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邪魔なんですよ

玉が不気味な光を発し、数体の雪女が無造作に吸い込まれていく。

次の瞬間、玉から鋭い氷の槍が一直線に飛んできた。

白峰は目を大きく見開いた。

「え……雪女の能力……!?」

黒崎が即座に動き、白峰を庇うように前に出た。

「危ねぇ!」

氷の槍が黒崎の肩をかすめ、雪の中に深く突き刺さる。

黒崎は低く、驚きと怒りを滲ませて吐き捨てた。

「雪女の力……自分のものにしやがった……?」

御堂も驚きを隠せない様子で呟いた。

「まさか……雪女の力を操っているのですか……?」


雪華は扇子を強く握りしめ、複雑な表情を浮かべた。

芦屋影人は更に攻撃を続けた。先ほどよりも強大な氷の槍が連続して飛んでくる。

それを雪華はすかさず、右手を振り上げて氷の壁を展開した。

ガキィィンッ!

強大な攻撃が氷の壁に激突し、大きな音を立てて砕け散る。

しかし芦屋は止まらない。玉を握ったまま、低く呟きながら次の攻撃を放つ。

今度は無数の氷の針が雨のように降り注ぎ、地面を抉りながら一行を狙う。

雪華は歯を食いしばりながら左手を振り、氷の壁をさらに強化しつつ、右手で鋭い氷の槍を生成して反撃した。

「この玉……本当に忌々しいわね!」

芦屋影人は丁寧な口調で、しかしどこか愉しげに言った。

「ふふ……随分と熱くなってらっしゃる。

氷川雪華殿、お噂は兼ねがね聞いておりますよ」

黒崎がデッドノックを構えながら、低く唸った。

「ただの人間が雪女の力を操ってる……

気持ち悪い野郎だ」

御堂も呪符を握りしめ、冷たい視線を向けた。

「本当に……共存など、口だけですわね」

白峰は真田丸8式を握り、震える声で言った。

「どうして……妖怪をこんな風に利用するんですか!?」

芦屋は影に隠れた顔で、再び丁寧に、しかし底冷えする笑みを浮かべて答えた。

「利用? 違いますよ。

私はただ……彼らに『役割』を与えているだけです。

妖怪は人間にそう願われて生まれた存在。

ならば、人間のために力を貸すのが本分でしょう?」

その言葉の直後、芦屋は再び激昂した。

「だから邪魔なんですよ! あなた方のような、余計な正義感の持ち主が!」


その言葉に白峰は怒りを隠せなかった。

敵とはいえ、心を持つ妖怪が苦しみながら消えていく姿。

この男がそれを何とも思っていない様子に、胸の奥から怒りが湧き上がった。

白峰は怒りをぶつけるように、先陣を切って飛び出した。

「もう……許せない!」

その怒りに呼応するように、白峰の体の中から強い気が溢れ出てくるのを感じた。

真田丸8式の刀身が純白の光を強く放ち、白峰は渾身の力を込めて振り下ろした。

しかし芦屋は玉を握ったまま、悠然と左手を掲げた。

玉の力で生成された巨大な氷柱が瞬時に出現し、白峰の強烈な一撃を真正面から受け止めた。

ガキィィィンッ!!

衝撃の音が境内に響き渡り、氷柱にヒビが入るが、芦屋は微動だにしない。

芦屋影人はニヤリと笑い、挑発するように言った。

「可哀想に……あなたが攻撃してくるから、こうなるんですよ」

瞬間、玉が不気味に脈動し、紫色の光が強くなった。

先ほど吸い込まれていた雪女の一体が、無残な姿で排出された。

白い体は力尽き、鱗は所々剥がれ落ち、青白い体液が雪の上に滴り落ちている。

その雪女は地面に崩れ落ち、苦痛に満ちた弱々しい鳴き声を上げながら、ゆっくりと光の粒子へと崩れていく。

まるで命を絞り取られた後の抜け殻のように、儚く、惨めで、無残だった。

白峰はその光景を目の当たりにし、息が止まった。

「……っ……!」

胸の奥が激しく締め付けられ、吐き気のような衝撃が込み上げる。

紅葉や紫、きみどりの優しい記憶と、今、目の前で無残に使い捨てられる雪女の姿が、重くぶつかり合った。

白峰は怒りをぶつけるように攻撃を続けながら叫んだ。

「何故、こんな事をするんですか!?」

芦屋影人は冷たい声で答えた。

「我々は妖怪との共存を目指すのです。

その為に、あなた達は目障りなんですよ」

そう言いながら、芦屋は玉を強く握りしめた。

瞬間、玉が激しく脈動し、取り込んだ雪女の最後の力を一気に解放した。

ズドォォォンッ!!

玉から放たれたのは、圧倒的な冷気を帯びた巨大な氷の奔流だった。

雪女の本質である「絶対零度の冷気」が凝縮され、氷の槍や氷柱が無数に絡み合った、まるで雪の龍のような巨大な攻撃が一直線に白峰に向かって襲いかかる。

空気が凍りつき、地面を這うように進む奔流は触れた雪さえ瞬時に固め、一切の熱を奪い取る。

その威力は、先ほどまでの攻撃とは比べ物にならない——雪女の命そのものを燃料にした、フルパワーの絶望的な一撃だった。

白峰は目を大きく見開き、息を飲んだ。

(……これ……全部……雪女さんの力……!?)

他の面々も戦線に加わろうとしたが、時既に遅かった。

その瞬間、部下の一人が芦屋に叫んだ。


「成功です、芦屋様! 後退しましょう!」

芦屋影人は満足げに笑い、玉を握ったまま素早く後退を始めた。

突如、境内の霊的濃度が爆発的に膨れ上がった。

空気が激しく震え、吹雪が一瞬で渦を巻くような勢いになる。

地面が低く唸り、雪の結晶が異常な速度で舞い上がり、境内全体が白い光に包まれていく。

雪女の本霊が、ついに顕現しようとしていた。

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