木漏れ日の国 人物紹介
【主人公たち】
来島佳凛
出雲の剣術道場の跡取りで、十八歳の春にルンシアの森へ落ちてきた少女。相手の動きを読む剣と料理の腕は群を抜くが、結晶術はまったく使えない。やがて相手の少し先の動きが「影」として見えるようになり、ヴァンパイアのエドガーを討って近衛騎士に叙された。
フィン
レーンベル村で佳凛を見つけた弓の得意な若者。両親を早くに亡くし、村長バルトに育てられた。形見の梟のペンダントを胸に佳凛と王都へ上り、剣と炎の結晶術を併せて使う騎士に成長して近衛に叙された。佳凛に好意を寄せているが、本人には気づかれていない。
リエル
王都の中央教会で大切にされている、目の見えないエルフの娘。子供のように小柄だが佳凛と同い年で、市場で知り合って親友となる。外してはならない黒い革のチョーカーを着け、その歌は傷を癒やす。エドガーからは「救済の女神の踊り子」と呼ばれたが、自分のことは語りたがらない。
モモ
「〜っす」と話す、赤い髪に丸い耳の獣人の少女。人攫いに連れ去られた血の繋がらない妹ナナを追う途中で佳凛たちに救われ、フェリシアまで同行した。妹の死を経て、人を売り買いしない商人になると決め、東のドワーフ領へ向かう隊商に加わった。
【日本】
實条斂
佳凛の同門で恋人。早くに両親を亡くし、遠縁の来島道場に引き取られて槍を振らされていた。へらへらと口がうまく、家事が得意。三年前の春、財布も携帯電話も部屋に残したまま姿を消し、佳凛はその後も毎日彼のアパートに通い続けていた。
管理人の老人
斂の住んでいたアパートの管理人。背筋の伸びた長身の老人で、佳凛にも動きが読めない。佳凛がこの世界へ落ちる直前に「君、やりたい事はあるのか」と問い、答えられない彼女に「探すといい」とだけ告げた。
【レーンベル村とその周辺】
バルト
レーンベル村の村長で、フィンの父の親友としてフィンを育てた老人。行き場のない佳凛を快く家に置いた。盗賊の襲撃の際、子供たちを室に隠して古い剣で立ちはだかり、梟のペンダントをフィンに託して死去。最期に父のことを言いかけて、口をつぐんだ。
籠手の男
レーンベル村を焼いた盗賊の頭。紋章を削り取った籠手から、予備動作なしに火の玉を放つ。佳凛に手首を砕かれて逃げ去った。逃げる際に落とした淡い紅の石は、佳凛が今も持ち歩いている。
【ルンシア王国】
ジークハルト・アルセリア・ルンシア
ルンシアの老王。老いてなお背筋は伸び、鋭い眼光で近衛騎士たちを引き締める。佳凛の叙勲の際、「黒い髪か」と唇を動かしたように見えた。
エルデリック・アルセリア・ルンシア
ルンシアの王子。近衛騎士団を束ね、政務の大半を取り仕切るエルフ。女性が苦手で佳凛の顔をまともに見ないが、御前試合で彼女の潔白を証し、近衛に推挙してドワーフに打たせた剣を与えた。人身売買の証拠を預かり、西の地のことは自ら片をつけると語る。
オズヴァルド・シルフェリオ・ルンシア
西の都シルフェリオを治める侯爵。三百歳を超えるエルフで、毛先が結晶となった白髪を持つ。連奏結晶術を生み出し「大結晶使い」の称号を許されている。アーロンを預かったが、獄中で病死したと告げた。佳凛はその底知れなさに疑いを抱く。
アーロン
シルフェリオを拠点とする西海岸最大の商家の若き当主で、美しいエルフの青年。港の地下で人を檻に入れ、結晶となった魔族の亡骸と交換していた。佳凛たちに捕らえられたが不敵な笑みを崩さず、獄中で死去したと伝えられた。
槍の男
王都の外れでフィンに夜な夜な槍の稽古をつけていた、フードを被った旅の男。名乗らず、結晶術は使えないが、見るだけで術の綻びを言い当てる。冬至祭の夜、その歩き方に佳凛は見覚えを感じて後を追ったが見失った。「海の見える街にいる」と言い残して姿を消した。
九十年前の勇者
九十年ほど前に王城にいたと伝わる勇者。黒髪の勇者とも呼ばれる。王都に「カツ」を広めたといわれ、のちに国を出て行方知れずになった。佳凛は日本から来た者ではないかと考えている。
【フェリシア共和国】
ヴォルグ
フェリシア共和国の外務大臣を務める、痩せた下級魔族の男。穏やかで丁寧な物腰だが、三日月を咥えた蛇の印章でアーロンやエドガーと結ばれ、人の売買に深く関わっていた。エドガーが討たれると書き置きを残して姿を消し、罪をエドガーひとりに負わせた。
ナナ
モモが幼い頃に道で拾って共に暮らしてきた、ヒューマンの少女。十四歳。人攫いに連れ去られてフェリシアのメルヴェイン卿の館へ送られ、血を吸い尽くされて死去した。姉から贈られた赤い髪紐を最後まで結んでいた。
【エテルナ帝国】
エドガー・メルヴェイン
エテルナ帝国からフェリシアに遣わされた査察官のヴァンパイア。人族を「品」として扱い、ナナの命を奪った。晩餐に眠り草を盛ってリエルを主ヴァイスへの献上品にしようとしたが、佳凛に首を断たれて死去した。
ヴァイス
「水の都の御方」と呼ばれる帝国の有力者で、エドガーの主。人身売買の糸の先で「若く質の良い品」を献上されていた。皇帝の勅を平気で握り潰すといわれる。
エテルナ帝国の皇帝
十四、五歳の少年に見える、瑠璃色の髪と金の瞳を持つ帝国の主。幼くして帝位を継ぎ、地方の有力者に侮られている。西の侯爵の取引の記録を手にし、同胞の亡骸を辱めた人族を討つという大義を得ようとしている。
バルタザール
皇帝に仕える黄金の髪のヴァンパイア。フェリシアの隣の土地の生まれで、ヴォルグを毛嫌いしている。皇帝の思惑に溜息をつきながらも従う。来月に娘の誕生日を控えている。




