第九十六章 第二冊の帳面
翌朝早く。
安生はまず陸成安を訪ねた。
「昔、碼頭には何冊の帳面があった?」
陸成安は朝飯を食べていた。
その言葉を聞いて、顔を上げる。
「正式な帳面か?」
「全部だ。」
陸成安は少し考えた。
「少なくとも三冊だ。」
安生の手が止まった。
「どの三冊?」
「一冊は荷の帳面。」
「一冊は米の帳面。」
「それから、雑帳が一冊。」
「雑帳には何を記す?」
「臨時の借り荷。」
「荷運び。」
「飯場。」
「それから、店の主人が自分で処理するようなものもだ。」
安生が尋ねた。
「誰が記す?」
「荷の帳面は許文成。」
「米の帳面は、だいたい飯場の人間だ。」
「雑帳は決まっていない。」
「手の空いている者が記す。」
安生は眉を寄せた。
「三冊の帳面に、同じ荷が記されることはある?」
「もちろんある。」
「じゃあ、どうやって区別する?」
「日付だ。」
「それから臨牌。」
「場合によっては、人だ。」
「人?」
「誰が持っていったか。」
「誰が返しに来たか。」
「もし返ってこなかったら?」
陸成安は安生を見た。
「それは面倒なことになる。」
⸻
安生は聞いた。
「六月十二日の雑帳はどこにある?」
陸成安は首を振った。
「とっくになくなった。」
「誰が処分した?」
「分からない。」
「米の帳面は?」
「飯場に古いものが残っている。」
「案内してくれるか?」
「いい。」
⸻
飯場は、もう何年も使われていなかった。
隅には古い木桶が積まれている。
孫福の息子が、古い紙の束を運んできた。
「親父が残したものだ。」
安生は一枚ずつめくった。
六月十一日。
米一石。
米半石。
六月十二日。
南貨三。
六月十四日。
南貨二。
安生が尋ねた。
「ここでは、どうして『包』とは書かない?」
孫福の息子は首を振った。
「分からない。」
「これは、お父さんの書き方?」
「たぶん。」
「確かか?」
「字は似ている。」
「つまり、似ているとしか言えない?」
「ああ。」
安生は頷いた。
それ以上は追及しなかった。
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六月十二日の一行を、安生は長いこと見つめた。
南貨三。
人の名前もない。
数量の単位もない。
荷主もない。
米との相殺という記述もない。
安生が尋ねた。
「親父さんは普段、荷主を書くか?」
「時々は。」
「書かないのは、どういうとき?」
「身内の人間が荷を動かすとき。」
「それか、誰の荷か最初から分かっているとき。」
「じゃあ、六月十二日はなぜ書かなかった?」
「分からない。」
安生は紙を置いた。
「この紙は、しばらくそのままにしておいてくれ。」
孫福の息子は頷いた。
⸻
飯場を出る。
安生は再び旧帳場へ戻った。
陸成安が古い木箱を一つ取り出した。
「これだ。」
「何だ?」
「昔、臨時の帳面を入れていた。」
安生が蓋を開ける。
中に完全な帳面はなかった。
あるのは何枚かの紙だけだった。
その一枚に。
六月十二日。
その下には、数文字だけ。
臨一。
臨二。
後ろには荷の名前がない。
安生が顔を上げた。
「誰の字?」
「吴順だ。」
「吴順って、臨牌を記録していた?」
「ああ。」
「どうして荷のことが書いてない?」
「ただ牌を記録しただけかもしれない。」
安生はさらに紙をめくった。
別の紙には。
牌皆返る。
同じ一件ではない。
安生は何も言わなかった。
ふと、吴順の息子を思い出した。
吴平。
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吴平に会ったとき。
彼は自転車を修理していた。
「また親父のことか?」
「そうだ。」
「やっぱり六月十二日?」
「そう。」
吴平はため息をついた。
「聞けよ。」
安生は紙を差し出した。
「これは、お父さんの字か?」
吴平は長いこと見つめた。
「似ている。」
「断定できる?」
「八、九割くらいは。」
「『牌皆返る、同じ一件ではない』って、どういう意味だ?」
吴平は首を振った。
「分からない。」
「父親は説明していなかった?」
「していない。」
「六月十二日に二つの臨牌があったとは言っていた?」
「言っていた。」
安生が顔を上げた。
「いつ?」
「ずっと昔だ。」
「何と言っていた?」
「その日は二つとも返ってきた。」
「でも、同じ一件じゃない。」
「そう言っていた。」
安生が尋ねた。
「二つの牌を、それぞれ誰が使ったかは?」
「言っていない。」
「一つが梁成で、一つが馬成だったとは?」
「言っていない。」
「どちらかが王家へ行ったとは?」
「それも言っていない。」
吴平は首を振った。
「親父が記録していたのは牌だ。」
「荷そのものじゃない。」
⸻
安生は住まいへ戻った。
すべての記録を、もう一度並べた。
正式な荷の帳面。
六月十日――東倉七号、南貨十二。
六月十一日。
換位。
六月十二日。
西倉三号、二包出る。
臨牌の記録。
臨一。
臨二。
牌皆返る。
同じ一件ではない。
飯場の古い紙。
六月十一日、米一石。
米半石。
六月十二日。
南貨三。
王家の帳面。
六月十二日、南布三反、米一石と相殺。
少なくとも。
四種類の記録がある。
だが、それらの間には。
