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『安らかに生きる』 ――原題:『安生』  作者: 亀


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第九十八章 二冊の帳面

翌日。


安生はまた、旧帳房へ向かった。


今度は。


帳面を探すのではなく。


人を探した。


陸成安が入口で木箱を整理していた。


安生が尋ねる。


「許文成は昔、帳面をつけるとき、決まったやり方があったのか?」


「やり方?」


「違うことを、それぞれどこに記していたのか」


陸成安は少し考えた。


「あったな」


「荷の帳面は荷の帳面。」


「米の帳面は米の帳面。」


「臨時のことは、別に記すこともあった」


「じゃあ、周長順は?」


「あの人も自分の帳面を持っていた」


「許文成のと同じ?」


「違う」


「どこが?」


陸成安は机を指した。


「許文成が記していたのは、人から渡されたものだ」


「周掌柜が記していたのは、自分が知っておきたいことだ」


安生が尋ねる。


「どういう意味だ?」


「たとえば、誰にいくら貸しているか」


「誰が何を持っていったか」


「どの荷をいつ処理したか」


「それから、正式な帳面にはそのまま入れられないようなこともある」


「だから、あの人の帳面は雑だった」


安生は頷いた。


「じゃあ、あの灰色の小帳は?」


陸成安が安生を見る。


「周掌柜の帳面を見つけたのか?」


「いや」


「じゃあ、どうして知っている?」


「見た人がいる」


陸成安はそれ以上聞かなかった。


「周掌柜のは。」


「俺も見たことがある」


安生が顔を上げる。


「いつ?」


「六月十二日より前だ」


「どこで?」


「帳房だ」


「許文成の帳面は?」


「それもあった」


「二冊を一緒に置いていた?」


「そういう時もあった」


「どうやって見分ける?」


「大きさが違う」


「中身は?」


「周掌柜は短い言葉で書く」


「許文成は、ちゃんと記録する」


安生が尋ねる。


「たとえば?」


陸成安は少し考えた。


「周掌柜なら、たぶんこうだ」


「南貨三、王家」


「許文成なら」


「六月十二日、西倉三号、二包出る、臨二」


安生は黙った。


この二つの記録が。


同時に存在していたとしたら。


意味はまったく違う。


一つは処理の結果を記す。


もう一つは、荷がどう動いたかを記す。


⸻


安生はすぐに尋ねた。


「六月十二日以降。」


「許文成は帳面を補ったか?」


陸成安は首を横に振った。


「ない」


「確かか?」


「後になって、あの帳面を見た」


「六月十三日から、そのまま続いていた」


「六月十二日は空白のままだ」


安生が尋ねる。


「周長順の帳面は?」


「見たことがない」


「なぜ?」


「私用の帳面だからだ」


「他の人間は見られない?」


「少なくとも、俺たちが勝手に見るものじゃない」


安生は頷いた。


「つまり。」


「六月十二日の二包の荷が、本当に周長順の自分の帳面に記されていたとしても。」


「許文成の正式な荷の帳面には、ない可能性がある」


陸成安が言う。


「その可能性はある」


「だが、どちらにもない可能性もある」


安生は彼を見る。


「なぜ?」


「周掌柜が、それを一時的な処理だと思っていたなら。」


「すぐには記さないこともある」


「じゃあ、いつ記す?」


「月末にまとめて計算することもある」


「最後まで計算されなかったら?」


「なくなる」


⸻


安生はふと尋ねた。


「今の『なくなる』って、どういう意味だ?」


陸成安が安生を見る。


「荷がなくなるんじゃない」


「帳面がなくなるんだ」


安生は頷いた。


その言葉を。


記録した。


⸻


午後。


安生は王家へ向かった。


王福を訪ねる。


「六月十二日の、あの南布三反。」


「その後、もう一度調べたか?」


王福は首を横に振った。


「何を調べる?」


「荷主だ」


王福は黙った。


「その時は、周掌柜が持ってきたんじゃないのか?」


「その後の話だ」


「誰か、聞きに来なかったか?」


「来ていない」


「沈家の人間は?」


「来ていない」


「じゃあ、お前の父親は疑わなかったのか?」


王福はしばらく考えた。


「一度、こう言っていた」


「何と?」


「この布は、普通の南貨には見えない、と」


安生が尋ねる。


「なぜ?」


「印だ」


「『沈』に見えた印か?」


「ああ」


「お前の父親は、確かだと言っていたのか?」


「いや」


「じゃあ、なぜ記した?」


「少し似ていたからだ」


安生が尋ねる。


「『沈家』と言っていたことは?」


「あった」


「どう言った?」


王福は眉を寄せた。


「たしか……」


「『沈家のものらしい』」


「『沈家のものだ』じゃない?」


「違う」


安生は頷いた。


⸻


王家を出たところで。


安生はふと気づいた。


今まで出てきた「沈家」に関する証拠は。


ほとんどすべて。


一つの言葉を伴っている。


「似ている」。


王福の父親は言った。


「沈家のものらしい」


王福が覚えていたのは。


「沈に似ている」


周長順は言った。


「沈家は知っている」


赵德全が聞いたのも。


「沈家は知っている」


陸成安が聞いたのは。


「沈家は頷いた」


そして沈川自身が、後になってはっきり言った。


「俺は、あれを米と相殺するために持っていけとは言っていない」


これらの言葉だけでは。


どれ一つとして。


「沈川が二包の荷を王家の一石の米と相殺することに同意した」


