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蛇の様な男

一向を出迎えた男、九条くじょう恭弥きょうやは張り付けたような笑顔のまま、ゆっくりと口を開いた。

「奏ちゃんも久しぶりやねぇ」

蛇のように絡みつくような声が、一同を迎えた。

御堂は一瞬、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、わずかに眉を寄せた。

明らかにこの男が苦手だと態度で示しながらも、優雅さを保ったまま淡々と返す。

「ええ、お久しぶりですわ、九条さん」

御堂のような上品な京都訛りとは違う、わざとらしいはっきりとした関西弁が、男の胡散臭さを一層増していた。


藤堂は九条の姿を見てハッとしたように顔を上げ、慌てて丁寧に頭を下げた。

「九条さん、お疲れ様です。

わざわざお出迎えいただいてありがとうございます……!」

目上の人間が先に出迎えてくれているのに挨拶が遅れてしまったことに、藤堂は内心で強く自省しながら、いつも以上に丁寧に腰を折った。

しかし九条は気にした様子もなく、片手を軽く振って答えた。

「気にせんでええよ。

暇してたんや」

その声は完全にどうでもよさそうで、藤堂の丁寧な挨拶との温度差があまりにも大きかった。


九条は一同を案内するように歩き出した。

その歩き方は長身をゆらりと揺らし、まるで獲物を狙う蛇が這うような、不気味に滑らかな動きだった。

その後を凛が追い、藤堂、御堂、白峰もそれに倣う。

藤堂は歩きながら、九条の紹介をした。

「九条恭弥さんです。京都本部所属で、本部の中でも指折りの実力者として知られる凄腕の妖封士です。

これまで数々の大型封印事件を解決に導いてこられ、今回の討伐班の班長をお務めになります」

九条はそれを聞き、笑顔のまま軽く手を振って答えた。

「あんま畏まらんといて。

ボクみたいなもんにそこまで大げさな紹介されても困るわ。

大したことちゃうねんから」


九条は続けて、御堂の方に視線を向け、ねっとりと笑みを深めた。

眼の端が細くなり、まるで相手の傷を優しくなぞるような、底意地の悪い光が浮かんでいた。

「そういえば奏ちゃん、まだ牛鬼だけで頑張ってるんやって?

北でも大層活躍したんやって?」

その言葉を聞いた瞬間、御堂の表情がわずかに苦くなった。

北海道での白虎戦で早々に退場させられてしまった記憶が蘇り、胸の奥で劣等感がじわりと広がっていく。

九条はさらに追い打ちをかけるように、楽しげに、しかしどこか上から目線で続けた。

「まあ、奏ちゃんみたいな上品なお嬢さんが戦場に立つんは、荷が重いと思うのにようやっとるわ。

えらいえらい」

その「褒め言葉」は、表面上はねぎらいのように聞こえるが、口調の端々に含まれる嘲りと、ねっとりとした視線が御堂の胸を抉った。


答えられずにいる御堂の苦しげな横顔を見て、白峰は居ても立ってもいられなくなった。

胸の奥で熱いものが込み上げ、思わず九条の前に飛び出した。

「御堂さんを悪く言わないでください!」

その瞬間、険悪なムードを感じ取った凛が慌ててオロオロし始めた。

小さな体を縮こまらせ、大きな瞳をきょろきょろさせながら、

「え、えっと……あの……」と小さな声で何かを言おうとして、適切な言葉が見つからない様だった。

九条は笑顔のまま、ゆっくりと白峰に向き直った。

口元は笑っているのに、目は全く笑っていない。

「澪ちゃん……やったっけ……?

なんや、優しい目ぇしとるねぇ……

つい虐めたくなってまうわぁ」

開いているかどうかわからなかった男の目は、カッと大きく開き、蛇のように鋭く冷たい眼光で白峰を捉えた。

その視線はまるで獲物を値踏みする蛇そのもので、底知れない不気味さと粘着質な好奇心を湛えていた。

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