京都から来たエリートさん
「新入り……白峰澪、でしたね?」
その言葉に、白峰は思わず固まった。
長めの黒髪を一つにまとめ、ダークグレーのスーツを完璧に着こなした美しい女性——御堂 奏は、軽く腕を組んだまま、わずかに片眉を上げてこちらを見ていた。
京都訛りの入った、品の良いけれど少しツンとした声。
その佇まいは、特対室の地下オフィスにいながら、まるで別の世界から来たような洗練された気品に満ちていた。
白峰は慌てて頭を下げた。
「は、はじめまして……白峰澪です。よろしくお願いします!」
室長の相楽剛はコーヒーをすすりながら、いつもの厳つい顔で続けた。
「こちらは京都本部から出向中のエリート、御堂 奏だ。
当面、黒崎さんの代わりに御堂とコンビを組んでもらう」
その紹介を聞いた瞬間、御堂 奏は小さく顎を上げ、誇らしげな顔をした。
自信に満ちた、どこか得意げな微笑みが唇に浮かんでいる。
白峰は内心で少し圧倒された。
(……え、こんな綺麗な人がパートナー……?)
「明日から早速、任務だ」
室長は淡々と任務の説明に入った。
「渋谷区で通り魔の被害情報が相次いでる。
目撃情報によると、被害者は皆一様に『何か大きなものに押された』と供述しているそうだ。
負の感情が溜まりに溜まって、自然発生した妖怪の仕業が濃厚だ。
3日後の新月の晩に完全顕現すると予想されてる。
まずは現地調査に行って、発生源を特定しろ。
無駄な被害を出すなよ」
室長はデスクに置かれた資料を無造作に白峰の方へ滑らせた。
白峰は資料を受け取りながら、内心で小さく動揺した。
(黒崎さんがまだ入院中なのに……いきなりエリートさんとコンビ……?
しかも明日からって……急すぎる……)
御堂 奏は優雅に微笑みながら、静かに言った。
「では、明日からよろしくお願いします。
スマートに済ませたいので、よろしくね、澪ちゃん」
その笑顔は美しく、品のある京都訛りが柔らかく響いた。
しかし、どこか余裕たっぷりで、「この程度の事件、任せておきなさい」と言われているような自信が溢れている。
同時に、彼女の視線には新入りの白峰をじっと見つめる、わずかな案じるような色が混じっていた。
まるで「この子、大丈夫かしら……」と内心で測っているかのようだった。
白峰は思わず言葉に詰まりながら、小さく頷いた。
(……この人、すごい存在感……
京都から来たエリートさんなんだ……
私なんかじゃ、足手まといにならないかな……
でも、なんだか少し心配してくれている……ような気がする)
京都から来た女性は、美しくスマートで自信満々なエリートさんだった。




