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第36話:『残響の殺意』

     1.(起)

ヴァレット 「彼は……あの後、自殺したんだ。誰って?……そう、キヨシに利き手を吹き飛ばされた彼のことだ」


ハウスキーパー 「ヴァレット……あなた、一体どうしちゃったの?……誰のこと、言ってるのよ!」


【ヴァレットはハウスキーパーを一瞥すると、アランに視線を移した。】


ヴァレット 「….…そして彼の夢は売れる画家になることだったんです。マフィアのくせして笑っちゃいますよね?……でも……彼は私の全てだったんですよ」


アラン 「お前……まさか……!?……そんなことでキヨシを……」


     2.(承)

【うつ伏せて倒れ込んだキヨシの前で、膝まずいて彼を見下ろすハル。】


ハル 「キ、キヨシ……?」


【焦点の定まらない目で何度も呼びかけるハル。返事はない。】


ハル 「ねえ、キヨシ.....起きてよ......嘘でしょ......?」


【そしてーーハルは静かに立ち上がった。さらに……その瞳は光を失ったガラス玉へと変貌していく……。一滴だけ……キヨシの血が彼女の頬に飛んでいた。】


香織 「……ヒック、ヒック……ハルお姉ちゃん……?」


【必死にしゃくりながらも、溢れ出る涙を止めようとしていた香織が、ハルの変化を敏感に察知する。】


     3.(転)

【ハルが無機質で冷徹な視線をヴァレットに向けた。】


ヴァレット 「おっと!.……ハル、お前を死に追いやるのは私ではない。......彼だ」


【ヴァレットが顎で示した先から、村人に変装した将校が姿を現す。】


将校 「よう!あの時は世話になったなぁ......」


【そこには、半年前の密輸船でハルが対峙した男ーーキヨシの後輩軍人が立っていた。】


     4.(結)

ハル 「邪魔だ……お前には用はない」


将校 「……女……発言には気をつけろよ?……調子に乗るなと言った筈だ……」


バトラー 「ハル……諦めなさい。私たちは、ただ結末の決まっている未来をスマートに手に入れたいだけなんだ。足掻くだけ時間の無駄です」


将校 「その通りだ。お前ら全員、ここで死ぬシナリオになっている。……その結果、俺たちはそれぞれの理想の未来を手にすることができるってわけさ」


ハル 「……お前は……やはり、あの時、殺すべきだった.......」


【以前の優しさは微塵もない、絶対的な「静」のオーラを纏ったハル。外から漏れる一筋の光がその横顔を深い暗闇に浮かび上がらせた。】


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