まだ一本の完全な線がない。
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安生は筆を取った。
一つ目。
西倉三号から二包が出た。
二つ目。
馬成が二包を王家へ運んだ。
三つ目。
王家が包みを開け、南布三反を確認した。
四つ目。
王家は南布三反を、米一石と相殺したと記録した。
五つ目。
老高は米の帳面がきちんと記録されたかを確認した。
ここまでは。
互いに裏付け合える。
だが、もう一つある。
南貨三。
王家の帳面にある「三反」と。
よく似ている。
だが、直接同じものとはできない。
「南貨三」が三反を意味するとは限らない。
三包かもしれない。
あるいは、孫福がその日の荷の数を簡略に記しただけかもしれない。
安生は線を引かなかった。
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夜。
安平が戻ってきた。
「今日は何か分かった?」
「分かった。」
「第二の帳面は見つかった?」
「いや。」
安生は首を振った。
「でも、いくつか別々の記録が見つかった。」
「それが何になる?」
「当時、帳面が一冊だけじゃなかったことの証明になる。」
安平は腰を下ろした。
「じゃあ、第二の帳面は?」
安生は机の上の紙を見た。
「そもそも、完全な形の第二の帳面なんてなかったのかもしれない。」
「どういうことだ?」
「こういう断片的な記録そのものだったのかもしれない。」
「誰かが少し書く。」
「誰かが一枚残す。」
「最後には、全部をつなげられなくなる。」
安平は黙った。
安生は続けた。
「だから、今こうなっている。」
「誰の手にも、一部分だけはある。」
「でも、全部を持っている人はいない。」
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安生は、ふと六月十一日の「換位」を思い出した。
正式な帳面をもう一度取り出す。
そして老梁のところへ向かった。
「六月十一日。」
「東倉七号は、なぜ西倉三号へ移した?」
老梁は店を閉めていた。
「前にも言っただろ。」
「周掌柜が、翌日使うと言った。」
「何に使うかは知っている?」
「知らない。」
「誰が運んだ?」
「何人かの荷運びだ。」
「誰だ?」
老梁は二人の名前を挙げた。
安生は書き留めた。
そして尋ねる。
「許文成はいた?」
老梁は首を振った。
「あとから来た。」
「いつ?」
「荷を移し終わったあとだ。」
安生の手が止まった。
「じゃあ、なぜ東倉へ行った?」
「分からない。」
「誰かに行けと言われた?」
老梁はまた首を振った。
「それは本当に分からない。」
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安生はそれ以上聞かなかった。
なぜなら。
新しい順序が見え始めていたからだ。
六月十一日。
先に荷が移された。
その後、許文成が見に来た。
六月十二日。
許文成は完全な記録を残さなかった。
西倉三号から二包が出た。
臨牌二が使われた。
二包の荷が王家へ向かった。
王家は南布三反を米一石と相殺したと記録した。
安生は碼頭に立った。
もう使われていない倉庫を見つめる。
初めて気づいた。
本当の問題は。
「六月十二日に、誰が荷を盗んだのか」
ではないのかもしれない。
むしろ。
「なぜ六月十二日の一部の荷の移動は、正式な荷の帳面に入らなかったのか」
こちらのほうが重要なのかもしれない。
もし、それが当時の碼頭で普通に行われていたことなら。
話はそれほど複雑ではない。
だが、もしあの日だけ。
誰かが意図的に正式な荷の帳面を避けていたのなら。
意味はまったく変わってくる。
しかし今は。
どちらなのか、まだ証明できない。
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帰る前。
老梁が突然、安生を呼び止めた。
「安生。」
「まだ何かある?」
「さっき、許文成のことを聞いただろ。」
「急に思い出した。」
「六月十二日の昼頃。」
「あいつ、一度戻ってきた。」
安生が振り返る。
「何を持っていた?」
「何か一冊、持っていた。」
「何?」
「帳面みたいなものだ。」
「どの帳面?」
「分からない。」
「見えたか?」
「よくは見えなかった。」
「どこに置いた?」
老梁は旧帳場を指した。
「一言、言った。」
「何と?」
「これは、ここに置いてはいけない。」
安生は動かなかった。
「確かにそう言った?」
老梁は頷いた。
「今度は確かだ。」
安生は旧帳場を見た。
長いこと、何も言わなかった。
それから尋ねた。
「その帳面は、その後どうなった?」
老梁は首を振った。
「知らない。」
安生は振り返った。
そして、もう一度、誰も使っていない旧帳場へ入った。
机。
棚。
木箱。
どれも埃をかぶっている。
安生はすぐには手をつけなかった。
ただそこに立ち。
六月十二日の空白の頁を見つめた。
そして、小さく呟いた。
「やっぱり、もう一冊あった。」
だが、次の瞬間。
その言葉を止めた。
そして言い直す。
「……もう一冊、あったのかもしれない。」
なぜなら。
まだ見つけていない。
その帳面を。




