ー決着ー
無事に今日もできました。
ユーグは戦闘の最中、持て余していた魔力をフルに使い起死回生の策で今まで一度も成功していなかった闘技を成功させ斥候役の冒険者を弾き飛ばした。通常のスラッシュという闘技は斬撃の強化であるためそこまでの効果はないのであるが、必要以上に込めた魔力が幸いし強力な一撃と化したスラッシュを放っていたのである。
ユーグと冒険者は再び距離を取り、お互いを牽制し合う。
「(何なんだ、今の一撃は?
スラッシュの威力ではないぞ、俺の手がまだ痺れてやがる)」
「……ハァ、ハァ、できた、初めて成功したぞ……」
ユーグは冒険者を注視しながら初めて成功した闘技に喜ぶ。しかし今はまだ戦闘中であるため気を緩めず冒険者を警戒する。
「くそが、どうする?
次はどう動けばいい?」
冒険者は2度もユーグに勝っている接近戦を退けられたことで次の動きに迷いが生じていた。それに加え闘技と猛攻により魔力と体力をユーグの想像以上に消費していたため大胆な行動が取れずにいた。
「……ハァ、よし、さっきより息が整ってきた。
これで何が来ても対処できるようになったぞ。
うん?あの人はまだ攻撃してこないな。
じゃあこっちの番だ!スラッシュバースト!」
ユーグは冒険者とのにらみ合いの時間を使って体力を取り戻していた。必要な体力を回復できたと感じたユーグは冒険者に先んじて行動する。魔力を剣に流しそのまま剣を振り下ろす。斬撃が魔力と一体化し冒険者に向かって飛来していく。それは闘技スラッシュと同様ユーグが今まで使えなかった闘技スラッシュバーストであった。
「チッ!こんなもの!
お返しだ!スラッシュバースト!」
向かって来た斬撃を片手で持っていた短剣に魔力を流したまま迎撃する冒険者。スラッシュバーストには先のスラッシュほどの魔力がこめられていなかったため冒険者は迎撃に成功する。続けざま仕返しとばかりにユーグと同じスラッシュバーストを放った。
「……ウォーターウォール!」
「…………」
ユーグは飛来してくる斬撃を水の壁を生成し防ぐ。それを見た冒険者は一瞬ユーグがこちらの姿が見えなくなっていることに気づきチャンスとばかりに無言で駆け出しユーグに近づく。水の壁は見た通りの水で構成された壁であるため物理的な抵抗が少しあるだけで冒険者は突破する。しかし……
「なっ……!」
「……ウォーターアロ―×5!」
冒険者が水の壁を越え前を見るといるはずであったユーグはそこにはいなかった。そして何故か横から声が聞こえ、そこから水の矢が飛んでくる。
「ぐわぁ!」
ユーグの姿が見えないことに一瞬気が動転する冒険者。水の矢が飛来することに気づいたが、すでに遅く水の矢が直撃する。ユーグが意図的に致命傷にならない部分を狙ったため即座に命を失うことにはならなかったが、四肢に当たったため行動不能にはなった。
「これで終わりです!」
ユーグはその冒険者に駆け出し剣を鞘に入れたまま殴り意識を刈り取った。
〈ユーグよ、一応バインド系の拘束魔法はかけた方がいいぞ〉
「あっ、ソタ、それにブラブにブリューも!
そっちは終わったの?」
〈ああ、すでに戦闘は終わらせたぞ。
こっちの冒険者たちは拘束も終わらせて意識も飛ばしておるからしばらくは大丈夫じゃな〉
「うん、わかった。
じゃあ僕も……ウォーターバインド!」
ユーグは水の輪を生成し斥候役の冒険者に向かって飛ばす。すでに意識を失っている冒険者は避けることもなく水の輪が当たり拘束された。
「ふぅ、それにしても大変だったね。
倒したのは僕がもしかして最後なの?」
〈まぁ、そうじゃな。
でもそこまで差はなかったかのう。
ブラブが最初に倒して、そのあとすぐにブリューが勝ち、そしてお主じゃ。
終わってから大差なく倒すから手助けする暇もなかったじゃよ〉
「うーんでも僕が最後か次があったらもっと早くできるよう鍛錬頑張ろう!
