第12章 — 「この世界には、人間がいる」
第12章 — 「この世界には、人間がいる」
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朔継は東門から町を出た。
この世界に来て三日目。
彼はすでに丸二日をこの小さな町の探索に費やし、住民たちと話し、言語や文化を学び、周囲の世界について情報を集めていた。今、さらに遠くへ踏み出す時が来た。
肩には——水、軽食、そして念のための銀貨を数枚入れた簡素なリュック。腰には——目立たない小さな折りたたみナイフ。ポケットには——地球のあらゆる知識を詰め込んだスマホ。
しかし今のところ、それを使うつもりはなかった。
必要ない。
ただ見たいだけだった。
観察する。
理解する。
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土道が緑の畑の間を曲がりくねって伸びている。
農民たちが田んぼで働いている——腰をかがめ、訓練された効率的な動きで苗を植えている。彼が通り過ぎると、何人かが顔を上げるが、誰も話しかけてはこない。ただ軽くうなずくだけで、また作業に戻る。
田舎の暮らし。
穏やかだ。
素朴だ。
町とは違う。
地球とは違う。
朔継は歩き続ける。
太陽がゆっくりと頭上へ昇る。
空気が徐々に温かくなる。
そして遠くに——何かが見えた。
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**丘だ。**
小さな丘が彼の前にそびえている——緑の草と何本かの小さな木々に覆われている。その頂上からは、より遠くまで見渡せるだろう。
彼は登ることにした。
足取りは安定している。
急がない。
十分ほどで頂上に着いた。
そしてそこから——
見えた。
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眼下には、土道が蛇のように畑と森の間を縫って伸びている。遠くには雪を被った山々がそびえる。反対側には、青い海が地平線まで広がっている。
そしてその道の上に——
人の集団。
朔継は瞬きをした。
もっとよく見る。
集団。
人間。
魔物ではない。
異形の存在でもない。
人間だ。
約二十人——もしかするとそれ以上。徒歩の者もいれば、馬に乗る者もいる。二頭の馬に引かれた大きな木製の荷車には、袋や箱が満載だ。腰に剣、背中に盾を背負った武装した男たち——護衛だろう。頭に籠を乗せた女性たち、大人の足の間を走り回る子供たち、そして集団の先頭には——濃い青の長いローブを纏い、白い雄馬に跨る一人の男。
商人の隊商か?
避難民の集団か?
それとも旅する貴族の一行か?
朔継にはわからなかった。
ただ観察するだけだ。
遠くから。
慎重に。
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彼はスマホを取り出した。
鑑定+のためではない。
拡大するためだ——スマホのカメラは非常に優れた光学ズームを持っている。
彼はそれを集団に向けた。
拡大する。
細部。
衣服。
武器。
顔。
表情。
青いローブの騎馬の男——顔つきは厳しく、目は警戒に満ち、短く整えられた顎鬚。腰には——複雑な彫刻の施された鞘に収まった長剣。その後ろには——金髪の若い女性、小さな馬に乗り、簡素だが銀の装飾品を首に飾ったドレスを着ている。
貴族か?
それとも裕福な商人の家族か?
