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はるまげ☆どーたー  作者: 葵・悠陽
グリモワール第2巻
24/33

あの日何があったのか その1

日崎ほのかは悪魔である。


悪魔や天使はこの世界においては基本的に精神生命体に分類される、

本来は肉体を持たない存在である。


強大な力を持つ半面、世俗からの認識によって

その性質を歪められ易くもある彼等は肉体を持つことによる「自我」の固定化で

その変質、変容の影響を最小限に抑えるという方法にたどり着く。


悪魔オセはわざわざ人間社会に溶け込み婚活斡旋の会社を経営して

「悪魔の花嫁」をもちろん素性は伏せたまま様々な相手とカップリングさせている。

同胞の「受肉」、主たる目的はもちろんそこにあるのだが、他にも……

と、そのあたりはまた別の機会に語るとして。


受肉した悪魔は、当然生まれた時点では赤子である。


人間の生態に準拠した誕生をするのだから当然なのだが、

赤子の状態では魔法もろくに使えず、単体での活動はほぼ不可能。

悪魔としての自我、意識を持ちながらも全くと言っていいほどに無力なこの状況に

ほとんどの悪魔たちは戸惑いつつも、己の現状を人間社会への浸透に必要と耐える。

そして、十全にその力を振るえるようになるまでの間、

人の振りをして生きるために必要な事を学んでいく。


自由奔放な悪魔にとって、人間社会における最初の壁は「耐える」こと。


安易な行動は敵を作り、敵を呼び、敵に付け込まれる。

普通ならその事を母親たる淫魔に護られつつ学んでいくのだが……



日崎ほのかは悪魔である。



耐えることを学ばず、我慢することを知らぬままに、

彼女は己の母親を踏み台に父親の下へと現れた。


そして今、彼女の前には「天使殺し(さつじん)」を犯した父親の姿があった。


彼女を護る為、躊躇うことなく行われたその行為にほのかは喜びつつも不満を抱く。

命を殺めても罪の意識を得ない父親への不満。

確固たる守護の意思の下行われた行動に、

日崎実利という人間は罪悪感を抱かなかった。


罪の意識を感じなければ、『カルマ』に染まった魂は瘴気を吐き出さない。



折角深い『カルマ』に染まったえさが目の前にあるのに味わう事が出来ない?



捕食者の本能に囚われたほのかには、我慢のならない状況。

彼女は己の本能が囁くままに、父親の、実利の心の隙間を探り……


「呪い」の言葉を突き立てた。





                  ◆


「パパ?


パパは別に親である必要なんてないんだよぉ♪


だって、パパはほのかの旦那様でぇ………美味しい、ただの餌なんだから♪」




「え………さ……………?」




「うん♪ え・さ ♡ 」


自分では意図しないままに言葉に魔力が宿り、収束していく。

放たれた言葉はうっすらとした靄の様にパパへと放たれ、染み込んでいく。

言葉の毒はゆっくりとパパの魂に絡みつき、浸透し、穢し、犯していく。


ようやく、パパの顔が絶望に染まる、染まっていく。


わたしを可愛がってくれるのは嬉しいよ?

でもね、パパは所詮私にとっては餌なの。

ご主人様は私で、パパがわたしを満足させるのは当然の事。

お嫁さんになってあげるのはパパへのご褒美なの。

……人間風情が私を護る?おこがましい。


アハ♪

わたしったらなんでこんな簡単な事に気づかなかったんだろう?


わたしは悪魔なんだもん。


騙して、奪って、穢してしまえばいいだけの事。

そんな簡単な事を忘れて、パパの子供として振舞うだなんて…


ま、パパの「家族」であることが契約だから(そうだった…よね?)?

親子関係ってやつでもお嫁さんでもどっちでもいいはずなのにさぁ

妙にパパが親子にこだわるからズルズル引っ張られちゃったのかも。

折角お嫁さんになってエッチな事たくさんしてあげるっていうのに

それは犯罪だからって嫌がるんだもん。

わたしは、パパを悪い人にしたいんだって言ってるのにね?


6歳の実の娘の身体にいやらしいことを教え込むパパ♡


わたしもパパも、どっちも気持ちいいんだしいいと思うんだけどな?


