第29章 — 「出発前夜」
第29章 — 「出発前夜」
---
朔継は港の倉庫の中に立っていた。
壁の灯油ランプがゆっくりと瞬き、この二日間で集めた物品の山を照らしている。小麦粉、塩漬け肉、乾燥野菜、飲料水、治癒薬、傷薬、ロープ、帆布、釘、木材、塗料——すべてが倉庫の隅にきちんと整頓されている。
アルドリックは午後にすべてを確認していた。老船長は満足そうだった——いや、彼が持ってきた品物の質に驚いていた。
「本当にすべて揃えたんだな」とその時アルドリックは言った。
「揃えると言った。」
「こんなに上質な小麦粉は見たことがない。それにこの塩漬け肉もだ。どこから手に入れた?」
「遠くからだ。」
アルドリックはそれ以上は尋ねなかった。ただうなずいて言った。「船は明日の朝には準備が整う。日の出とともに出港だ。」
朔継はうなずいた。
「わかった。」
---
今、夜が更けている。
朔継は倉庫の中に立ち、自分の物資を確認していた——アルドリックに渡すものではなく、自分自身のためのものだ。
彼はポケットからiPhone 17 Pro Max 5Gを取り出した。
画面が淡い青色の光を放つ。
収納を開いた。
収納の中には、すでに多くのものが保管されている:
・トヨタ・ハイラックス — 完全探査仕様
・M16ライフル — 1丁 + 予備マガジン10個
・魔剣 — 英雄剣級
・食料 — 米、パン、果物、缶詰野菜、飲料水
・種子 — 稲、小麦、トウモロコシ、大豆、ジャガイモ、野菜、果物
・道具 — ナイフ、斧、ロープ、テント、寝袋、ポータブルコンロ
・発電機 — 太陽光発電 + 予備
・衣類 — 着替え、ジャケット、靴
・書籍 — サバイバルガイド、農業、建設、工学
・医薬品 — 消毒剤、包帯、頭痛薬、解熱剤
・サバイバル装備 — マッチ、懐中電灯、電池、コンパス
・設計図 — 住宅、倉庫、道路、橋梁、港湾
すべて準備が整っている。
彼は収納を閉じた。
そして——再びアースアーカイブを開いた。
今回は、まだ開いたことのないカテゴリーを見てみることにした。
【インフラ】
タップした。
画面が変わる。
【インフラ — カテゴリー選択】
□ 住宅
□ 商業施設
□ 工業施設
□ 道路
□ 鉄道
□ 港湾
□ 空港
□ 橋梁
□ ダム
□ 発電所
□ 上下水道
□ 農業施設
□ 都市計画
朔継はその画面を見つめた。
インフラ。
家。
道路。
橋。
鉄道。
港。
発電所。
工場。
都市。
すべてが指先にある。
彼は一つのカテゴリーをタップした。
【住宅】
検索:家
該当件数:1,247,839件
彼はリストをスクロールした。
木造住宅。石造住宅。近代住宅。伝統的住宅。日本家屋。ヨーロッパ様式。様々なスタイルとサイズの家々。
彼は一つを選んだ——シンプルな木造住宅で、寝室二つ、台所、居間、テラス付き。素材仕様と施工手順を含む完全な設計図だ。
【設計図 — ロード完了】
構造:簡素な木造住宅
広さ:60m²
寝室:2
素材:木材、石、ガラス
推定施工期間:7〜10日(工具と労働力あり)
状態:【保存】【召喚】【作成】
設計図。
ゼロから家を建てる必要はない。
指示に従えばいいだけだ。
彼はその設計図を収納に保存した。
後で、始原島でそれを使うだろう。
---
彼は別のカテゴリーを開いた。
【道路】
検索:未舗装道路
該当件数:342,567件
【鉄道】
検索:標準軌鉄道
該当件数:89,234件
【港湾】
検索:小規模港湾
該当件数:45,678件
【発電所】
検索:太陽光発電所
該当件数:12,345件
【都市計画】
検索:小規模町並みレイアウト
該当件数:5,678件
彼はいくつかの設計図を収納に保存した。
これらはすべて始原島で役立つだろう。
これらはすべて、新しい文明の基盤となる。
彼はスマホの画面を見つめた。
アースアーカイブ。
地球の知識と技術のすべてをこの世界に持ち込むことを可能にするシステム。
これこそが彼の最大の力だ。
魔剣ではない。
M16でもない。
トヨタ・ハイラックスでもない。
アースアーカイブこそが。
彼はスマホの画面を閉じた。
ポケットにしまった。
---
彼は倉庫を出た。
