↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世で愛した魂が、死神と幽霊に分かれて私を溺愛してくる  作者: だしのもと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/43

第17話 不協和の狭間で①

 前夜の霊的な波動の高まりは、翌日も葵の心に残っていた。


 放課後、彼女は再び零士に会い、確かめたい想いを胸に裏庭へと足を運ぶ。

 夕暮れ時の学園の裏庭、小さな東屋の影に身を寄せ、葵と零士はそっと向き合っていた。


 彼女の胸に去来したのは、かつて冥界で最後の戦いに臨む直前の光景。

 キルハとセイン、ふたりが別れを選んだ瞬間だった。


 キルハは、セインを想うあまりに突き放すように別れを告げた。

 できることなら共に戦い、共に守り抜きたかった。

 しかし、彼を失うかもしれないという恐れが勝り、キルハは迷い、最終的には自ら孤独の道を選んだ。

 そのことを、今の葵ははっきりと理解していた。


「……あのときの彼は、迷っていた」


 静かに、しかし確かな声音でそう告げた葵の眼差しは、今の自分を強く見据えていた。


「だけど私は、もう惑わされない。私は、あなたたちを守るためにすべてをかけられる」


 そう言い切った葵は、まっすぐに零士を見つめる。

 その視線は、揺るぎのない強さと温もりを湛えていた。


「どんな事があっても、一緒にいる」


 零士はその言葉に、目を細めて微笑んだ。

 どこか切なく、どこか嬉しそうに、葵の髪にそっと触れ、額を寄せた。

 その仕草に、葵は一瞬ドキッとした。


 だがそれ以上に、懐かしさから込み上げる想いと、以前よりも和らいだ零士の表情に、胸がじんわりと熱くなる。

 直接触れられるその温もりが、どれほど貴重なものだったのか。

 思い知らされるように、切なさも込み上げてくる。

 零士はそんな彼女の想いを汲み取るように、優しく目を閉じた。


「……ありがとう。葵」


 その瞬間、ふたりの魂がまた一歩、深く重なったように感じられた。


 ***


 しかし、その光景を目にした昇也の胸には、得体の知れない焦燥が波のように押し寄せていた。


 記憶がない。

 過去の繋がりも思い出せない。

 けれど、なぜか強く惹かれていく。

 葵が零士に向ける眼差しに、過去と今が繋がっていく確信を感じるたびに、自分が置いていかれているような錯覚に囚われていた。


(俺には、何も思い出せない。けど……この気持ちは、なんなんだ)


 葵が零士に向ける優しいまなざし。

 零士が彼女を守ろうとする決意。

 そのどれもが、昇也の胸の内で複雑に絡まり、苛立ちと哀しみが混じり合っていく。


「……兄さんは、確信してるんだな」


 呟いた声は、誰にも届かなかった。


 だがその胸には、確かに芽生えた感情があった。

 それは嫉妬ではない。劣等感でもない。

 彼女を想う気持ちだった。


 昇也は、はじめて自覚する。

 この世界で出会った彼女を、自分は本気で想っているのだと。

 だがその想いが、兄と同じ方向にあること。

 そして彼女の記憶が兄との絆を深く宿していることが、昇也の胸に重くのしかかっていた。

 そのとき、彼の耳元に、どこからともなく囁くような声が届いた。


『……その想いが痛むのなら、壊してしまえばいい』


 微かに聞こえたその声は、昇也の迷いや葛藤に寄り添うように、だが確かに心を揺さぶるように響いた。

 その言葉に、昇也の意識がふっと揺らぐ。

 視界の端が滲み、胸の奥に広がる重たい感情が、一気に心を蝕むようだった。


「……っ」


 思わず拳を握りしめ、頭を振る。

 自分を飲み込もうとする闇を、必死に振り払うように。


(違う、俺は……!)


 昇也は小さく息を吐き、胸に残る想いを必死にかき集める。


 自分が守りたいと願ったもの、葵の笑顔、零士との絆。

 それらが彼の内に灯火のように揺れながら、かすかな光を取り戻していた。


 だがその頃、昇也の背後では静かに何者かの影が動いていた。

 葵の力を直接奪う作戦が失敗した今、敵は別の手を打ち始めていた。


 死神の力を宿す昇也。

 それが、次の標的だった。


 かねてから少しずつ、昇也の力を侵食していたその存在は、ついに本格的に彼を狙い始めていた。

お読みくださりありがとうございます!

ブックマーク、評価、コメントを頂けると大変嬉しいです!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。