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はるまげ☆どーたー  作者: 葵・悠陽
グリモワール第1巻
13/33

悪魔の少女はお役に立ちたい

自慢じゃないが、俺は空気が読めない系の男だ。


ついでに間の悪さにも定評がある。

まあそんな俺でも若いころはそれなりに彼女もいたんだが

今となってはそれすら不思議なレベルで自分がダメ男だという自覚がある。


そんな察しの悪い俺ではあるけれども。


流石に今のほのかの様子がおかしいことには気づく。

いや、気付けた。


最初は楽しそうに俺の後ろで初の自転車を楽しんでいた様子だったが

しばらく走っているうちに口数が減っていき、最後には無言に。


(……空気が重い。

また俺なんか地雷踏んだかなぁ?

でもさっきまで楽しそうにしてたしなぁ。

もうすぐムトー・セイカドーに着いちゃうけど

これじゃ服買うどころじゃ…)


むむむむむ、と悩んでいると肩を掴むほのかの手に

僅かに力がこもったのを感じた。


「………ほのかは自転車楽しくないか~?」


ことさら軽い口調で問いかける。

何か言いたいことがあって、言い出せないというのなら。

あえて外した話題で問いかけるのも手だろう!

本気で自転車がつまらない、だったら泣くけど。


「……わたし、役立たずだね」


しばしの沈黙の後、呟くように漏れた言葉。


「ぷっ…!だははははははははは!」


あまりに深刻そうに発せられたその一言に

意表を突かれてつい吹き出してしまった。


「なっ……!パパッ!?何がおかしいのよっ!

ほのか、真剣に悩んでるんだよっ!?…きゃっ!」


「っと、二人乗り中に暴れるなっての。

はぁ~~~~~~ったく、ほんと面白いなぁ?」


後ろからポカポカ殴ろうとしたほのかがバランスを崩しかける。

流石に裏道を走っているとはいえ車も多い道だ。

一度自転車を止め、不機嫌そうな、だがどこか不安げな娘を降ろし

二人で歩道を歩きだす。


「…………」


「なるほどなぁ、ほのかはそれで悩んでたのか。

朝から暗かったのもそのせいか?」


「…………(こくり)」


「…そっか」


会話が途切れる。

重い沈黙。

だが、言うべきことは決まっているし、

ほのか自身の勘違いはここで正す必要がある。

こういう時、自分の語彙や表現力の無さが悲しくなるんだが

大事なのは伝えたいと真っ直ぐに思う気持ちだと思う。


だから、真っ直ぐ切り出した。


「ほのかはアホだなぁ」


げしっ!!「あいたっ!」


「アホってなによ!

確かにこんな役立たず、パパから見ればアホかもしれないけど、

だけど、だけど……」


思い切り俺に蹴りをぶち込んだほのかが

顔を真っ赤にして怒りを示す。

その目には今にも溢れそうな涙が溜まっていて。

余程耐え難かったのだろう己の無力感を

馬鹿にされたと怒るのか、己自信を憐れんで泣くのか、

それとも本当に役に立てなかったことを嘆くのか。

わからないなぁ。

でもそんなことはどうでもいい。


「役立たずでもアホでもいいじゃんかよ。

つーか、俺、一言でもほのかが邪魔だとか要らないとか

そういうこと言ったか?」


「……いってない」


「確かに仕事に子供連れてく訳にはいかないとかで悩みはしたけどさ

それはお前がいると邪魔だとかそういう主旨の悩みじゃない。

ながら仕事になったら仕事を任されてる者としての責任として

問題があるから不味いよなってだけさ」


「……うん」


「……ほのかはさ、俺の役に立てないっていうけど、

立たなくていいんだぜ?」


「……え……」


そう、そこでショックを受けるのがおかしいんだ。

だって、ほのか、お前は……


「だってさ、ほのかは俺の子供、そうだろ?

子供なんだから、何でもかんでも出来ないのがふつう、当たり前。

大悪魔だったからこそ今の自分に無力感を感じるのは分かるんだけどさ?

『人間の子供』を今やってるんだから、無力でいいんだよ」


「無力が……普通?」


そう、きっとそこが大きな勘違いなんだ。


人間の子供が、親の手伝いと称して何でもかんでも完璧にこなせるなら

それはそれで凄いことだと思う。

素晴らしい才能だ。

だけど、それは子供の在り方としては普通じゃない。


「力が無い、知恵もない、経験も足りない、手足のリーチも身長もない、

色気もない、迫力もない、やりたい事があっても、やるだけの基礎が無い。

人間の子供ってのはさ、まっさらな状態から誰もが始まるんだ。

ないない尽くしの状況から、色んな壁に当たって、夢を見つけて、

なりたい自分になる為に技術を、知識を、経験を、学んで、経験して、鍛えて

そうやって初めて『大人になる』のさ。

普通に20年近く時間をかけて人間が積み上げていくものを

ほのか、お前1日で積み上げるつもりだったのか?

