理性の境界線を曖昧にしていく。


誰かに寄りかからなければ、自分が立っていることさえ確信できないほどの虚無感が私を襲う。


「ハハハ! そうだ、新王の言う通りだぜ! お前が何を考え、何を欲しがるか。それを決めるのは俺たちだ。お前はただ、俺たちの愛に咽び、その胎で俺たちの血を育んでいればいいんだよ!」


ゼノス様は、私の背中からその厚い胸板を押し付け、私の意志を物理的に押し潰すように強く抱きしめた。


彼の荒々しい鼓動が背中越しに伝わり、私の思考は二人の王の存在感だけで埋め尽くされていく。


「……は、い……。……私……、……もう……何も……考え……たく……ありません……っ。……お二人……に……選んで……いただいて……、……お二人……に……動かされる……だけの……人形で……いたい……っ」


自分で決断することの恐怖から逃れるため、私は自ら思考の鍵を二人に差し出した。


新王の冷徹な知略と、ゼノス様の圧倒的な暴力。その二つの檻に閉じ込められることが、今の私にとって唯一の「救い」となっていた。


私は、自分の魂が彼らの色に染まり、個としての色が完全に消えていく感覚に、言いようのない安堵を感じていた。


「さあ、エルサ。その虚ろな瞳を開けて、我らが完成させた芸術を見るがいい」


新王は、私の目元を覆っていた絹の帯をゆっくりと解いた。


再び光を浴びた視界の中で、巨大な姿見に映し出されたのは、主君たちの膝の間で力なく崩れる、意志を失った私の姿だった。


その腹部では、二人の王の紋章が、今や肌の一部として深く、鮮やかに脈動している。


「……あ、……これが……私……?……お二人……の……色に、……飲み込まれて……っ」


私は、自分の身体でありながら、それがもはや自分だけのものではないという事実に戦慄した。


しかし、新王は私の鎖骨に冷たい指を這わせ、鏡越しの視線で私を射抜く。


「そうだ。その身体は、私の知略とゼノスの武力、その二つを繋ぎ合わせるための『三人の共有財産』だ。もはやお前は、一人の女という矮小な存在ではなく、この国の未来を繋ぐ生きた鎖なのだよ」


「ハハハ! 最高の眺めだぜ! 見ろよ、この紋章がお前の肌に馴染めば馴染むほど、お前は俺たちなしじゃ生きられなくなる。お前の血も、肉も、その胎の中に宿る命も、すべてが俺たちの分け前なんだ!」


ゼノス様は、鏡に映る私の腹部を大きな掌で包み込み、所有を誇示するように強く圧した。


その重みと熱が、私の精神の最奥に「個の死」と「共有される悦び」を同時に刻み込む。


「……は、い……。……私……、……お二人……の……物……。……共有……される……、……財産……なのだわ……っ」


鏡の中の私は、自身の意思を失い、ただ二人の主君に縋るだけの愛玩物として、頬を紅潮させていた。


自分自身という存在を喪失し、主君たちの「一部」として定義されることに、私は抗いようのない安らぎと、底知れぬ法悦を感じていた。


窓のない寝室には、執着という名の濃密な沈黙が、重く、甘くたゆたっていた。


松明の火が小さく爆ぜる音さえも、二人の主君の吐息にかき消されていく。


私は新王の冷徹な腕に頭を預け、ゼノス様の熱い胸板に背を預けるようにして、主君たちの肉体の檻の中に閉じ込められていた。


「エルサ、もう眠るがいい。お前が目覚める時も、その次も、お前の視界には我ら二人しか存在しない。外の喧騒も、かつての自分も、すべてはこの闇の向こうへ捨て去るのだ」


新王は私の瞼を優しく指でなぞり、思考の残滓さえも摘み取るように、冷ややかな慈愛を注ぎ込む。


私を一人の人間としてではなく、国家と彼ら自身を繋ぐ「至高の部品」として慈しむその残酷なまでの視線が、今の私には何よりも心地よい。


「ハハハ! ぐっすり寝ろよ、エルサ。お前の夢の中まで俺たちが追いかけて、支配してやるからな! お前は俺たちの腕の中で、俺たちの所有物として息をしてるだけでいいんだ!」


ゼノス様は、私の細い腰を引き寄せ、自身の所有を誇示するように強く、折れんばかりに抱きしめた。


彼の荒々しい鼓動が、私の背中を通じて、胎内の微かな疼きと共鳴する。


「……あ、……ぁ、……お二人……の……腕……、……暗くて……、……温かくて……。……私……、……もう……どこへも……行き……たく……ない……っ。……ずっと……、……このまま……お二人……の……物……で……っ」


私は、自分を一個の人間として扱わない彼らの歪な愛を、唯一無二の幸福として飲み込んだ。


一人の女性としての尊厳は、二人の王という絶対的な重力に粉砕され、今や私は彼らの色に染まりきった「共有の愛玩物」にすぎない。


「くくく、良い子だ。永遠に我らの腕の中で、その夢を紡ぎ続けろ」


新王とゼノス様の、重なり合う独占欲に包まれながら、私は深い、深い眠りの淵へと堕ちていった。


そこには自由も、明日もない。


ただ、二人の王に飼い殺されるという、永劫の安らぎだけが満ちていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

第94話では、懐胎による心身の変容を契機に、エルサが「思考する自由」さえも主君たちに委ね、精神的に完全に去勢されていく過程を描きました。新王とゼノス様の執着はもはや彼女を人間として見ておらず、国家の、そして二人の「財産」として定義するに至っています。

次回、第95話からは、新章「胎動の審判編」が始まります。王宮の奥底で主君たちの愛欲に溺れるエルサの前に、かつての彼女を知る「ある人物」が、彼女を救い出そうと潜入してきます。しかし、もはや主君たちなしでは生きられない身体となったエルサが、その「救いの手」に対してどのような残酷な反応を示すのかを執筆する予定です。

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