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はるまげ☆どーたー  作者: 葵・悠陽
グリモワール第1巻
15/33

断章・ほのか日記(5月27日)

5月27日(日)晴れ


パパの職場でこれを書いている。

詰め所らしいおんぼろの建物の中から、パパのお仕事を眺めつつ

時間をつぶす傍ら記録を残してみようかと思い立ったから。

ちなみにこの文書自体は悪魔文字だ。

日本語?の練習もしないといけないけれど

それはおいおい、ってやつだね。


パパの娘になってから二日目だけど人間の子供って辛い。

正直、舐めてたかもしれない、それも悪い方で。

もうすでに心が折れかけている。

魔法は目立つから使えないし、体力もないからすぐ疲れて眠くなる。

足も遅い、力もない、なにより、飛べない!


大空を飛びたい!

高いところまでぎゅーん!って上がりたい!

でも翼は炎だからきっと目立ってしまう。

「姿隠し」の魔法を使いながら飛べばいいかと思ったけど、

あれ結構維持が大変だから飛びながらだと

この身体じゃきついって事に後で気が付いた。


人間の身体は本当に不便。


そう、不便ついでで思い出したけど、

精神って肉体年齢に引きずられるんだって

この身体になってから初めて知った。

私もう5000年以上生きているのに、

自分の事をたまに名前で呼んだりしていたんだよね。

「ほのか、○○だよ!」とか……

無自覚に口にしているのは、ちょっと恥ずかしい。


それにそれに、自分の役立たず感がすごい。


この身体だと、本気で何もできないんだよ。

最初はパパを誘惑して、娘と淫行にふける罪悪感を

たっぷりと吸わせてもらおうって思ってたのに全然誘惑できないし、

なら一杯お世話して働かないダメ人間になってもらおうと思っても

この身体だとお手伝いもろくにできない。

お金を渡せば要らないって断られるし。

わたし魔法は壊すか直す専門で生活に役立つ系の魔法は持ってないんだよね。


ふふふ、今のわたしってばすっごい役立たずだわ。

この時代の言葉だと「超使えねー!ワロスワロス」っていうんだっけ?

言葉の響きからしてダメダメ感が伝わってくる。


そんなわたしでも何かパパの役に立てる事ないかなぁ?

そう思ってパパの仕事ぶりを眺めていた。


パパは「けいびいん」という仕事をしている。

「やとわれ衛兵」のような仕事だそうだ。


安全を売り物にしているんだよ、と言う事だったんだけど

パパを見ている限り何を売っているのか分からない。

そもそも安全って売り物なの?


ちなみにこんな感じのお仕事している。


「いらっしゃいませこんにちは~、こちらどうぞ~」

「ありがとうございます~、またどうぞ~」

「おくるまおきをつけくださ~い、こちらからど~ぞ~」

「くるまきてますよ~おきをつけくださ~い」

「はいこんにちわ~、いつもありがとうございます~」

「おやどうも、きょうもいつものですか~?」

「いらっしゃいませ~」

「明日雨なんですか!?うわぁ~、まいったなぁ」

「段差お気を付けくださ~い?」

「少々お待ちください……お待たせしました~お気をつけてどうぞ~」


お店に来る人一人一人にのほほ~んとした顔で延々と声をかけて、

手にした棒で車や人を止めたり進めたり。


お休みの日だとかですごい数の人が出入りしている中、

延々と、淡々と、時に笑顔を振りまきつつひたすらちょこまか動き、

話しかけている。


ほとんどの人はそんなパパを無視して歩いている感じ。

時々パパにお返事を返してくれる人もいるけど、ごく少数だ。


それなのになんでパパは意味もない事を繰り返してるんだろう?

あれのどこが安全を売ってることになるのかが分からなくて

水分補給に詰め所に来たパパに聞いてみた。


「んあ?なんで声かけてるのか?」


「うん、みんな無視してるのに何で?

あんなのパパが大変なだけじゃん」


「あー、うん、そう見えるかなぁ?

声かけてるのも、あの場所に立ってるのも意味はあるんだよ?」


そう言って汗を拭きふきペットボトルをラッパ飲みするパパ。

2ℓボトル(と言うらしい)を片手でぐびぐびしてるところは

男らしくていいと思う。


「立体駐車場の内部と入口、スロープ前の横断歩道、店舗入り口、

それに国道沿いの道から直接店に入るお客様達。

全方位から来る車やお客様を可能な限り最小限の動きで把握するには

動線の交差する場所から危険度の高い方向を注視すれば

事故は防ぎやすいだろう?」


「車とか人間の動きが読めるの?」


「人の動きも車の動きも、よっぽどの馬鹿でもなければ

そう突飛な動きはしないからね。

概ね皆似たようなルートを使うから慣れればすぐ見切れるよ。

それさえ押さえればあとはイレギュラーへの対応だけだし」


子供の飛び出しとか、暴走車とかね、とパパは笑う。


「声をかけるのも、無駄に見えるかもしれないけれどさ?

『ここで警備員が見てますから安全ですよー』って

アピールでもあるわけさ。

どこの誰が見てるか分からないから、視察対策でもある」


「それって、別に挨拶返して欲しい訳じゃないってこと?」


「そういう事。

まぁ、返してくれる人がいればそりゃあ嬉しいけどね?

とにかく事故を起こさないためには存在感が無いのが一番まずい。

止めたい人は止まらない、止めたい車も止まらない、じゃ

仕事にならないでしょ?

ウザかろうが邪魔だろうが暑苦しかろうが、

『あ、なんかあそこに誰かいたなぁ?』って

思ってもらえれば注意喚起にもなるだろう?

そういうのの積み重ねで、『安全を売る』と称してるわけだ」


よくわからないけど、棒立ちしてる人よりは考えて仕事してるんだと

それだけは理解できた。

そのうち理解できるようになるかもしれないので記録しておこう。


パパの仕事が理解できるようになったら、パパは喜んでくれるかな?


パパは「子供なんだから子供であることを楽しめよ」と言ってくれたけど

それでもやっぱり契約者の役に立てない=要らない子って不安は

私の中に根強く残ってる。


もっと『カルマ』を沢山得られればちょっとは違うのかな?


人間って難しい。




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