そりゃあアホって言われても仕方ないっしょ?」


「ううっ……」


ゆっくりと言葉を選んで語り掛ける言葉。

その言葉の意味するところに気づいて、

流石にほのかの怒りも冷める。


すなわち、「焦り過ぎ」なんだよ。


「で、でも…わたし、それでも悪魔なんだよ?

パパとの契約だって、確かに相互利益になる様な内容じゃないけど

それでも役に立てなきゃパパだって他の悪魔を……」


「選びたくなるでしょ、ってか?

つーか、契約ってなんだ契約って。

親子関係は契約じゃなくて繋がりって言うんだよ。

ついでに言うと、親が子供を育てるのは『義務』!

子作りは任意の作業なんだぞ?

事故も多いけど、基本的に子供は『望まれて』生まれるもんだ。

そしてほのか、お前は俺が『望んで』迎えた子供だ。

確かにいきなりで困惑したけどさ?

『望まれて』ここにいるお前を、どうして他の悪魔とチェンジせにゃならん」


勘違いここに極まれり、だなぁ~。

悪魔的発想というやつが、いかに人間のそれと違うかを垣間見た気分だ。


「………わ、わたしで、良いの?」


「ほのか『が』良いの」


「で、でもパパ、わたしがお金見せたら嫌がった……」


「親をその年で養おうなんざ20年早いわ(笑)

就職してからなら喜んで甘えさせてもらうぞ」


「!!…………」


ほのかの目が驚きに見開かれた。

心なしか、顔も赤い気がする。

そんなにあの金塊受け取り拒否がダメージだったのだろうか。

まぁ、色仕掛けがダメ、なら切り札の資金援助!ときてコケた

気になってるんだろうからショックも大きかったのかね。


「ほのかはさ、フェネクスだって言っただろう?」


「え、あ、うん」


「家族が何か分からない、って言ってたけどさ。

今、折角『俺の子供』になって体験できるんだからさ?

嫌じゃないなら『子供』って生き方を満喫してみたらどうだ?

そう考えれば役に立つとか立たないとか、

考えないでも済むだろう?」


「………そっか、うん、そうだね……。

今は『子供』、それでいいんだね。

パパに愛してもらえる『子供』になればいいんだ」


少しづつ、ほのかの顔から影が消えていく。

昨日一緒にお出かけした時の、あの眩しい笑顔が顔を出す。


うんうん、子供はやっぱり笑顔が一番だ。



「ねぇ、パパ」


「ん?」


「私のパパになってくれて、ありがと」


妖艶さも、色気もない。

ただ真っ直ぐな、どこまでも子供らしい

純粋な好意に満ちた、ただ俺だけに向けられる、笑顔。


「…おう」


こんな笑顔が、ずっと見たかったんだ。




                   ◆


うーむ、やはりムトー・セイカドーは生活品強いなぁ。

目の前で店員さん相手にミニファッションショーを開く娘を見ながら

こっちに来て正解だったと心から思う。


ほのかは派手な服も地味な服もどちらも見事に着こなしてみせる。

派手目の顔だが髪が銀髪である為だろう。


とりあえずTシャツ3枚に下着類(靴下含む)5セットはまず確保。

パジャマを選ぼうとしたらセクシーなネグリジェを欲しがったので

子供に人気の電気ネズミ、ペカチュウの着ぐるみパジャマを買い与えた。


「な、なにこれええええええ!?」


「ふはははは!

ガキらしくペカチュウにでもなりきるがいいわっ!」


「ううっ!ペカチュウが何か分からないけどこれ可愛いっ!」


「……あ、あれ?可愛い、のか。

恥かしがると思ってたんだけどなぁ?」


「?

これ、ほのかには似合わない?」


「いや、なかなか可愛らしいと思うが。

期待した反応と違っただけ」


「そっか♪」


洋服は普段使いとお出かけ用と必要なので全部で10着ほど買う事になり。

流石に全部持って帰るのは厳しいので着替え用の数着のみ持ち帰り、

残りは宅急便で送ってもらう。


買い物を済ませた後はイートインコーナーでご飯を食べ、

ドキドキしながら職場に向かった。




「さて、それじゃ会社に電話を…って、なんだこれ?

『さるびあ警備詰め所』…?詰め所!?」


「??

わたしはここにいればいいの?」


結果的には何故か古びた警備員詰め所が設置されており。


会社的にも雇元的にも、「迷惑をかけないこと」を条件に

娘同伴での勤務が認められていた。


こうして俺の、非日常的な日常は始まっていったのだ。








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