割れた仮面 人物紹介
【主人公たち】
来島佳凛
出雲の剣術道場の跡取りで、ルンシアの近衛騎士。一瞬先の動きが「影」として見える目でヴァンパイアを次々に斬り「陽炎」と呼ばれたが、殿下から賜った剣をフェルミナに奪われた。王都決戦の塔の上で仮面を割ってその下に斂の顔を見ると、持ち場も誓いも捨てて彼を追い、ただ一人東へ向かった。ルンシアでは戦死と記されている。
フィン・レーンベル
レーンベル村出身の近衛騎士で、背はいつしか佳凛を追い越した。陣中で西の侯爵に術の結び方を教わり、蒼い炎や岩、風、雷を撃ち分けるまでになったが、髪の先が結晶になり始めて撃つことを恐れるようになる。王都決戦の夜、空き地で槍を教えてくれた男から救済の細剣を託されて水の都の兵を追い落とし、民に新しい勇者と呼ばれた。佳凛の名を刻んだ石碑の前に、毎朝立ち続けている。
リエル
救済の女神の踊り子と呼ばれる、目の見えないエルフの娘で、佳凛の親友。教会の命で前線に出され、傷を癒やす歌で兵を何度でも立ち上がらせ、金の弦を張った二振りの剣「上弦と下弦の月」で戦った。王都決戦の塔の上で殿下を背に庇い、仮面の男の斧槍に胸を貫かれて死去。その瞬間、外してはならない黒い首飾りが弾けた。
斂
佳凛の幼なじみで恋人で、三年前に日本で姿を消した。王都決戦に白い仮面で現れ、斧槍の一突きで帝国の大術をほどいたのち、リエルとエルデリックを討ち、侯爵に深手を負わせた。仮面を割った佳凛に名を呼ばれると「ごめん」とだけ告げて去り、奪った細剣はフィンに託した。殿下と侯爵の言葉から、九十年前の黒髪の勇者であり、王都の空き地でフィンに槍を教えた男でもあったことが明らかになる。
モモ
「〜っす」と話す、赤い髪に丸い耳の獣人の少女。前巻で妹ナナをエドガーの館で失い、人を売り買いしない商人を目指して東のドワーフ領へ向かう隊商に加わった。あの館の地下で見たものは、佳凛が帝国との戦を正しいと信じる支えになった。
【ルンシア王国】
ジークハルト・アルセリア・ルンシア
ルンシアの老王。包囲のさなか佳凛を呼んで「エルデリックを頼む」と頼んだ。王子と踊り子を並べて葬らせ、帝国との和議に署名してシルフェリオを割譲した。勇者の名ばかりを呼ぶ民の声に、王家の時代の終わりを感じている。
エルデリック・アルセリア・ルンシア
近衛騎士団を束ねるルンシアの王子で、九十年前には黒髪の勇者の隣で戦ったエルフ。教会から借りた救済の細剣を佩いて前線の指揮を執ったが、劣勢の中でできるのは書類を揃えることだけになっていった。王都決戦の塔の上でリエルに庇われ、仮面の男に斬られて死去。最期にリエルの名を呼び、その手に触れたまま逝った。
オズヴァルド・シルフェリオ・ルンシア
西の侯爵で、ただ一人「大結晶使い」の称号を持つエルフ。帝国の示した取引の書簡を否定も肯定もせず、魔族を根絶やしにせよと説いて開戦へ導いた。魔族の亡骸の結晶を砕く連奏結晶術でフェルミナを退け、フィンには術の結び方と恐れの数え方を教えた。王都決戦で仮面の男に斬られて深手を負い、半ば以上が結晶となった髪のまま、割譲された都を取り戻すと誓う。
バルドール・ヴァルムハイム
ルンシアの東、火山の麓のヴァルムハイムを治めるドワーフの公爵。赤茶色の髭を三つ編みにし、自ら斧槍を振るって銀の鎧の重装兵を率い、左腕を折っても前線に立ち続けた。佳凛の料理を好み、戦が終わったら彼女の手に合う一振りを打つと約束していた。王都を守り抜いたのち、自らの領地へ帰った。
【フェリシア共和国】
ヴォルグ
フェリシア共和国の外務大臣を務める、痩せた下級魔族の男。前巻の晩餐の夜、リエルを餌にエドガーを館に釘付けにし、その隙に隠し棚の書簡を盗ませていた。帝国の進軍の足場を整え、水の都の船団を港から通した。三日月を咥えた蛇の封蝋で、宛名の代わりに金糸の旗の印を描いた封書をどこかへ送っている。
【エテルナ帝国】
レヴィン・エテルノス
エテルナ帝国の三代目の皇帝で、十四、五の少年に見えるリッチ。西の侯爵の取引を大義にルンシアへ宣戦し、侮る臣下のヴァイスと姉フェルミナを同じ戦場に置いて互いを縛らせた。勝利ののち、割譲させたシルフェリオをヴァイスに与えて帝都から遠ざけた。姉の前でだけは、ただの弟の顔になる。
フェルミナ・エテルノス
皇帝の姉で、帝国に三人いるとされるリッチの一人。自分を「オレ」と呼ぶ豪快な女で、星空のような小盾から大槌や大剣を次々に取り出して戦う。九十年前、ルンシアの王都の目前で黒髪の勇者に退けられた。同じ匂いがするという佳凛から剣を奪って「取りに来い」と告げ、王都決戦では仮面の男を追って戦場を離れたが、佳凛はまだ生きていると信じている。
バルタザール
学院の頃から皇帝レヴィンに仕える、黄金の髪のヴァンパイア。フェリシア閥の貴族で、皇帝の命によりヴォルグにエドガーの身辺を探らせていた。和議の使者としてルンシアを訪れ、王に署名を求めた。戦のあいだ一度も祝えなかった娘リーゼの誕生日を、今年こそ祝おうと帰路についた。
ヴァイス・アクアレイス
水の都アクアレイスの主で、皇帝を「若造」と侮る有力なヴァンパイア。黒い帆の船団でルンシアの沿岸の村々を焼き、水を凍らせた刃を操る。フェルミナが去ったあと王都になだれ込んだが、細剣を得たフィンに頬を裂かれて退いた。和議により、割譲されたシルフェリオを預けられた。
エドガー・メルヴェイン
前巻でフェリシアの館の晩餐の夜、佳凛に討たれた帝国の査察官。その死と、館の隠し棚から見つかった西の侯爵の書簡が、帝国の宣戦の口実となった。主ヴァイスからは、献上の品をくすねる卑しい犬と呼ばれていた。