という事実にはならない。


⸻


夜。


安生は安順河を訪ねた。


「父さん」


「ん?」


「六月十二日、沈川が『先に処理する』と言った時。」


「周長順は帳面を持っていたか?」


安順河は首を横に振った。


「そこまでは見ていない」


「机の上には?」


「なかった」


「近くで誰かが持っていた?」


「分からない」


安生はさらに尋ねた。


「沈川は何か紙を見ていたか?」


安順河は黙った。


「……見ていたような気はする」


「何だった?」


「分からない」


「荷札か?」


「確かじゃない」


「帳面?」


「分からない」


安生は頷いた。


「じゃあ、記さない」


安順河が安生を見る。


「お前、最近は事件を調べてるというより。」


「帳面をつけているみたいだな」


安生は少し笑った。


「一つの言葉を間違えると。」


「その後のことまで、全部ずれていくからな」


⸻


安生が帰ろうとした時。


安順河が突然言った。


「待て」


「まだある」


「何?」


「あの日、周長順が聞いたあと。」


「沈川が、こう言ったような気がする」


「『全部は動かすな』」


安生の足が止まった。


「どうして今まで言わなかった?」


「お前がもう知っていると思っていた」


「俺は知らなかった」


「じゃあ、今は確かか?」


安順河は長い間考えた。


「大体、そういう意味だったと思う」


「原文は?」


「そこまでは断言できない」


安生は頷いた。


「じゃあ、こう書く」


「沈川は以前、『全部は動かすな』という趣旨のことを言った可能性がある。ただし、原文は完全には確認できない」


安順河は小さく頷いた。


⸻


住まいに戻る。


安生は、その一言を記録に加えた。


これで。


六月十二日の午前に関する証言が。


ようやく少しだけ揃ってきた。


周長順。


南貨を先に動かしていいか。


沈川。


先に処理する。


もしかすると。


全部は動かすな。


その後。


周長順は周囲に言った。


沈家のほうから話が来ている。


それが後になって。


沈家が頷いた。


さらに。


沈家が同意した。


そして。


実際に荷は持ち出された。


そのうち二包が。


王家へ渡った。


一石の米の帳面と引き換えに。


⸻


安生は「周長順がわざと嘘をついた」とは書かなかった。


こう記した。


「『先に処理する』から『米一石と相殺する』までの間に、明確な許可の記録がない。」


その下に、さらに書く。


「周長順が『先に処理する』という言葉を、自分で荷の用途まで決めてよいという意味に受け取ったかどうかは、現時点では証明できない。」


さらに。


「ただし、実際の処理は、現在確認できる沈川の発言の範囲を超えている。」


安生は筆を置いた。


この時。


ようやく、この件の本当の境界が見えた気がした。


単純に。


周長順が全員を騙した。


という話でもない。


沈川が明確に同意していた。


という話でもない。


一つの、範囲の限られた言葉が。


それより広い行為として実行された。


その一歩が。


誤解だったのか。


それとも勝手に範囲を広げたのか。


証拠は、あと少し足りない。


⸻


翌日。


安生はまた旧帳房へ向かった。


今度は。


灰色の小帳を探すのではない。


六月十二日当日の出庫伝票を探した。


老梁に手伝ってもらい、半日近く探した。


ようやく。


黄ばんだ一枚の紙が見つかった。


紙には数行しかない。


六月十二日。


西倉三号。


二包出る。


その下に。


小さな字が一つ。


「高」にも見える。


安生が尋ねる。


「これは老高か?」


老梁は紙を見た。


「分からん」


「人の名前だと断定できるか?」


「できない」


安生は紙に触れなかった。


「じゃあ、今は数えない」


だが。


紙の裏には。


途中まで残った一文があった。


半分は破れている。


残っていたのは。


「……周掌柜に従い……」


その後は消えていた。


安生は、その四文字をじっと見た。


興奮はなかった。


ただ紙を裏返す。


また表に戻す。


それから言った。


「この紙は残しておいてくれ」


老梁が尋ねる。


「使えるのか?」


安生は首を横に振った。


「今は分からない」


「でも少なくとも。」


「六月十二日に、実際に出庫伝票が一枚残されていたことは分かる」


「誰が書いた伝票なのかは。」


「まだ分からない」


⸻


夜。


安生は机の前に座り。


すべての証拠をもう一度整理した。


六月六日。


沈記。


十二包。


六月十日。


東倉七号。


南貨十二。


六月十一日。


換位。


六月十二日。


西倉三号、二包出る。


臨牌二。


王家。


南布三反。


米一石と相殺。


沈川。


先に処理する。


全部は動かすな。


周長順。


沈家から話が来ている。


沈家が頷いた。


沈家は知っている。


そして。


あの破れた出庫伝票には。


ただ。


「……周掌柜に従い……」


とだけ残っている。


安生は最後の四文字を見つめた。


そして初めて。


その先を推測しなかった。


紙を一番下に置く。


その上で。


一行だけ書いた。


「現時点で確認できるのは、六月十二日の荷の処理が、完全に記録されていなかったわけではないということだ。」


書き終えて。


しばらく止まる。


それから、もう一行を加えた。


「次に探すべきなのは、帳面ではない。」


「この伝票の、残り半分だ。」

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