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ーグリムノーデン支部にてー

次回は来週の月曜です。


「始めた時間は遅かったけど思ったよりいい狩りができたわね。

 今回の素材の換金は半々でもいい、ユーグ君?」


「えっ!?

 今回もいいんですか?

 一緒に回らせてもらって勉強にもなったので、今回は自分たちが狩った素材の分だけ大丈夫ですよ」

 

 ユーグたちと[熊の腕]はアイスボアを2組で分けて狩った後もしばらく狩りを続けていた。あの後アイスボアは出てこなかったため浅層の魔物を狩っていたが、それでも[熊の腕]とユーグたちは狩りを楽しむことができていた。それに加えユーグは冒険者の先輩たちである[熊の腕]から魔境の森や戦闘についてアドバイスやその戦い方を見て学ぶことができ満足していた。


「そうか、まぁユーグがそう言うならいいんだが」


「僕は自分が今回狩った分の稼ぎで十分ですから、意外と多く狩れましたし昨日の分もあるので」


「なら早く素材を換金しに行きましょう。

 もう混んでる時間だから急がないと」


「そうだな、じゃあ並びに行くか」


 すでにグリムノーデンまで戻って来ていたユーグたちと[熊の腕]は冒険者ギルドまで向かった。


 ・・・


「アイスボアの魔石と皮、それとアイアンランクの魔石複数とグレーウルフとマジックフォックスの皮が8枚と5枚で合計2260ドーラです。お確かめください」


「はい、大丈夫です。

 ありがとうございます」


 ユーグたちは冒険者ギルドの受付で素材の換金の代金を受け取ってた。


「それでナディネさん、まだ解析の結果は出てないんですか?」


 ユーグたちの隣では[熊の腕]のニルスがカウンターにおり、担当はナディネであった。


「そうですね、詳しい解析の結果はまだあがってはいないそうです。

 ただ魔道具自体はあまり凝った作りではないらしいので明日には冒険者ギルドにも報告が届くとは聞きました。

 それで[熊の腕]の皆さんはどうでしたか?

 今日も魔境の森に行ってたのでしょう」


「はい、そうですけど昨日とは違って森の中はいつもと変わらなかったと思いますよ。

 今日は中層の初めくらいにいたんでそれほど奥には行ってないっすけど魔物がいましたので」


「うーん、それならあの魔道具の影響は短い範囲なのかしら。

 どういうものかはわからないけどあなた達以外からはそういう報告もなかったんですよね。

 まぁそれも明日になればわかることだし、今日はいいですね。

 あっそれと一応この話は中層以上に行ける冒険者たちには話してあるから、何か他の冒険者に聞かれるかもしれないのでそのときはよろしくお願いします」


「わかりました。

 特に隠すようなことがなければ見たものは伝えます」


「ええ、大丈夫ですよ。

 もし他に魔道具があるとすれば数多くの冒険者に探してもらうことになるので」


「了解です」


 そう言うとニルスは他の[熊の腕]メンバーの元に戻った。


「はぁ、他の冒険者に話をしないとなんて面倒ね。

 落ち着いて飲んでられないじゃない」


「仕方ないだろ。

 あの魔道具があれ1個だけなんて考えられないんだから。

 ナディネさんも言ってたがどういうものかはわからんが、魔境の森に良い影響を与えるものではないのは確かなんだし」


「まぁそう言うなよロッテ。

 話を聞きに来た冒険者に1杯くらい酒を奢ってもらえればけっこう飲めるんじゃないか。

 それくらいのことなら冒険者たちもしてくれるだろ」


「まぁそうね」


「あのー、なんでニルスさんとナディネさんは皆に聞こえるように魔道具の話をしてたのですか?」


 ユーグたちは素材の換金を終えるとニルスより一足先に[熊の腕]のメンバーのとこに来ていた。そのときにニルスとナディネの会話が聞こえており、その皆に聞こえるような会話に疑問を持っていた。


「あれか?

