第27話:『亡霊が抱く猛毒』
1. (起)
【書斎を埋める、選ばれし6人の静かな吐息。】
アラン 「バトラー、良い人選だ。……ハル、香織、ハウスキーパー、そしてヴァレット。キヨシを含めたこの6人こそ、私が最も信頼し、この難局を共に乗り越えたいと願う『ファミリー』だ」
バトラー 「……身に余る光栄にございます、旦那様」
【アランや屋敷の面々に見守られ、キヨシが意を決して語り出す。】
キヨシ 「……私が軍から消され、追われている本当の理由。それは、私が偶然手にしてしまった『紙切れ』にあります」
アラン 「紙切れ……? 単なる汚職の証拠ではなさそうだな」
キヨシ 「はい。それは……国家そのものを解体しうる、血塗られた計画書でした」
2. (承)
【キヨシの回想。深夜の司令部、金庫から奪い出した数枚の書類と内容が重なる。】
キヨシ 「ワシントン条約を無視した毒ガスの生成法。そして、軍内部でクーデターを企てる将校たちの署名……。その頂点には、現政府の超大物の名もありました」
ハル 「……新政府の、独裁計画……」
キヨシ 「これを知った者は生かしておけない。私はその夜、記録を抹消され殺される前に闇へと飛び込んだのです」
3. (転)
アラン 「その書類はどこに?」
【キヨシは片方の手の人差し指で、自身の側頭部に当てて「ここです」と言った。】
ヴァレット 「キヨシ、それでは明確な情報とは言えないぞ」
【今まで無言だったヴァレットが、少し苛立ったように指摘をしてきた。】
キヨシ 「そうではありません。ある場所に隠してあるんです。私はその隠し場所を暗号化して記憶しています。この記憶こそがその機密への唯一の道標です。これがある限り、彼らは私には手が出せないと思ってたのですが……」
アラン 「なるほど。……となれば、お前の握る機密など、どうにでも誤魔化せるようになったか、あるいはすでに,書類の在処をつかんだか……だな」
4. (結)
バトラー 「旦那様。まずはキヨシの掴んだ『機密事項』とやらの信憑性を確める必要がございます」
アラン 「うむ……よいか?キヨシ……」
キヨシ 「……はい」
【アランがキヨシの肩に手を置く。バトラーとヴァレットが、その様子を背後でじっと見つめている。】
アラン 「キヨシ、よく話してくれた。その『機密』、我らファミリーが共に背負おう」
キヨシ 「旦那様……!」
【安堵するキヨシ。だが、バトラーとヴァレットだけは、その『機密』という言葉の重さに、より一層深い沈黙を守っていた。】




