第14話:『観察眼』
1. (起)
【敵を制圧し、硝煙の中で弾倉を確認するキヨシ。その手つきは、単なる兵士を超えた「職人」の域に達していた。】
キヨシ:「......ふう。ハルさん。怪我はないですか?無茶ですよ。一歩間違えば大変なことに……。相手の指が引き金にかかってましたよ」
2.(承)
【ハルはランプの灯りでキヨシの指先を照らす。かつて軍の最高峰で磨き上げられた、銃撃特有の硬いタコ。】
ハル 「キヨシさん。その無駄のない指の運び。さすがですね」
キヨシ 「……えっ?」
ハル 「大丈夫です。……『戸山学校』の特別選抜の力量を信じていますから」
3.(転)
【キヨシの動きが凍りつく。1922年、山梨軍縮の裏で『存在しない』ことにされ、闇に葬られた自分の過去。本名さえも捨てた自分を、彼女は真っ直ぐに見つめている。】
キヨシ 「……っ! な、な……ハルさん!なぜその話を……。俺は、ただの……っ」
【視線を泳がせ、言葉に詰まるキヨシ。】
4.(結)
ハル 「そして……そこを首席で消えた“亡霊がいると聞いていましたが……。」
【狼狽するキヨシにハルは一歩寄り添い、彼の襟元を整えながら、さらりと続けた。】
ハル 「ふふ。.....まさか、こんなところに……ね?」
キヨシ 「ハルさん……きみは……!?」
ハル 「ただの、観察眼に優れたメイドですよ。......でもキヨシさん、似合っていますよ。軍服ではありませんが、フットマンの正装も….ね!」