 あれはまぁそうだな、情報の拡散みたいなことだ。

 詳しくは夜にでも話すよ、ここでは人が多すぎるしな」


 ユーグはあたりを見回すと続々と冒険者がカウンターに集まっているところだった。中にはユーグたちの会話に聞き耳を立てているものもいる。


「ここで話してしまうとロッテの酒代が足りなくなってしまうからな。

 食事の席で説明してやるよ」


「何よ、クラウスあんたは奢ってもらわないつもりなの?」


「いや、そういったことじゃなくてな」


「冗談よ、それはそうと早く帰りましょう。

 ここにいると冒険者たちに囲まれてしまうわよ」


 先ほどまではまだ魔道具の件を伝えられていない冒険者が多かったが、徐々に[熊の腕]と同じくらいかそれ以上のランクの冒険者たちが戻って来ていた。そういった冒険者はナディネにすでに話を聞いたのかチラチラと[熊の腕]を見ている。


「そうだな、じゃあ戻るか。

 んで今日の夜も『嵐豹』だな」


 ニルスは最後に冒険者たちに聞こえるようにそう言うと[熊の腕]の他のメンバーと共に冒険者ギルドを出た。ユーグたちもそれに連れて一緒に『嵐豹』まで戻るのであった。


 ・・・


「乾杯―!

 いやー今日はいい夜だな」


「本当、そうね。

 これで何回目の乾杯かしら」


「お前らはいいよな、この話だけで何回も奢ってもらえるんだからな。

 それで見つけた魔道具っていうのはどういうものだったんだ?」


 『嵐豹』の食堂で[熊の腕]とユーグたちは食事をしていた。その周りには何人もの冒険者がおり、酒を片手に[熊の腕]に話を聞いている。


「ああ、あの魔道具はだいたい木箱より2回りくらい小さいもので、装飾とかもない簡素な感じだったな。

 まぁ俺らも異常なアイスボアに会わなければ見つけることもできなかったと思うがな」


「草木がないとこや木の根元に無造作に置かれていたなら見つけることができるが、何かで隠されてたら難しいな」


「ああ、それにあの森にそんなもん置いてくるなんて目的がロクなもんじゃないだろ。

 商人たちが通るとこでもないんだ忘れ物なんてことは絶対ないだろうし」


 [熊の腕]から話を聞き冒険者たちは感想を言い合う。総じて魔道具の目的はわからないがプラスな影響を与えるものではないことと隠し立て置かれたら見つけることは困難だろうというものだった。


「そういやユーグは冒険者ギルドのニルスとナディネさんの会話のことを聞きたいんだったな」


「はい、クラウスさんそうです。

 何で聞こえるように話してたんですか?

 ニルスさんは情報の開示って言ってたんですが、イマイチどういうことかわからなくて」


「それはな冒険者ギルドには秘匿の義務があるからなんだ。

 冒険者を守るために冒険者の利益につながる情報は大っぴらに拡散することは禁じられていてな、だからニルスから話すことでなるべく今回の件を伝えようとしたんだ。

 まぁ今回の件は魔道具やあの粉の詳細がわかってそれがよくないものであったら冒険者ギルドでも開示することができるのだが、まだ詳細はわかってないからな。

 今皆が話しているようにあの魔道具はさほど大きくないからな、見つけるのには時間がかかるだろう。

 いざ冒険者ギルドから要請で探すことになって話すのは効率が悪いし面倒だから先に話すことにしたんだ」


 冒険者ギルドは冒険者の利益を守るためにその冒険者の情報は秘匿することが義務付けられている。もしそれを破ったら冒険者ギルド及び国から罰せられるものであった。今回の場合はそういった冒険者ギルド側のことと魔道具のことを考えニルスが冒険者ギルドに協力した形であった。


「そういうことだったんですね。

 他の冒険者に誰が見つけたのか知らせて話を拡散するために皆に聞こえるように話してたんですか。

 確かに少人数あの魔道具を魔境の森で探すのは骨が折れそうですもんね」


「だな。

 明日の調査次第だがもしかすると浅層域までの冒険者にもこの件は伝えられるかもしれんな」


「そうなんですか?」


「ああ、中層域以上に行ける冒険者はそこまで多くはないからな、この時点でこういった話をするってことは1番数が多い浅層域までの冒険者にも広めるつもりなんだろう。

 まぁそれも妥当な判断だな、あれが中層域にだけあるとは限らんし浅層域にも置かれている可能性も高いからな。

 とりわけユーグが疑問に思ったことは解決できたか?」


「はい、大丈夫です。

 ありがとうございました」


 こうして[熊の腕]とユーグたち、そして他の冒険者たちとの夜が更けていく。


 ・・・・・


「おや、もう魔道具の存在がバレたのか。

 いい駒を見つけたと思ったんだけど、想像以上に使えなかったみたいだな。

 これは早く動いた方がいいのかな」


 グリムノーデンのどこかで一人の男がそう独り言ちた。

次の投稿は来週の月曜20時です。

来週こそは平日5日間の投稿に戻せるように頑張ります。

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