ー支部長とー
「他に何かありますか?なければ今日はこれで終わりにしたいと思いますが」
話がひと段落つきナディネは今日は解散にしようと話す。
「俺たちはもう報告することはないんで終わっても大丈夫ですよ」
「僕もないので大丈夫です」
「わかりました。
あったぶんギルドマスターが戻ってきたらまた軽く話を聞きたいと仰ると思うので明日も顔を出してもらえるとありがたいです」
「了解です。
明日も依頼を受けて魔境の森に行こうと思ってたので朝また来ますね」
「それは僕もですか?」
「もちろん、ユーグ君もお願いします」
「わかりました」
「ではまた明日よろしくお願いしますね」
そう言うとナディネは立ち上がり応接室から出る。ユーグたちと[熊の腕]もそれに続き、そのまま1階へと降りる。
「もう受付も混んできている時間だな。
今日はこれで『嵐豹』に戻るか」
「そうだね、ちょっと早いかもだけど冒険者ギルドも混んできているから素材の売却はまた今度にしましょうか」
「あのー、僕が回収した分の素材はどうします?
宿に戻ったら分けますか?」
「あー、帰りの道中で倒したやつか。
確かグレーウルフ数体だったよな、それくらいならユーグに譲るよ、それでいいよな?」
「そうね、ユーグ君たちも倒すのに関わってたわけだし、私たちだけで倒したわけじゃないから全然良いわよ」
「俺も大丈夫だ」
カールとニーナもニルスたちに同意し、[熊の腕]は全員素材をユーグに渡すことを承諾した。
「ホントにいいですか?
ありがとうございます!」
「これくらいのことでそんなにお礼を言われるほどじゃないよ。
じゃあそろそろ『嵐豹』に戻るか」
「はい!」
そう言うと[熊の腕]とユーグたちは揃って冒険者ギルドを出るのであった。
・・・・・
「そう言えば1つ聞いておきたかったことがあるんですけどいいですか?」
ユーグたちは『嵐豹』に戻り、少し部屋で休憩を取ってから[熊の腕]と夕食の席を共にしていた。
「うん?なんだ?」
「はい、魔道具をナディネさんに渡した時ナディネさんが今ならまだ戦利品にできるって言っていたのはどういう意味なのかなと思って」
「ああ、そのことか。
あれはな、冒険者に限らず基本的には街の外での拾得物はそれを拾った者に所有が認められるんだ。
だからあのとき報告だけしてあの魔道具を俺たちの所有物にすることもできたんだよ。
それをナディネさんは改めて確認した感じだな」
街の外での拾得物は基本的に拾った者にその所有が認められる。これは街道でも同じだが全ての物にその所有が認められるわけではなかった。明らかに国のものとわかるもの例えば軍や貴族の紋章等が入った武具などの軍用品に関してはそれを使用しているのが分かった時点で罪に問われることもある。こういった物に関してはそれを拾い所定の場所に届け出れば後に所有者もしくはその組織から謝礼金が渡される。今回の場合はそういったこともなかったために[熊の腕]が見つけた魔道具はすんなりとその所有が[熊の腕]に認められ、彼らはそれを何かの証拠として冒険者ギルドに提出したのであった。
「そうなんですね。
じゃあ街の中だとどうなるんですか?」
「それはね、その物の所有を証明できるものを持ってたら所有が認められるわね。
例えば多いので言うと指輪とかは名前を彫っていたりするから証明しやすいわね」
「なるほどー」
「まぁ冒険者には街中だとそんなに関係ないよな、武器とか防具を落とすこともない常に身に着けてるものだしな。
ある程度高いものを買えるようになったら気をつけないといけないけど、ユーグには空間魔法があるからそんなに関係ないし」
低級ランクが身の丈に合わない高級な装備品を持っていると場合によっては盗まれる。ひどい場合には活動中に装備品目当てに殺されることもあり、このことだけが要因ではないが冒険者は装備品の管理に力を入れることが多い。