でもブラブが一番かぁー、頑張ったね!」
「ゴブブ~、ゴブ、ゴブブブ」
「うん?何々?
ソタがアドバイスくれたから勝てたって?
それはそうだけど、その指示に従って頑張ったのはブラブでしょ?
じゃあブラブそれも君の実力だよ、よく頑張ったね」
「ゴブブ~」
ユーグは1番最後に冒険者を倒したことを悔しがる。そして同時に最初に倒したブラブのことを褒めるのであった。ブラブはソタのおかげで倒すことが出来たとユーグに伝えるが、ユーグはそれでも勝てたのはブラブの実力だと教える。その言葉にブラブは照れるのであった。
「ブリューも2番目に倒せたのは頑張ったね!
しかも1人で相手にして勝てたのは凄いじゃん!」
「ぐるぅ!ぐるぅる、ぐる!」
「えっ?新しい魔力の使い方を覚えたの?
やったじゃん、ブリュー!
今度それ見してもらうね!」
「ぐるぅ!」
ユーグはブリューにも誉め言葉をかける。それにブリューは新しく魔力の使い方を戦闘中にできるようになったことを伝える。今は戦闘が終わったばかりなのでそれを見ることは叶わないため、またの機会に見せてもらうことになった。
「それにしてもこのあとどうしよう?
この冒険者たちも冒険者ギルドか門番さんたちのとこに連れて行かないとマズいよね?」
〈そうじゃのう、流石にここに置いていくことはできないのじゃ、逃げる可能性もあるからのう。
それに冒険者ギルドにも報告しないといけないのじゃ。
じゃがどうやって運べばいいか……〉
「うーん、保管庫には生物は入れられないしかと言って僕たちが抱えて移動するのもな」
「ぐるぅる!ぐるぅ!」
冒険者が何らかの犯罪行為をした場合、近くの町の取り締まりをしている部署の詰め所もしくは冒険者ギルドに報告をしないといけなかった。今回の場合冒険者側からユーグたちに襲い掛かったため明らかな傷害の罪に問われる。そのためユーグたちは冒険者ギルドかグリムノーデンの街を取り締まる兵士の詰め所に報告する必要がある。それに加えその行為を行った冒険者たちも取り押さえているため、その場に残すこともできず、どちらかに連れて行く必要もあった。慣れたものの場合生け捕りにするという選択をせず、そのまま返り討ちにすることが多いのだが、その場合は死体を証拠として提出したり持ち運ぶことができなければギルド証を持ち込むことで捜査が始まることがある。また街道や危険地帯ではない街の近郊では生かして捕まえることもあるが、その場合は街の近くのため兵士が出張ってくれるのであった。
帰りをどうするかユーグとソタが話しているとブリューが自身を指差すユーグに訴えかける。
「うん?どうしたの、ブリュー?
僕がいるって?
えっ!?ブリューがこの3人を運んでくれるの?
でも3人にもなるとブリューより大きいよ?
運べる?」
ブリューはユーグに自分が冒険者を運ぶと伝えるが、ユーグは元の姿になったブリューよりこの3人を合わせた方が大きいためちゃんと運べるのかを懸念する。
「ぐるぅ、ぐるぅる」
「うん?縄で固定してくれたら大丈夫だって。
まぁ確かに縄は持ってるからそれはできるけど」
〈ユーグよ、とりあえずやってみよ。
早くせんと日も暮れてきて戻るのが大変になるのじゃ〉
「ああ、そうだね。
じゃあやってみようか」
・・・・・
「おや?もう捕まってしまったのか?
うん?これは自分たちから仕掛けたのか。
想像以上につかえない連中だったね。
しょうがない、予定より早いけど実験を開始するか」
「シャアアー」
「大丈夫だよ。
今回は実験だからこれがどこまで通用するのかを見るだけだからね。
それに予定量は森の中に置いてくれてたみたいだしね」
グリムノーデンの街の中で蛇眼の男が誰かと話しながら何かのスイッチを押す。押されたスイッチはその場では何の反応もなく動くことはなかった。そしてその傍らにはヘビ形の魔物がいるのであった。
次回は明日20時に投稿します。
明後日はちょっと厳しめです。