でもまぁ、そんなのはどうでもいいや。


今、パパが目の前で虚ろな顔をしてへたり込んでる。

その魂から、ドバドバって瘴気を垂れ流して。


「ふふっ、ず~~~~~~~~っと、我慢してたんだよ?

パパの瘴気、本当に美味しいんだもん。

や~っと、餌らしくなってくれてほのかは嬉しいなぁ♪」


早く食べたい、早く啜りたい、そんな気持ちを押さえながら

わたしはパパの頬を優しく撫でる。

その自己嫌悪と後悔に染まった瞳は何を見ているのかな?

わたしに騙されたって思ってる?

わたしに嵌められたって嘆いてる?

どうでもいいけど♪


「それじゃ、い・た・だ・き・ま~~~~っ!?!?!?!!!!!」


溢れ出すパパの瘴気を一気に啜る。


その瞬間、頭の中を、背筋を、電撃を流されたような凄まじい快感が奔った。


足が、腰が、弛緩する。

背筋が反り返り、頭が一瞬で真っ白に染まる。


「う……あ…あは……あはははは……」


へたり込んでいるパパにしなだれかかる様にわたしは腰を抜かしていた。

下半身が、生暖かく濡れそぼっていた。

あぁ、わたしったらはしたない……♪


もう、我慢なんて出来なかった。

する気もないけど問題ないよね?





わたしは獣の様にパパの瘴気を貪り、喰らい、啜り、溺れた。





そうしてそのくらいの時間貪っていただろうか?


周囲が揺らぐ気配を感じてわたしは正気に戻る。


天使の結界が緩み始めていた。


あまりに強烈だった快感で甘く痺れたような頭を振り、周囲を見れば

パパのそばで倒れたままの死体の存在をようやく思い出す。

う~~ん……

このまま結界が解けてしまえばこの死体は元の世界に晒されちゃうかな?

それはそれで面倒だな、っと思ったので炎を吹き付ける。


「ふっ」


軽く吹いた炎の吐息は一瞬で死体に燃え移り、真っ白な灰へと変えてしまう。

体中にみなぎる力。

暫くパパの瘴気を啜っていただけなのに、凄まじく魔力が上がっているのが分かる。


「はぁ~、やっぱりパパって最高の餌だった♪

ねぇ、パパ?

このままこんなところにいてもつまらないし、帰ろ?

ほのかはシャワーも浴びたいな!」


「…………」


パパの耳元でそう囁くと、パパは黙ってゆっくりと立ち上がり、

自転車を起こして歩き始めた。

その動きは緩慢で、しかも私の事を見向きもしない。

ちょっとイラッとしたけど垂れ流される瘴気の蕩けるような甘さに

すぐに夢中になってしまいそんな憤りはすぐに忘れてしまう。


天使の結界はそこまで強力、広範囲なものではなかったようで

ある程度の距離を進むと緩やかに元の世界と重なった。

強力なものだと境界には障壁があるのだけど、所詮は下級天使の結界、

そこまで強力なものではなかったみたい。

ま、障壁があっても壊せばいいんだけどね?


……パパは何故か自転車に乗らずに、歩いて帰った。

そのせいで家に着くころには空は明るくなっていて、

わたしは大量の瘴気で気分的におなかもいっぱいですっごく眠くなっていた。

結構な距離を歩いたので疲れもあった。


だから、家に近づいたらパパを置いて走って部屋に入り、

快楽に溺れ、はしたなく汚れてしまった身体を綺麗にシャワーで流して


「じゃ、パパ、先に寝るね~?」

「…………」


さっさと布団に潜り込んだ。





                       ◆


身体に力がみなぎる。

ふわふわと空を飛んでいるような浮遊感。

根拠のない万能感と、優越感が心の内から湧き上がる。


目が覚めた時、わたしは真っ暗な闇の中にいた。


…………いや、違う……違うよ!?


「ひっ!?

なにこれ!?まさかこれ全部瘴気!?」


闇の中にいたと思ったそれは、パパの吐き出した瘴気だった。

狭いお部屋の中はパパの瘴気でみっちりと満たされ、

わたしの様に「視る」目を持つ者にはまるで闇の中の様に見えたんだ。


な~んか気持ちいい目覚めだな~?って思ったら…そういう事ね?