朔継は観察を続ける。
荷車を見る——小麦の詰まった袋、貴重品の入った木箱、そして後部には数個の鳥かご。
商人の隊商だ。
武装した護衛付きで。
ある町から別の町へと旅している。
ファンタジー小説のように。
映画のように。
しかしこれは現実だ。
彼はスマホを下ろした。
これが世界だ。
生きている世界。
人々のいる世界。
生活のある世界。
旅のある世界。
危険のある世界。
物語のある世界。
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彼は丘の上の草の上に座った。
その集団を見つめる。
近づくこともできる。
話しかけることもできる。
この世界について尋ねることもできる。
しかし——
慎重でなければ。
この世界では、よそ者は必ずしも歓迎されるわけではない。
特に奇妙な服を着て、聞いたことのない訛りのある者など。
まずは彼らを観察しなければ。
見る。
理解する。
そして——
安全ならば——
近づこう。
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彼はさらに長く観察した。
隊商は土道をゆっくりと進む。急いでいない。時折立ち止まって馬に水を飲ませたり、荷車の荷物を整理し直したりしている。
彼は何かを聞いた。
距離はかなりあるが、風が下から声を運んでくる。
会話。
笑い声。
馬の声。
荷車の音。
生活の音。
彼らは町の人々と同じ言語を話している。
彼が学び始めた言語。
まだ不慣れだが、少しずつ理解できるようになってきた言語。
彼は耳を澄ませた。
言葉を拾おうとする。
「……王都まではあと三日だ。」
「荷物が多すぎる。もう少し軽くできないのか?」
「仕方ないだろう。今回は特別な注文なんだ。」
「……それにしても、最近ダンジョンの動きが活発だな。」
朔継は身を硬くした。
ダンジョン。
その言葉を聞いた。
隊商の男がダンジョンについて話している。
活動的なダンジョンについて。
彼は少し近づいた。
より強く耳を傾ける。
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「またかよ。どこで?」
「北の森だ。先週、冒険者ギルドから警告が出た。」
「やばいな……。あそこは前から危険だったけど、最近は特にひどいらしい。」
「モンスターの数も増えてるし、何よりダンジョンから溢れ出てるって話だ。」
「……王都に着いたら、ギルドに報告しなきゃな。」
朔継はすべてを記憶した。
北の森のダンジョン。
活動中。
魔物があふれ出している。
冒険者ギルド。
警告。
貴重な情報。
いつか役立つかもしれない情報。
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彼はもう一度隊商を観察した。
彼らは再び動き始めた。
馬が歩く。
荷車がきしむ。
会話は続く——しかし今はより小さくなり、風に乗って届かない。
朔継は立ち上がった。
決断しなければ。
近づくか、それとも?
尋ねるか、遠くから観察し続けるか?
彼は後者を選んだ。
今は、観察する方が良い。
この世界をまだ十分に理解していない。
その危険性をまだ十分に理解していない。
一度の過ちが致命的になりうる。
リスクを取るわけにはいかない。
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隊商は次の丘の向こうへとゆっくりと消えていった。
朔継は彼らが去っていくのを見送った。
彼らは人間だ。
この世界の人間。
地球の人間のように。
彼らには生活がある。
彼らには問題がある。
彼らには悩みがある。
彼らには物語がある。
そしていつか——
自分も彼らの物語の一部になるかもしれない。
あるいは彼らが自分の物語の一部になるかもしれない。
彼は息を吐いた。
そして——向きを変えた。
丘を下りる。
道へ戻る。
町へ戻る。
学ぶべきことがたくさんある。
理解すべきことがたくさんある。
しかし今は——
十分に見た。
この世界には人間がいる。
彼らは生き、働き、旅し、危険に立ち向かっている。
地球のように。
しかし違う。
よりシンプルだ。
より危険だ。
より現実的だ。
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朔継は町へと歩いて戻った。
頭の中には——あの会話の言葉たち。
ダンジョン。
北の森。
あふれ出る魔物。
冒険者ギルド。
もっと調べなければ。
町の冒険者ギルドを訪ねなければ。
情報を得なければ。
ダンジョンについての情報。
魔物について。
世界について。
すべてについて。
彼は足早に歩いた。
今日——
ギルドを訪ねよう。
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【次章 第13章 — 「初めて見る異世界の町」へ続く】
朔継は町の門に近づく。
目の前には——もう見慣れた小さな町。
しかし彼は知っている——ここはただの一つの町に過ぎない。
その外には、もっと広い世界がある。
より大きな都市。
王国。
帝国。
文明。
すべてを見なければ。
すべてを学ばなければ。
そしていつか——
自分自身の文明を築くのだ。
【第13章へ続く……】