「確かにそうですね」
「もし街の中で何か見つけたら冒険者ギルドでもいいし、衛兵の詰め所でも対応してくれるからそこに持ってくといいわよ」
「はい、わかりました!」
「おい、これも美味しいから食べてみろよ!」
「ぐるぅ!」
こうしてユーグたちの夜が更けていくのであった。
・・・・・
「おはようございます、ナディネさん。
支部長への報告の件ってどうなりました?」
翌朝、ユーグたちと[熊の腕]は互いに泊っている宿『嵐豹』で合流し、冒険者ギルドに来ていた。すでに多くの冒険者でごった返していたがカウンターにいるナディネの列に並びその順番が回って来ていたところであった。
「はい、おはようございます、[熊の腕]の皆さん。
ユーグさんたちもおはようございます」
「おはようございます!」
「その件ですがやはり支部長がお話を聞きたいみたいですので、すぐに案内しますのでよろしくお願いします」
「わかりました」
ナディネはそう言うとカウンターの奥で仕事をしていた職員を呼び交代する。そして昨日と同様にユーグたちと[熊の腕]を2階へと案内する。
コンコン
ナディネは2階に上がると支部長室の前に進みドアをノックした。
「支部長、ナディネです。
[熊の腕]の皆さんとユーグさんたちを連れてきました」
「おう、わかった。
中に入って大丈夫じゃよ」
扉を開けて[熊の腕]とユーグたちを中に案内しナディネはそのままお茶の準備をし始める。ユーグたちと[熊の腕]はハンスが座っている机の反対側にあるソファーに座る。
「昨日のことは聞いたぞ。
提出してもらった魔道具はそのまま軍に渡し調査してもらうように頼んでおる。
それで2回目で悪いのじゃが見つけたときのことを話してもらえるか?」
「もちろんです。
そうですね……」
ニルスは昨日と同様に魔道具を見つけたときの話をした。
「ふむ、そうか。
魔道具も重要じゃがその中に入っている粉も同じく重要そうじゃな。
アイスボアが集っていた粉か……」
「俺たちから見たらその粉に集まってように見えてただけなので、実際はその粉に集まっていたかは定かではないのですが」
「いや、たぶんその考えは正しいように思えるのじゃ。
あの森ではアイスボアを狂わせるようなものは生えておらんしのう。
その魔道具もあって外部からもたらされたものだと思うのじゃ。
しかしわしも長いこと生きてるがその粉のような存在も聞いたこともない。
ナディネはどうじゃ?」
「わたしも支部長と同じで聞いたこともないですね。
もしかするとエルフの長老なら何か知ってるかもしれないので里の方に問い合わせてみますか?」
「そうじゃのう。
軍の方でも聞いてるかもしれんが冒険者ギルドでも今回の場合はそうしたほうがいいかもしれん」
「わかりました。
わたしの方でも聞いてみます」
「あのー、ナディネさんってエルフの方なんですか?」
話の最中にユーグはナディネに今まで気にかけていたことを問いかける。
「ええ、そうですよ。
あれ?もしかしてユーグ君は知らなかったのですか?」
「はい、なんとなくエルフに似ているなとは思っていたんですが、今まで見たことなかったのでわかりませんでした。
獣人の方も国境の砦や町で見るまで本ででしか見たことありませんでしたので」
「そういえば隣国は人族至上主義を掲げておったからその他の人はおらんくなったのじゃったな。
もしくは奴隷に落とされたかしたのか、普通では見かけないと聞いたのう。
ふむ、それならわしがドワーフというのもわからなかったのじゃないか?」
「やっぱりハンスさんはドワーフだったんですか!?
ナディネさんの時と同じでなんとなくそうかなとは思っていましたけど知らなかったです」
来週はいつも通りの平日5日間の投稿できるように頑張ります!