外では、夜空が暗い——港の上に星々が瞬いている。波が穏やかなリズムで埠頭を打っている。海風が優しく吹き、塩と魚の香りを運んでくる。
埠頭には、「海の真珠」が静かに係留されている。船は修理済みだ——新しい帆、交換された木材、新しく塗られた船体。アルドリックと乗組員たちは準備万端だ。
明日の朝。
彼らは出航する。
朔継は埠頭に沿って歩き、夜の静けさを楽しんだ。
---
埠頭の突き当たりで、エイリウェンが立っていた。海を見つめて。
銀白色の髪が月明かりに揺れている。濃い青色のローブが夜風にそっと揺れる。彼女は自分の思考に浸っているように見えた。
朔継は近づいた。
「眠れないのか?」
エイリウェンが振り返る。その目——エメラルドグリーンに金色の輪——が読み取りにくい表情で彼を見つめた。
「眠れません。考え事が多すぎて。」
「何を考えている?」
「明日のことです。始原島のこと。そして——」彼女は言葉を切った、「——未来のことです。」
朔継は彼女の隣に立ち、共に海を見つめた。
「怖いのか?」
エイリウェンは沈黙した。
そして——うなずいた。
「……はい。怖いです。」
「何が怖い?」
「あそこに何があるのかわからない。魔物。ダンジョン。魔力の霧。誰も知らない。そして——」
彼女は朔継を見つめた。
「——あなたを失うのが怖いです。」
朔継は彼女を見つめた。
「失わせたりしない。」
「どうしてそう言い切れるのですか?」
「俺は死なないからだ。」
エイリウェンは彼を見つめた。
「とても自信家なんですね。」
「自信家じゃない。ただわかっているだけだ。」
エイリウェンは微笑んだ——その目にわずかな安堵が浮かぶ、かすかな微笑み。
「あなたは本当に変わった人ですね。」
「よく言われる。」
二人は沈黙のまま立ち、海を見つめた。
---
しばらくして、レイヴナがやってきた。
狼の耳がピクピクと動き、周囲の音を聞き取っている。彼女は静かな足取りで歩き、尻尾を後ろで揺らしている。
「お前も眠れないのか?」と朔継が尋ねた。
「眠れない。エネルギーが有り余ってるんだ。」レイヴナは微笑んだ——口元に小さな牙を見せて。「明日出発だ。待ちきれない。」
「怖くないのか?」
「怖い? 俺は獣人だ。そんなものは怖がらない。」彼女は海を見つめた。「だが——興味がある。始原島がどんな場所なのか見てみたい。人々が言うほど悪い場所なのか。」
「もしそんなに悪かったら?」
「なら、立ち向かうだけだ。」
朔継は微笑んだ。
「お前も変わってるな。」
「獣人だ。俺たちはみんな変わってる。」
二人は小さく笑った。
---
しばらくして、ミレルがやってきた。
少女は静かな足取りで歩き、ぬいぐるみをしっかりと握りしめている。その目——緑色——は眠そうだ。
「朔継さん……」
「なぜ眠らない?」
「眠りたくないんです。寝たら、起きたらもう朔継さんがいなくなってる気がして。」
朔継は彼女の前に跪いた。
「お前を置いて行ったりしない。」
「本当ですか?」
「約束する。」
ミレルは彼を見つめた。
そして——うなずいた。
「……信じます。」
朔継は彼女の頭を撫でた。
「さあ、寝なさい。明日は出発だ。」
ミレルはうなずいた。
彼女は振り返り、宿へと歩いて戻った。
---
朔継は埠頭に立ち、エイリウェンとレイヴナに付き添われていた。
目の前に海が広がっている——暗く、神秘的に、可能性に満ちている。
明日。
明日、彼らは旅立つ。
始原島へ。
誰も住んでいない地域へ。
新しい人生へ。
彼は息を吐いた。
「休まなければ。明日は長い一日になる。」
エイリウェンとレイヴナがうなずく。
彼らは宿へと戻った。
---
【次章 第30章 — 「空白の大地へ」へ続く】
朔継は自分の部屋の窓の前に立っていた。
遠くに、「海の真珠」が埠頭に係留されているのが見える——出航の準備が整って。
明日の朝。
彼らはこの港を離れる。
この世界の文明を離れる。
始原島へ。
空白の大地へ。
彼は再びスマホを開いた。
【EARTH ARCHIVE — 地図】
現在位置:港町
目的地:始原島
距離:不明
状態:未踏破
始原島。
誰も近づこうとしない場所。
危険に満ちた場所。
しかし希望に満ちた場所でもある。
彼は微笑んだ。
明日、旅が始まる。
---
【第30章へ続く……】