寝ていても呼吸から瘴気は取り込めてしまうから、

身体の芯で疼くような快楽の熱はこれのせいだと思う。


昨日天使が襲撃してきて、撃退して、パパがドバドバ瘴気を出してくれて…


…………アレ?


ちょっと浮ついたような気分だったのが、現実に引き戻されたような感じになる。

……なんか変だ。

何か忘れているような気がする。


「う~ん、何が変なんだろ。

なんだと思う?パパ?

…………ぱぱ?」


自分の中の妙な引っ掛かりのヒントが欲しくてパパに声をかけたんだけど


返事がない。


「う、そう言えば昨日も私を無視してなかったっけ?

ねぇ、パパ?パ~パ~?」


隣に寝ていないので台所かな?

そう思って引き戸を開けるがパパの姿はなく。


「パパ?」


お風呂場にも、パパはいなかった。

靴も無いから買い物?


思考がそこまで行きついて、八ッとする。


慌てて部屋に戻り、壁の時計を見る。


「3時、20分……」


午後3時からパパはお仕事だ。

いつも午後2時くらいには出発するから、今頃はマイキでお仕事?


「……う、嘘……。

わたし、置いてかれた、の?」


お留守番させるにはまだ心配だから、とパパはいつもお仕事に連れて行ってくれた。

何も言わないでおいていくなんてまずありえない。

疲れて眠い時、起きるのをごねた事もあったけど

そんな時は濡れた冷たいタオルで無理やり起こされたり、

服を脱がされて水をかぶせられたりと、絶対寝たままにさせてもらえなかった。


それに、


「……うぅ~、おなか、空いたよぅ」


そう、ご飯を食べていない。

冷蔵庫にも作り置きは入ってなかったし、食材棚にも特に何も置いていなかった。

台所も昨日お仕事に出る前の状態で、すなわちパパは今日お料理していない。


確かに家中パパの瘴気が充満していて空腹は気分的に誤魔化せなくはないけど、

わたしだって生きてる以上はご飯食べないとおなかはすくんだよ!?


パパの馬鹿っ!


プンプンしながら何か食べ物残ってなかったかな?とあれこれ探す。

探すことしばし、この間のおやすみにパパと作ったおやつ…

おやつといってもクラッカーにチーズとかを乗せてトースターで焼くだけだったけど

そのクラッカーの残りを見つけた。

3枚入りの小袋が二つ、それが全部だった。


「うぅ…これだけ…。

パパのバカバカバカバカバカぁ…!

…………はぁ、どうなってるんだろう?

パパがわたしを放置だなんて信じられないよ……」


ぽりぽりとクラッカーを齧ると、一緒におやつ作りした時の事が脳裏に浮かぶ。

楽しかったなぁ~。

チーズの他にもジャム乗せたり、ヨーグルト乗せたり。

プリン乗せたら変な顔されたっけ。

パパは「ミニもんじゃ!」とかよくわからないもの作ってた。

お互いに作ったものを見せっこして交換したり、楽しかった。


なんか、胸がもやもやする。


そのもやもやが何なのかが分からなくて、イライラする。

気分を落ち着けたくて周囲の瘴気を啜るけど、どうしてか抱えたもやもやの分

あれほど美味しかった瘴気が味気なく感じてしまう。

その事が、更にいら立ちを募らせる。


「…………全部、パパのせいだっ!」


全ての憤懣をパパのせいという事にして、わたしはふて寝することにした。

だって現金持ってないからお買い物にも行けないんだもん。

わたし、いつもマイキでお買い物するときはパパからもらったお金を

マイキカードに「ちゃーじ」していたから現金を持ってない。

マイキカードはマイキー・オルテでしか使えない。

だからこういう時、困るんだと今回思い知らされた。


マイキカードの中にはお金いっぱい入ってるんだよ?


……だから今度は少し現金を残しておこうって思います。


ほのかだってちゃんと学習するんだよ?






そんなことを考えながらとりあえず瘴気を啜り、寝た。



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