第34話:『静止した絶望』
1.(起)
【地下通路。先導していたハウスキーパーが立ち止まる。目の前には、経年劣化によって無残に崩落し、天井までを埋め尽くした土砂の壁。】
ハウスキーパー 「そんな……。嘘でしょう……」
アラン 「大丈夫だ。少し戻ろう。まだ退路が絶たれたわけではない」
香織 「お父様、どこへ行くの……?」
アラン 「最終手段だ。実は地下施設へ繋がる裏ルートがある。そこから外に出よう」
2.(承)
【壁に隠されていた鍵穴に、アランは首にかけたネックレスの先端――『地下施設の鍵』を引き抜き、解錠した。】
ハウスキーパー 「こ、これは一体….!?」
【中に入った一行を待っていたのは、地上のお屋敷からは想像もつかない、150坪にも及ぶ巨大なレンガ造りの地下施設だった。】
アラン 「できれば、ここには入りたくはなかった」
【アランのセリフに、キヨシとハルが視線を交わす。二人の眉間には深い皺が寄り、彼の背中を見る目には、隠しきれない不信感が宿っていた。】
3.(転)
キヨシ 「裏口はどのあたりに続いているのでしょうか?」
アラン 「屋敷の外に繋がる農道だ。実はバトラーに、夜が更けたら馬車を裏口に回すように手配してある」
【アランの言葉に一同の表情が明るくなる。さらに歩を進めると、空間の右隅にうっすらと、磨りガラスがはめ込まれた扉が現れた。】
アラン 「ひとまず、この部屋に入ろう」
【アランは扉をスライドさせた。彼を先頭に、一同は順に中へ入っていく。】
ハル 「お嬢様、もう少しの辛抱です。もうすぐ、お外へ出られますよ」
ハウスキーパー 「これでようやく一息つけますね」
4.(結)
【アランは部屋の隅にある横長のソファーに深く腰を沈めた。「責任」という名の巨大な荷物をようやく下ろしたかのような、長く、深い溜息が地下の静寂に溶けていく。】
アラン
「(……すまない、みんな。本当によくついてきてくれた)」
【その時、隙間から吹き込んだ一筋の風と共に、鉄製の引戸が耳を劈くような音を立てて開き始める。隙間から部屋に差し込む強烈な逆光。】
香織 「えっ!……なに!?」
【救いか、絶望か……!逆光の中に浮かび上がる、予想だにしない『者たち』のシルエットを前に、香織は歓喜と恐怖の混ざった声を漏らした。】




